2026年2月2日、MIRU取材班は1月に実施したオンライン取材で得た内容をさらに深掘りするため、静岡県磐田市に拠点を構える非鉄スクラップ大手の株式会社野末商店を現地取材した。本報では野末商店がスクラップ業者としてグローバル市場で生き残るための戦略や、その実現に向けた具体的な取り組みについて紹介する。
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市場環境の変化に対応する技術と品質戦略
野末商店は銅を中心とした非鉄スクラップを主力に扱い、真鍮ビートなどを含む高付加価値な素材の取り扱いを拡大している。月間の取扱量は鉄と非鉄を合わせて4,000から4,500トン、そのうち非鉄は約2,800トンを占める。特に銅および銅合金のスクラップは単体で月間約1,300トンに達しており、全体の取扱量は年々増加している。取扱量増加の背景には営業活動の強化と、属人化していた調達業務のマニュアル化があるという。
野末商店ではスクラップの取り合いによる価格競争を避け、安定した品質の原料を確保するため「量より質」を重視して仕入れを行っている。
2023年には廃モーターのリサイクル専用に設計したHOLLY HOCK PLANTを静岡県磐田市に新設し、稼働を開始した。本プラントでは最先端の設備を用いてモーターの粉砕と選別処理を行い、これまで困難とされてきた小型モーターの破砕および選別も可能にしている。HOLLY HOCK PLANTでは廃モーターから純度99%以上の再生銅を回収する技術を確立しており、金属リサイクルによる新たな価値提供を追求している。
2025年1月の改正バーゼル条約により、モーター輸出に関する規制は強化された。従来は油を抜いたモーターであれば輸出可能だったが、現在は適切な破砕処理が必須となっている。野末商店は家電、自動車用モーターの破砕と高精度な銅抽出技術に強みを持っているため、改正バーゼル条約にも対応可能な体制を整えている。一方、バーゼル条約に対応できるといえども、引き受け量が大きく増減しているわけではないという。この背景にはEVの廃車は依然として少なく、HEVやEVの多くが中古車として海外へ輸出されているといった実情がある。日本で使用された車両は品質が高く、海外市場では新品の日本製品だけでなく中古の日本車への評価も高い。このため、大手解体業者の取扱料が半減しているという。
HOLLY HOCK PLANTは月間500トンの処理を想定していたが、現在は300から400トンで稼働している。これは選別精度を高めるための追加工程が必要になったためであり、当初予定していた月間500トンの処理をするには設備や工程の改善によって処理能力の最大化を図る必要がある。
近年は自動車部品のアルミ化も進み、アルミ製ハーネスやコンプレッサーなど新たな課題も浮上している。破砕と選別の高度な技術を持つ企業のみが生き残る環境となりつつあり、野末商店は技術力を軸に競争力を維持する方針である。
スクラップビジネスの持続可能性へ向けた取り組み
野末商店は資源循環を担うサステナビリティの取り組みを進める企業として、環境対応にも力を入れている。具体的には2025年から磐田市の工場では磐田市で発電した風力や水力などの再生可能エネルギーを使用し、エネルギーの地産地消を心がけスコープ2*のゼロを目指している。2026年4月までに全工場の電力を再エネへ切り替える計画であり、本社事務所についても順次対応を進める予定である。
*資源エネルギー庁が定める企業の温室効果ガス排出をどこまでの範囲で捉えるかを示す区分。スコープ1は自社の燃料使用や工場設備などから直接排出される温室効果ガス、スコープ2は購入した電力や熱の使用に伴う間接排出、スコープ3は原材料調達から製品使用、廃棄に至るサプライチェーン全体で発生する排出を指す。

元エンジニアとして特に印象的だったのは、これまで製品としての性能やコストの観点で設計されてきたモーターが、使用後の解体・資源回収という新たな評価軸のもとで捉え直されている点である。筆者がモーターおよび制御技術の開発に携わっていた当時は、性能向上や小型化、コスト削減をいかに両立させるかが主眼であり、解体やリサイクルのしやすさが設計段階で強く意識されることは多くなかった。
製品を設計する側にいた経験を踏まえると、こうした解体・資源回収の現場を実際に目の当たりにしたことは製品のライフサイクル全体を見据えた技術開発の重要性を改めて認識する機会となった。今後は設計とリサイクルの双方の視点を踏まえた取り組みが、資源循環社会の実現に向けてより一層求められていくと再認識した。
(IRuniverse Midori Fushimi)