イーグル工業(6486) 26/3Q3は9.1%増収72.1%営利増と自動車や一般機械の回復、半導体赤字縮小が寄与、26/3期自動車・建機、舶用向け好調で4.1%増収37.7%営利増は増額着地期待
26年6月にNOKと経営統合を発表、26/3期4.1%増収37.7%営利増は上振れ期待
株価3065円(3/13) 時価総額 1525億円 発行済株49757千株
PER(26/3DO予:14.2X)PBR(1.11X) 配当(26/3DO予)130円 配当利回り4.2%
要約

26/3Q3は9.1%増収72.1%営利増と自動車や一般機械の回復、半導体赤字縮小が寄与
NOK系列のメカニカルシール、特殊バルブ大手、船尾管シールなどでは世界シェア6割占める。26年6月にNOKとの共同株式移転による経営統合を発表している。
26/3Q3は売上高462.78億円(9.1%増)、営業利益44.39億円(72.1%増)、経常利益52.50億円(35.7%増)と、大幅な利益増が継続した。

セグメント別では自動車・建機向けが売上高238.71億円(11.4%増)、営業利益8.45億円(29.1倍)。EVの伸び率鈍化もグローバルで台数が伸び、トランスミッションの多段化、無段化による低燃費化に貢献するサスペンション用ソレノイドバルブ搭載車種の販売好調が寄与、内燃機関向けも従来品が堅調に伸び増収を確保した。利益はMIX良化でまだ低水準ながら利益率がアップ、増収効果もあり大幅増益となった。

一般産業機械向けは売上高113.96億円(10.1%増)、営利23.0億円(31.7%増)と唯一、同期比で減収となった。石化業界の競争激化で東南アジア地域のプラント稼働率低下に歯止めがかかり、インド向け事業が好調に推移、利益も稼働率アップで利益率向上が寄与し大幅増に転じた。

半導体業界向けは売上高42.52億円(26.5%増)、営業損失2.34億円(同期比3.56億円赤字減少も赤字継続)にとどまった。生成AI関連で業界は回復過程にあり同社製品の需要も急回復、在庫調整一巡で売上の伸び率は高い。ただし利益面はレガシー中心で他社より収益性が劣り、大型設備投資実行から固定費負担増が重荷で赤字を脱しきれていない。

収益性が良くシェアも高い船尾管シールを中心とする舶用向けは、売上高48.33億円(2.1%増)、営業利益12.83億円(3.7%増)となった。新造船需要、修繕需要とも堅調な需要増に支えられ、増収を確保した。

航空・宇宙関連は売上高19.26億円(24.2%減)、営利1.60億円(8.1%増)と、防衛関連の予算と宇宙関連の売上がQ4に集中するために大幅減収となった。利益は増産対応費用が一巡し利益率が改善し増益に転じた。

営業利益の増減要因では原材料の値上がり分は販売価格の値上げで対応、その他MIX良化とコストダウン等が寄与し、大幅増益を確保した。
26/3期自動車・建機、舶用向け好調で4.1%増収37.7%営利増は増額着地期待
26/3期会社予想は11/11の再増額修正を変更せず、売上高1710億円(期初計画比50億円増額、8/5予想比40億円増額、4.1%増)、営利117億円(同27億円増額、同11億円増額、37.7%増)、経常利益153億円(同22億円増額、同8億円増額、27.2%増)予想を据え置いた。ただ配当については11/11の10円増配に加えてさらに5円増配し、年間125円予想とした。ちなみに26/3Q3累計での進捗率は、売上高で75.3%も、営業利益で85.4%、経常利益で81.6%となっており、利益に対して増額修正を見据えての増配予想と見られる。

事業別では期初計画に対し自動車・建機、舶用が収益ともに増額している。また11/11の修正予想に対し、26/3Q3累計に対する進捗率は、自動車・建設機械は売上で77.4%、営業利益ではすでに計画の22.0億円を1.52億円上回っている。現状、EV向けが拡大、加えエンジン車向けも堅調に推移していることから、同分野は収益ともに上振れが期待される。一般機械向けは売上高で72.9%、営業利益で84.1%と、インド向けなどの寄与で売上進捗は今一つも、利益では計画を上回っている。こちらは売上が計画線、利益は若干の上振れが見込める。半導体については売上高で75.9%、営業赤字で計画比63.8%にとどまっており、半導体向けの下期回復が見込まれることから、売上が計画比上振れ、営業赤字も赤字幅が縮小しよう。舶用向けは売上高で74.6%、営業利益で72.6%と、ほぼ計画並の推移で、会社計画並の着地が見込まれる。航空宇宙は売上高で66.1%、営業利益で53.6%にとどまるが、Q4偏重を当初から見込んでおり、計画並の着地が見込まれる。
全体として、自動車・建設機械向け、半導体向けの赤字幅縮小などで、増額修正予想に対し、再増額での着地が期待される。
2026年6月にNOKとの共同株式移転による経営統合
同社は6月にNOKとの共同株式移転による経営統合計画を行う。NOK:イーグル工業=1:1の共同持株会社NOK Group株式会社を設立し株式移転完全親会社とし、2026年10月1日に新規東証プライム市場にNOK Group株式会社として新規上場予定とした。
今回の経営統合の戦略的意義は、シール事業の「再結集」にあるとみられる。最大の背景には、自動車業界におけるEVシフトの地殻変動がある。NOKの強みであるオイルシール等の「有機材(ゴム)技術」と、EKKの強みであるメカニカルシール等の「無機材(金属・セラミック)技術」を融合させ、次世代モビリティ(EV、水素)市場での高度な要求に応える、総合「シーリング・ソリューション」プロバイダーとしての地位確立を目指す。
統合発表は、11月10日の決算発表と同時に行われ、EKKが半導体・自動車事業の回復を背景に2026年3月期通期業績予想の再上方修正(営業利益117億円)を発表、NOKは同日、主力の電子部品事業の不振から、営業利益予想を377億円から329億円へ下方修正している。この経営統合の最大の背景には、主要マーケットの自動車産業が直面する変革にあるとみられる。自動車の動力源は従来の内燃機関からEV、PHEV、FCVへのシフトの渦中にある。 NOKとEKKのコア事業であるシール製品に対し、「既存需要のシュリンク」と「新需要における要求仕様の高度化」という二つの側面から変革圧力を受ける状況にある。ICEの主要構成部品であるエンジン(クランクシャフト、バルブステム等)やトランスミッション、燃料タンク関連のシール(オイルシール、ガスケット)は、EV化の進展に伴い、需要自体が構造的に減少する。これは特にNOKにとって、中長期的な収益基盤の毀損に直結する脅威となっている。一方、EVやFCVは、従来存在しなかったコンポーネント(e-Axle、大容量バッテリー、PCU、燃料電池スタック)を搭載する。これらの部品は、ICEと高回転、高電圧、冷却液(LLC)への対応、熱マネジメント、水素の封止などで機能する必要があり、シール製品にも高度な機能が要求される。具体的にはe-Axleのモーター軸シールには、20,000 rpmを超える高速回転への対応と低摩擦(電費向上)が、バッテリー冷却系バルブには精密な熱マネジメント機能が求められる。この「既存市場の縮小」と「新市場の高度な要求」という課題に対し、経営統合で対処するということになる。また両社の異なる顧客基盤(NOK:自動車、EKK:一般産業機械、造船、半導体、航空宇宙等)を活用し、相互の販路拡大が期待される。
統合企業の26/3期収益見通しは売上高9550億円(4.5%増)、営利567億円(40.1%増)
NOK Groupの想定収益では、26/3期が売上高9550億円(4.5%増)、営利567億円(40.1%増)予想となる。セグメントではシール・メカニカル関連、電子部品、その他・調整部門と想定、シール・メカニカル関連がほぼ利益の大部分を稼ぎ出す格好になっている。


足元の26/3Q3は、国内自動車メーカーの生産調整の影響を受けたものの、半導体関連向けメカニカルシールや電子部品(FPC)の需要が緩やかに回復し、利益率が改善傾向にある。基本的に26/3Q3累計でも同様な動きで、計画線上で推移している。現状、円安で推移していることもあり、通期予想の達成確度は高く、保守的な前提から上振れ着地の期待がある。

27/3期以降は次世代モビリティ、半導体・ハイテク産機、SCM最適化が成長の鍵握る
27/3期以降の成長ドライバとして、まず次世代モビリティ・輸送インフラ(シール・メカニカル事業)への対応がある。具体的にはEV・FCV向けコンポーネントの強化が重要。具体的には、電動アクスル向けシールにおいて、e-Axleの高速回転化・冷却油への対応で、NOKのオイルシールとイーグル工業の特殊シールの技術融合により、新たな売上拡大を目指す。また熱マネジメントシステムにおいては、EVの航続距離延長に直結するバッテリー冷却システム向けバルブや配管系シールでクロスセル(セット販売)のシナジー効果をねらう。高収益部門であるイーグル工業の船尾管シール事業については、IMO(国際海事機関)の環境規制強化から「環境対応・漏洩防止ニーズ」が高まり、エアーシール(無公害型)や水潤滑シールなどの高付加価値製品への需要増が期待される。現在、EAL(環境適合潤滑油)普及に伴い、従来油との潤滑特性差に起因する船尾管まわりの問題が増大しており、単純な安値よりも設計・材料・保守ノウハウを持つ同社の製品への需要が高まり、年間建造隻数の8割以上がエアシール搭載型になっている。なお今後は中大型船に対して油潤滑から水潤滑への動きが高まると見られ、技術優位にある同社への需要拡大が見込める。また高市政権下で造船業復権による国内造船業向けの需要増も期待される。同部門は営業利益率が30%弱となっており、高付加価値化でさらなる収益性アップが見込める。
もう一つは半導体・ハイテク産機分野へのリソース集中にある。まずPILLAやバルカーが先行する最先端プロセス(ALDやエッチング装置)向けの耐プラズマ性・耐薬品性に優れた特殊Oリングやメカニカルバルブの拡販が見込める。またデータセンター向けにはサーバーの液冷化(水冷システム)に伴う高信頼性クイック・コネクタや漏洩防止シールの需要急増を取り込む。さらにFPC分野では、EVバッテリー電圧監視用FPC(BMS向けFPC)がNOK(子会社のメルテック事業)の中計で成長ドライバと位置付けている。FPCをバッテリーメーカーや完成車メーカー向けに拡販する計画で、具体的にVWのID.2向け電圧監視用FPCを受注、2026年から本格生産を開始し、総売上額は4億ユーロ超を見込むとしている。同社はこの分野を「他社に先駆けて開発」「世界トップクラスのシェア」と位置づけている。このBMS向けFPCが強い理由は、単なる配線材ではなく、電池セル監視の安全部材であり、FPCに電子部品、コネクタ、バスバーを一体化し、バッテリーへの取り付け工程の自動化、低背化、軽量化に寄与するためとしている。足元は車載、スマホの不振で大幅収益悪化しているものの、27/3期以降は収益の再拡大が期待される。
そして、統合により、グローバルSCM最適化、シナジー効果の取り込みもポイントとなる。具体的にはアジアおよび北米における重複製造拠点・物流倉庫を統合し、固定費を削減する。さらに共同調達による原価低減で売上原価率の改善(1〜1.5ptの改善)を見込む。
一方、事業ポートフォリオ再編と資本効率改善も課題。不採算事業の整理、具体的には、内燃機関向け低採算製品の段階的な縮小または価格改定を強力に推し進める方針。
上記のように、成長ドライバの推進を行う中で、27/3期、統合初年度はPMI費用をこなしつつ増益と利益率改善を確保しよう。具体的には売上高9,800億円(前期比+2.6%)、営業利益650億円(+14.6%)程度が見込まれる。前提として約30億円のPMIコストを見込むものの、価格転嫁の浸透と製品ミックスの良化により、営業利益率は6.6%へと改善が進もう。続く28/3期は、統合シナジー効果が本格寄与し、売上高10,200億円(前期比+4.1%)程度が視野に入ろう。営業利益については820億円(27/3期想定予想比26%増)、2年で約250億円の利益増が期待される。付加価値製品の拡大による製品MIX改善(+180億円)、価格是正(+100億円)、シナジー(+80億円)が利益寄与しよう。一方で、労務費・PMI費用等の増加が100億円程度見込まれ、結果として820億円程度の営業利益が期待される。
株価は11/10の26/3H1発表時から、統合計画のアナウンスを受け、イーグル工業として増額修正もあったこともあり、株価は日経平均並の上昇を続け、1/13には2015年の高値3045円を抜き、2/25には最高値3535円の高値を付けたあと、一服している。現在26/3期再増額会社予想EPS216.13円に対しPER14.2倍はプライム市場機械平均PER26.2倍に対し割安感がある。なお類似事業を行うニチアス21.9倍、バルカー17.3倍、ピラー20.3倍に対しても割安となっている。なおNOK(7240)の13.6倍とほぼ同じ水準である。同社は同業界では半導体向け比率が低く地味な存在であり、また防衛関連でもそのウエイトは低い。しかし26/3期は利益で大幅増額となり、再増額修正も行っており、隠れた高収益部門で船尾管シール事業があり、これは高市政権の造船業への注力などが追い風になる。今後、収益性の劣るNOKとの統合となるも、27/3期も収益拡大、28/3期にはシナジー効果も加わるとみられ、上場来高値水準にあるものの、ややポジティブを継続したい。





*バルカー(7995)、ニチアス(5393)、ピラー(6490)との相対比較

(IRuniverse Okamoto)