1. エグゼクティブサマリー
2025年のトルコ鉄鋼貿易は、輸出・輸入ともに増加しました。特に輸入はアジアおよびロシアからの安価な製品流入により1,890万トン(前年比+8.6%)に達し、過去最高を記録しました。一方で輸出も1,510万トン(前年比+12.5%)と2桁成長を遂げ、前年の落ち込みから回復基調にあります。
輸出: 1,510万トン(+12.5%)/ 金額:102億ドル(+4.3%)
輸入: 1,890万トン(+8.6%)/ 金額:131億ドル(-0.7%)
特徴: 数量ベースでは大幅増ですが、輸入金額が微減していることから、国際市況の下落と低価格品の流入(ダンピング攻勢)が鮮明です。
2. 輸入詳細:過去最高記録の背景
輸入増加の最大の要因は、ロシアと中国からの急激な流入です。トルコの圧延メーカーが、エネルギーコスト高騰への対抗策として、安価な半製品(スラブ・ビレット)や熱延コイルの調達をこれら2カ国に依存した構図が浮き彫りになりました。
① 主要輸入相手国(Origins)
2025年の輸入増を牽引したのは、間違いなく以下の2カ国です。
順位 | 国名 | 輸入量 (概算) | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
1 | ロシア | 約450万トン | +37.9% | 制裁の影響で欧州へ行けない半製品がトルコへ集中。 |
2 | 中国 | 約420万トン | +13.3% | 過剰生産能力を背景に、極めて低いオファー価格で輸出攻勢。 |
3 | その他 | アジア・欧州 | ― | 韓国、日本、EU等が続くが、上記2カ国の伸びが突出。 |
② 品種別・原材料のトレンド
半製品(Semi-finished)の急増: ロシアからのスラブ・ビレット輸入が増加。これにより、トルコ国内の電気炉メーカー(スクラップを溶解して生産)よりも、輸入半製品を圧延するリロールメーカーの稼働が活発化しました。
スクラップ輸入の減少: 半製品の輸入が増えた反動で、鉄スクラップの輸入量は前年比6.6%減少(約1,877万トン)となりました。特に米国からのスクラップ輸入が減少し、代わりにCIS(独立国家共同体)地域からの調達比率が上がっています。
3. 輸出詳細:EU市場への回帰
輸出が2桁増となった主因は、主要マーケットである欧州(EU)向けの需要回復です。また、トルコリラの安値も輸出競争力を一部下支えしました。
① 主要輸出先(Destinations)
伝統的な市場であるEU近隣諸国への輸出が大きく伸びました。
地域 | 主要国 | 動向・要因 |
|---|---|---|
EU (最大市場) | イタリア
ルーマニア
スペイン | 建設・インフラ向けの条鋼類および板材の輸出が増加。特にイタリアとルーマニアは前年比で大幅な伸びを記録しました。 |
MENA (中東・北アフリカ) | イエメン
北アフリカ | 戦後復興需要(イエメン)やインフラ需要が継続。ただし、イスラエル向けは地政学的要因で大幅に減少しました。 |
その他 | 南米・ウクライナ | ウクライナ向けの復興資材需要も一部で見られます。 |
② 品種別トレンド
条鋼類(Long Products): 建設用棒鋼を中心に堅調。
板材(Flat Products): 欧州自動車・家電向けなどで需要があり、数量ベースで約12%増と高い伸びを示しました。
4. 2026年の見通しと課題
TCUD(トルコ鉄鋼メーカー協会)は、2026年の粗鋼生産量が4,000万トンを超えると予測していますが、以下の課題を指摘しています。
貿易赤字の拡大: 輸出より輸入(特にダンピング材)の方が多いため、数量ベースの「輸出入カバー率」は77.6%に留まっています。
不公正貿易への懸念: 中国・ロシアからの輸入急増に対し、トルコ国内ではアンチダンピング措置やセーフガードの発動を求める声が強まっています。
スクラップ vs 半製品: エネルギーコストが高いままであれば、スクラップを溶かすよりも、安価なロシア製半製品を輸入するトレンドが2026年も続くと予想されます。
(IRUNIVERSE)