2026年1月21日から23日にかけて、東京ビッグサイトにて「第18回オートモーティブワールド クルマの最先端技術展」が開催された。本稿では、同時開催された「第5回スマート物流EXPO」において紹介された東京都の水素社会実現に向けた取組、および水素モビリティ・ステーション普及加速支援事業に関する取組について紹介する。
東京都の水素社会実現に向けた取り組み
東京都は全国に先駆けて燃料電池タクシーを都内に大量導入してきた。この導入開始に合わせ、水素を使う行動を社会全体で加速させる官民連携プロジェクト「TOKYO H2」を新たに始動させている。水素は燃焼時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーとして、脱炭素社会実現に向けた重要な選択肢と位置づけられている。東京都は2050年までに①再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解し、CO2を排出せずに製造されるグリーン水素の活用、②グリーン水素を大型車両や船舶、航空機の燃料として利用、③グリーン水素を水素発電や熱蓄電、産業用途へ展開することを目指している。
水素モビリティではすでに燃料電池自動車や燃料電池バスなどはすでに商用化が進んでおり、将来的には大型船舶や航空機などへの活用も期待されている。経済産業省は2025年5月、福島県、東京都、神奈川県、愛知県、兵庫県、福岡県を水素モビリティ導入の重点地域に指定した。重点地域に指定された東京都は、燃料電池小型トラックおよび燃料電池大型トラックの導入促進に力を入れている。
しかしながら、運輸事業者にとって燃料電池トラックの導入には初期コストが課題となる。そこで東京都は、国の補助と東京都の補助を組み合わせた燃料電池トラックの導入支援を推進している。具体的には、導入支援基本補助として運輸事業者が新たにトラックを購入する際に同等仕様のディーゼルトラックと同水準の車両価格で購入できるよう、以下の支援を実施している。
- 燃料電池小型トラックでは上限1300万円(中小企業の場合は2600万円)
- 燃料電池大型トラックでは上限5600万円(中小企業の場合は9600万円)
*5年で5台以上の燃料電池トラックを導入する場合には、導入計画書の提出などを条件に追加支援が受けられる。
加えて、ガソリンや軽油に比べて高価となる水素燃料については燃料費支援として軽油価格との差を補填する制度も導入されており、導入後の運用コスト低減も図られている。
この支援制度により、東京都の燃料電池商用車の導入は以下の通りとなった。
- 小型トラック:約2,000台(2030年度の目標:約3,600台)
- 大型トラック:約250台(2030年度の目標:約500台)
- バス:約200台(2030年度の目標:約300台)
- タクシー:約450台(2030年度の目標:約600台)
燃料電池トラックは、BEVやEVで課題とされる充電時間の長さを解消できる点も大きなメリットだ。燃料電池大型トラックでは2か所から同時に充填することで、15分から30分程度、燃料電池小型トラックは10分程度で燃料である水素をフル充填することができるという。また、航続距離についても、燃料電池小型トラックで約260km、大型トラックでは約650kmとされており、長距離輸送においてEVに比べて優位性を持つという。
東京都は2050年までにグリーン水素の社会実装に必要な制度的整備を進めることを目標に、脱炭素社会の実現に向けた水素モビリティ普及策を継続していく考えだ。
水素モビリティ・ステーション普及加速化総合支援事業
東京都は「水素モビリティ ステーション普及加速化総合支援事業」を通じ、運送事業者の方々が水素モビリティの導入を後押しするための燃料補給拠点となる水素ステーションの整備を一体的に支援している。
この支援事業では運輸事業者へのアンケート調査や訪問を通じて意見や課題を抽出し、展示会などでの啓発活動を推進し、その結果、都内の水素ステーション整備数は令和7年9月末時点で30基となり、10年前の4基から大きく増加した。2030年には都内100基体制を目指している。
東京都による水素モビリティ導入支援と、水素モビリティ・ステーション普及加速化総合支援事業による取組が重なり合うことで、水素モビリティは持続可能な物流を支える現実的な選択肢としてその存在感を高めつつある。今後、水素ステーションのさらなる整備が進めば、水素モビリティは都市部のみならず広域物流にも展開可能なインフラとして機能するだろう。スマート物流EXPOで示された取組は、水素が物流分野における脱炭素化の切り札として現実味を帯び始めていることを印象づけるものとなった。
(IRuniverse Midori Fushimi)