中国の炭酸リチウム市場が、短期間で激しい価格変動に見舞われている。
先週後半から今週にかけ、電池級炭酸リチウムの現物価格はわずか5営業日で20%以上上昇し、1トンあたり18万元の大台を突破した。先物市場でも2年半ぶりの高値を付けた後に急落するなど乱高下が続いており、春節(旧正月)を前に市場は極めて不安定な様相を呈している。
1. 急騰の背景:供給減と特需の「パーフェクト・ストーム」
今回の価格急騰は、季節要因、政策変更、マクロ環境という三つの要素が同時に重なった結果である。
① 供給サイド:春節前の集中メンテナンス
1月下旬から2月半ばにかけての春節休暇を控え、国内のリチウム塩工場が相次いで定期点検に入っている。これにより今後数週間の生産量減少が確実視されており、供給への懸念が急速に高まった。
② 需要サイド:政策変更による「駆け込み需要」
市場を最も強く刺激しているのが輸出政策の変更だ。財政部等の発表によれば、電池製品の輸出増値税還付率は、2026年4月1日より現行の9%から6%へ引き下げられ、2027年1月1日には完全廃止される。
このため、還付率が高いうちに輸出を完了させようとする電池メーカーの動きが活発化しており、第1四半期(特に4月以前)に向けた「駆け込み生産」が、原料であるリチウム需要を強力に押し上げている。本来は需要閑散期であるはずのこの時期に、「淡季不淡(閑散期らしからぬ活況)」が出現している要因だ。
③ 在庫とマクロ環境
上海有色網(SMM)のデータによると、1月8日以降、市場のサンプル在庫は減少傾向にあり、需給の引き締まりを裏付けている。また、FRBの利下げ観測に伴うドル安や、地政学リスクによる商品市場への資金流入も、投機的な買いを後押しした。
2. 市場の反応:激しいボラティリティと様子見姿勢
価格の高騰を受け、現物市場では緊張感が高まっている。
供給側のリチウム塩工場が「売り惜しみ」の姿勢を見せる一方、需要側の材料メーカーは高値掴みを警戒し、必要最小限の調達(按需採購)に留めている。
先物市場では投機マネーの出入りが激化している。1月26日には、価格が一時1トンあたり18.9万元を超えた直後、わずか1日で6%以上急落するなど、極めて荒い値動きを記録した。
3. 専門家の見解:短期的には強気も「春節リスク」に警戒
主要な先物会社のアナリストは、短期的には強気の見通しを示しつつも、リスク管理を呼びかけている。
- 金瑞先物: 2月の精錬企業の点検や在庫減により、第1四半期は強気相場が続くと予想。ただし、現在の価格水準と変動率の高さから、慎重な取引を推奨。
- 南華先物: 2月上旬までは押し目買いの好機としつつも、春節休暇中の不確実性を避けるため、休暇前には「ポジションを軽くするか、解消して休暇を迎える」ことを提案。
- 五鉱先物: 需給逼迫は価格を支えるが、急騰には常に反落リスクが潜んでいるとして、静観または軽いポジションでの参加を推奨。
4. 今後の展望
短期的には、春節前の供給制約と輸出政策に伴う駆け込み需要により、リチウム価格は高値圏で推移する公算が大きい。
しかし、中長期的には調整圧力が待ち受けている。第2四半期以降、「駆け込み需要」が一巡すれば、市場の焦点は最終製品(EVなど)の実需に戻る。また、現在の高価格は生産者にとって増産のインセンティブとなるため、長期的には需給バランスが緩和へ向かう可能性が高い。
産業チェーンの各企業には、足元の特需を捉えつつも、政策期限後の需要反動減や価格急変リスクを見据えた、バランスの取れた舵取りが求められている。
(趙 嘉瑋 編集IRUNIVERSE)