2025年12月、米国のスクラップ輸出企業Metro Metalsは、ワシントン州バンクーバー港からトルコ・イズミル向けに鉄スクラップ5万トンを出荷した。同社によれば、これは同港から出た単一貨物として過去最大規模のスクラップ積み出しであるという。
米国からトルコへの鉄スクラップ輸出は、歴史的に東海岸からの出荷が中心である。航海日数が短く、運賃条件も有利なため、安定した取引が成立しやすい。一方で、西海岸からトルコへの輸送は珍しく、特定の市場環境でのみ発生するケースが多い。業界関係者は、こうした動きが見られるのは欧州でスクラップ供給がタイトになった局面や、他の輸出先で需要が弱まった局面だと指摘している。
Metro MetalsのCEOであるVictor Winklerは1月中旬、Recycling Todayに対し、今回トルコ市場に重点を移した背景として、アジアのスクラップ市場が大きく減速したことを挙げた。*¹ 同社は長年、中国やベトナム、バングラデシュなどに大量出荷してきたが、これら地域で需要が落ち込んだことで新たな販路を探す必要が生じ、トルコが有力な選択肢となったという。
米国―トルコ間のスクラップ取引全体の中で見ると、この出荷はより意味を持つ。 米国はトルコにとって主要なスクラップ供給国の一つである。国連COMTRADEのデータによれば、トルコは2024年に米国から約19億ドル相当の鉄スクラップ(鉄系廃棄物・スクラップ)を輸入している。こうした背景を踏まえると、今回の5万トンは単発の例というより、既存の貿易ルートの中で行われた大規模な動きと捉えることができる。ただし出荷ルートが西海岸であった点は例外的である。
今回の事例は、価格や供給条件が合致する局面では、トルコの買い手が通常とは異なる米国の地域からでも大口調達に動く可能性を示している。ただし、この取引を過度に一般化するのは慎重であるべきだ。市場関係者によれば、西海岸からトルコへの出荷は数年に一度程度にとどまり、貿易構造の恒常的な変化を意味するとは限らない。今後同様の動きが続くかどうかは、運賃コスト、地域間の価格差、欧州でのスクラップ供給状況が大きく左右することになる。
参考リンク Recycling Today(Metro Metals shipment report) https://www.recyclingtoday.com/news/metro-metals-ships-steel-scrap-to-turkey/
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ゴ
ヌルタス メーメット
トルコ・イスタンブールを拠点とするフリーランスジャーナリスト。国際関係および外交を中心に執筆しており、特に日土関係、軍事問題、民主的ガバナンスを主なテーマとしている。趣味はランニング、語学学習、旅行。
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