2025年のモリブデン価格は乱高下の末に小幅な動きとなった。鉄鉱添加剤の酸化モリブデンは12月7日に仲値$21.25/LBと、年初($21.75)から2.3%安となった。モリブデン合金のフェロモリブデンは12月19日に仲値$52.15/kgで、年初($49.725)よりも4.9%高だった。いずれも9月に中国の鉱山の事故で高騰する場面があったが続かず、動きは限られた。
2025年の酸化モリブデン価格の推移($/LB)

酸化モリブデン価格は9月11日-17日に$25.75まで上げる場面があった。3月に付けた年初来安値と比べた値幅は24.8%。
2025年のフェロモリブデン価格の推移(basis 65%min)($/kg Mo)

フェロモリブデンも9月の同時期に$59まで上げる場面があった。
■内モンゴルの鉱山、死亡事故で操業停止
9月の高騰には理由がある。モリブデンは生産・消費ともに中国が過半を占めるが、その中国の内モンゴル自治区にある銅モリブデン選鉱工場で7月、見学中の大学生らが浮選槽に落ちて溺死する事故が発生した。これを受けて同工場の操業が一時停止し、供給が細るとの見方からモリブデンの国際価格が急騰した。
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実際、中国資源調査会社のmollychinaが10月に発表した2025年1-9月期の市場レポートでも、中国の8月のモリブデン生産量が落ちたことが確認できる。
過去3年間の中国の1-9月のモリブデン生産量

(出所:mollychina)
■鋼材需要は堅調だが
一方、モリブデンの需要は堅調だ。2025年は世界の自動車、建設、エネルギー分野での需要に持ち直しがみられ、鋼材需要自体は拡大した。
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ただ、最終製品である鉄鋼の価格は周知のとおり弱い。このため、モリブデンの加工企業は鉱石価格の高騰に伴うコスト上昇と販売価格の低迷のギャップに苦しんだ。加工企業は利益率の圧迫やエンドユーザーへのコスト転嫁、さらには調達戦略の見直しを進めた一年でもあった。
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■26年はボックス圏を脱出か、本格反発の要は中国不動産回復
過去5年間の酸化モリブデンとフェロモリブデン価格の推移

モリブデン価格は中期的に見れば、2023年2月にチリでの減産を受けて直近高値を付けて以降、横ばいが続く。酸化モリブデンは$20台前半、フェロモリブデンは$50を中心としたボックス圏での値動きだ。鉄鋼の需要と価格が本格回復しないため、なかなか上値を突き抜けられない。
2026年はこの壁を突破できるかが注目点となる。鉄鋼需要は特に中国の不動産市況の回復が要で待たれるが、不動産は不況も5年目となり、回復への道のりは険しさを増している。
(IR Universe Kure)