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【年末企画 ニッケル】 供給過剰基調が鮮明となった2025年

2025/12/15 09:40
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【年末企画 ニッケル】 供給過剰基調が鮮明となった2025年

1.年間の基調
2025年のLMEニッケル相場は、構造的な供給過剰を背景に総じて上値の重い展開となった。年初から市場にはインドネシア起因の供給リスクが意識されていたが、実需ベースでは余剰感が強く、価格はレンジ内での推移にとどまった。
結果として、2022年のような極端なボラティリティは見られず、「過剰供給を織り込む安定相場」という性格が際立つ一年だった。

2025年のLMEニッケル相場は年初から年末にかけておおむね14,900〜16,450ドル/トンのレンジで推移した。3月中旬には上値が16,650ドル台前後まで上昇する場面が確認され、年内で最も強い水準となった。これは投機的需給懸念やマクロセンチメントの影響が重なったものであるが、短期的な動きに留まった。3月以降は供給過剰感が再び優勢となり、価格は15,000ドル台前半〜中盤での推移に戻った。12月中旬時点ではLMEニッケル現物価格は約14,600ドル/トン前後に落ち着いている。

LMEニッケル相場推移(USD/MT) 1年

 

2.2025年3月の急騰局面とその評価
2025年3月には一時的な急騰局面が現出した。背景としては以下が重なった。


インドネシア政府による鉱業許認可・生産枠見直し観測
一部精錬所の操業トラブルや政策不透明感
ファンド勢のショートカバーと流動性の薄さ

ただし、この上昇は実需の逼迫を伴わない政策・心理主導型であり、LME在庫の減少や現物プレミアムの持続的上昇にはつながらなかった。そのため、材料出尽くし後は比較的速やかに反落し、相場全体のトレンド転換には至らなかった。
この3月の動きは、2025年相場を象徴する「供給不安は跳ねるが、構造過剰が押し戻す」典型例と位置づけられる。

 

3.供給サイド:インドネシアの位置づけ

インドネシアは引き続き世界最大の供給増要因であり、NPIや中間材を中心とした生産能力の大きさが市場の重石となった。
政府は下流化政策の名のもとに生産管理や制度変更を繰り返したが、実際には供給を恒常的に絞る水準には至らず、結果として世界需給はサ-プラス基調を維持した。

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4.需要サイド:ステンレスとEV

ステンレス鋼向け需要は依然としてニッケル消費の中核であり、中国・アジアの生産動向が価格形成を左右した。ただし2025年は力強い回復には至らず、需要面からの上昇圧力は限定的だった。

EVバッテリー向けは中長期的な成長ストーリーを保つ一方、LFP比率の上昇や材料効率改善により、短期的なニッケル需要の伸びは市場期待を下回った。

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2026年の展望
1.ベースシナリオ
2026年も需給はサプラス基調が続く見通しが優勢である。INSGなど主要機関の予測では、生産増加が需要増を上回り、余剰幅はむしろ拡大する可能性が高い。
このため、価格は大幅な上昇トレンドに入るよりも、上値を抑えられたレンジ相場が基本線となる。


2.アップサイド・リスク
上振れ要因は明確だが限定的である。
インドネシアによる想定外に厳格な生産・輸出制限
大規模精錬所の事故や政策急変による供給ショック
在庫急減を伴う短期的な投機資金流入

ただし、これらはいずれも一過性にとどまる可能性が高く、2025年3月と同様「急騰しても定着しにくい」構図が想定される。

3.ダウンサイド・リスク
中国ステンレス需要の想定以上の低迷EV分野でのニッケル使用抑制の加速
高コスト鉱山が撤退せず供給調整が進まない場合

これらが重なれば、2026年は価格の下振れ圧力が意識されやすくなる。

4.2026年前半の価格見通し

2026年前半に関して、市場予想やアナリストのレポートでは、構造的な供給過剰が続く前提から価格上昇余地は限定的との見方が多い。具体的な数値レンジの一例としては、2026年末時点の予想値として約14,500ドル/トン前後というレンジ予想が示されている。これはインドネシアなどの生産拡大が続き、供給過剰感が需給バランスを圧迫するという見立てを反映したものである。
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2026年前半の価格レンジ予想については、短期のボラティリティを前提にしても14,000〜15,000ドル/トン台程度でのレンジ推移が想定され、2025年末水準と大きな乖離が出にくいとの見方が優勢である。過度なタイト化がない限り、需給バランスは引き続き緩和ムードが強く、価格を押し上げる材料は限定的と評価されている。

 

総括
2025年のニッケル相場は、3月の急騰に象徴されるように「供給不安で跳ね、構造過剰で押し戻される」一年だった。
2026年も基本構図は変わらず、供給過剰を前提とした相場環境が続く可能性が高い。市場の焦点は、インドネシア政策の実効性と、EV需要がどこまで実需として顕在化するかに集約される。
ニッケルは中長期テーマを抱えつつ、短期では現実的な需給に縛られる金属である点が、改めて確認された年だったと言える。

 

(補論)
以下は、INSG(国際ニッケル研究会)によるニッケル需給予測(2023〜2026年)の要点を表形式で整理したデータ(B)である。数字は一次ニッケル生産・使用・需給バランスを示す。数値は百万トン(Mt)、需給バランスは供給 – 需要(正数=供給過剰)としている。出典はINSG公式のプレスリリースや関連報道から整理した。

 

参照資料
https://insg.org/wp-content/uploads/2025/10/pressrel_INSG-Press-Release-October_2025-nd782v78.pdf?utm_source=chatgpt.com

ニッケル需給バランス(INSG予測:2023–2026)
年度    一次ニッケル生産(Mt)    一次ニッケル使用(Mt)    需給バランス(供給過剰:千t)
2023    3.365    3.190    +176
2024    3.531    3.419    +112
2025    3.810    3.601    +209
2026    4.085    3.824    +261

 

要点(背景)

供給過剰基調が継続:2023〜2026年を通じてニッケルは供給超過が見込まれ、特に2025年・2026年の過剰幅は拡大する見通し。
生産増加:インドネシアを中心とした生産拡大が主要因で、2026年まで生産量は着実に増加している。
使用の伸び:ステンレス鋼やバッテリー用途を中心に使用量は増えるものの、供給増を下回るペースとなる見込み。
バッテリー需要の伸びは限定的:EV向けニッケル需要は増加しているものの、LFP化の影響やPHEV需要の勢いにより伸び率が予想より抑えられる点が指摘されている。

 


(IRuniverse/MIRU S. Aoyama)


 

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