21日、インド・ジャイプールで開催されたMRAI(Material Recycling Association of India)主催の国際リサイクルマテリアル会議にて、主要リサイクル協会代表者によるパネルディスカッションが行われた。
地政学的混乱の中、インド・欧州・米国・中東のリーダーが語る「リサイクル産業の未来と貿易の課題」
MRAI(インド・マテリアルリサイクル協会)主催の国際会議にてインド(MRAI)、欧州(BIR:国際リサイクル局)、中東(BMR:中東リサイクル局)、米国(REMA:リサイクルマテリアル協会)の各代表が一堂に会した。
会議では、地政学的な緊張が高まる中でのサプライチェーンの維持、保護主義的な貿易政策への懸念、そして循環型経済を実現するための各地域の取り組みについて活発な議論が交わされた。
以下に、各地域の主要な発表内容および質疑応答のハイライトを報告する。
1. インド(MRAI):急成長する市場と制度改革への挑戦

MRAIは、インドが2050年までにリサイクル産業だけで2兆ドル規模の市場価値と約1,000万人の雇用を創出する可能性があるとし、政府と連携した強力な政策フレームワークの進展を強調した。
- 主要な政策イニシアチブ:
- 国家鉄鋼政策・スクラップリサイクル政策: 持続可能な鉄鋼生産を促進。現在改訂作業中であり、近々協議が行われる予定。
- EPR(拡大生産者責任)の導入: 非鉄金属、タイヤ、バッテリー、廃油、電子廃棄物(E-waste)など広範囲に適用。特に非鉄金属のEPRは4月から実施予定。
- 自動車リサイクル(ELV): 現在は任意だが、MRAIは義務化を求めてロビー活動を継続中。義務化により非公式セクターからの脱却を目指す。*この点については別途報告する。
- 直面する課題と提言:
- 原材料の確保: 国内発生スクラップだけでは不足しており、輸入への依存度が高い。MRAIはアルミニウム等のスクラップ輸入関税の撤廃(ゼロ化)を求めている。
- GST(物品サービス税)の問題: 現在の18%という高い税率が、脱税を行う非公式セクター(インフォーマルセクター)を利する結果となっている。MRAIは、違法取引を根絶し業界を健全化するため、GSTを5%へ引き下げるよう強く提言している。
2. 欧州・グローバル(BIR):自由貿易の危機とデータの重要性
BIR代表のスージー・ブラッス氏は、世界的な貿易障壁の増加に強い懸念を示した。「廃棄物」から「貴重な二次原材料」への認識転換を訴え、以下の点を強調した。
- 保護主義への警鐘: EUの廃棄物輸送規則(EUWSR)や重要原材料法案など、域内囲い込みの動きが強まっている。輸出制限は世界の需給バランスを崩し、リサイクルのコストを上昇させると警告。
- BIRの取り組み: 自由で公正な貿易を守るため、鉄鋼・非鉄金属のグローバルなフロー調査や将来予測を行い、「データに基づく政策提言」を推進している。
- 環境貢献の可視化: リサイクル材の使用が脱炭素化に不可欠であることを証明し、政策立案者に働きかけている。
3. 米国(REMA):関税と規制の「カオス」の中での成長

REMA(旧ISRI)代表のロビン・ワイナー氏らは、米国の政策環境を「カオス(混沌)」と表現しながらも、米印間の貿易の堅調さをアピールした。
- 貿易環境の変化: 以前は平均2%程度だった関税が、現在は複数の制度(通商拡大法232条など)により複雑化・高騰している。
- 米印貿易の絆: 課題はあるものの、インドは米国にとって第3位の貿易相手国であり、リサイクル材の輸出は過去20年で金額ベースで6倍に成長した。
- 輸出規制との戦い: 銅スクラップの輸出禁止案を阻止することに成功。現在はアルミニウムやニッケルなどへの規制拡大を防ぐため、ホワイトハウスや議会と積極的に連携している。
- 定義の問題: バーゼル条約等の影響で、「リサイクル原料」が「廃棄物」として拡大解釈され、貿易が阻害される動き(特に電子機器関連)に警戒感を示した。
4. 中東(BMR):石油からリサイクル大国への転換
BMR代表は、中東が単なるエネルギー供給地から「世界のリサイクルハブ」へと変貌しつつある現状を情熱的に語った。
- 戦略的転換: サウジアラビアやUAEなどは2030~2050年のネットゼロ目標を掲げ、リサイクルを戦略的資源と位置づけている。
- 政策の成功例(UAE): 業界の悲願であったスクラップ取引におけるVAT(付加価値税)の実質撤廃と、リバースチャージ方式(RCM)の導入に成功。これにより不正取引が減少し、真面目な事業者が報われる環境が整備された。
- インドとの連携: 中東の物流・インフラと、インドの技術・市場規模を組み合わせた「戦略的パートナーシップ」を提唱。「一つの言語、一つのビジョン、一つの目標」をスローガンに掲げた。
質疑応答(Q&A)のハイライト
Q1:インドのアルミニウムスクラップ輸入関税は撤廃されるのか?
A(MRAI): 非常に楽観視している。政府に対し、国内生産のためには素材が必要であり、障壁を取り除くべきだと説得を続けている。次の予算案または6〜12ヶ月以内の解決を期待している。
Q2:EUの廃棄物輸送規則(EUWSR)により、インドへの輸出は止まるのか?
A(BIR): 5月27日に規則は発効するが、インドを含む非OECD諸国向けの監査基準や条件がまだEUから公表されていないため、不透明な状況が続いている。BIRは欧州委員会に対し、貿易が阻害されないよう働きかけを続けている。
Q3:米国の関税政策や不確実性は、企業の投資意欲を削いでいるか?
A(REMA): 不確実性は確かにあるが、企業は投資を止めていない。むしろM&Aなどで業界再編が進んでいる。ただし、中小規模の家族経営企業にとっては厳しい状況だ。新政権(トランプ次期政権を示唆)になっても関税政策が劇的に緩和されるかは未知数だが、製造業全体と連携して対応していく。
Q4:中東でのVAT対策の効果は?
A(BMR): 1月14日に導入されたばかりだが、適正な事業者は非常に歓迎している。脱税目的のプレイヤーが排除され、市場の健全化が進むと確信している。
総括
本会議では、各地域が「環境規制の強化」と「資源ナショナリズム」という共通の波に直面していることが浮き彫りとなった。その中で、MRAI、BIR、REMA、BMRの各団体は、**「リサイクル材は廃棄物ではなく資源である」**という認識を世界的に統一し、自由貿易を維持するために国際的な協調とデータ共有が不可欠であるという結論で一致した。
(IRUNIVERSE Rohini&Tanamachi)