台湾において、ベトナム産ステンレス鋼の輸入量が再び急増している。背景には、台湾政府による反ダンピング(AD)調査の手続きが一時的に中断していることや、台湾国内メーカーの価格引き上げによる内外価格差の拡大がある。
市場では、ベトナムからの安価な流入が続く中、台湾大手メーカーによるAD提訴の再申請時期に注目が集まっている。
1. 原料高騰による台湾国内メーカーの値上げ
昨今、インドネシアの青山鋼鉄(Tsingshan)がニッケル価格を大幅に引き上げた影響を受け、ステンレス鋼の原料価格はこの2ヶ月間でトン当たり250〜300ドル上昇した。
これに伴い、台湾の大手ステンレスメーカーであるYusco(燁聯)と唐栄(Tang Eng)は、コスト転嫁を余儀なくされている。
販売価格の引き上げ(1-2月): 合計でトン当たり1万2,000〜1万2,500台湾ドルの値上げを実施。
現在の現地価格(304ステンレス冷延鋼板): トン当たり6万6,000台湾ドル(流通価格水準)。
2. AD調査の「空白期間」を突くベトナム産
国内価格が上昇する一方で、ベトナム産ステンレス鋼の流入には歯止めがかかっていない。
Yuscoと唐栄は昨年10月9日、ベトナム産冷延鋼板に対するAD調査を要請していた。しかし、台湾財政省が「産業被害を立証する資料の補完」を求めたため、申請は暫定的に取り下げられた状態にある。この調査の遅れが、輸入再開の呼び水となった。
【価格競争力の比較】
項目 | 価格(概算) | 備考 |
|---|---|---|
台湾産(国内価格) | 66,000 台湾ドル/トン | 原料高により値上げ |
ベトナム産(オファー価格) | 約2,000 ドル/トン | 台湾ドル換算で約62,500ドル |
価格差 | 約 -3,500 台湾ドル | ベトナム産が約100ドル割安 |
昨年10月時点で4,488トンだった輸入量は、調査中断を受けて再び増加傾向にある。輸入業者はダンピング判定を回避するため、輸入申告価格を現地の流通価格水準に合わせるなどの対策を講じている模様だ。
3. 世界的な「包囲網」と台湾への集中
ベトナム産ステンレス鋼が台湾へ向かう背景には、他国での規制強化がある。
他国の動向: 韓国、トルコ、タイなどがベトナム産に対し、既に高率の反ダンピング関税を課している。
台湾への影響: 輸出先を失ったベトナム産製品にとって、輸入規制が未発動である台湾が格好のターゲット(輸出拡大先)となっている。
4. 今後の見通し:AD再申請と市場の混乱
現地報道によると、Yuscoと唐栄は資料を整え次第、今年第1四半期末、あるいは第2四半期初めにも再びダンピング調査を申請すると予想されている。
しかし、それまでの期間は不安定な市況が続く見込みだ。台湾ドルの弱含みや中国産価格の上昇といった要因もあり、台湾の需要家にとって割安なベトナム産は魅力的な選択肢であり続けるためだ。AD調査が正式に再開されるまで、台湾市場は輸入品による撹乱含みの展開が予想される。