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明治大学フェライト磁石勉強会後編:国内の研究動向と産業強化の方向性

2026/04/07 18:06
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明治大学フェライト磁石勉強会後編:国内の研究動向と産業強化の方向性

4月3日、MIRU取材チームは明治大学生田キャンパスの電気磁気エネルギー材料研究室を訪問。同研究室を率いる小原専任准教授に、フェライト磁石をめぐる研究開発動向と市場の将来性について取材した。前編ではレアアース依存脱却に向けて再評価が進むフェライト磁石の性能と、国内のフェライト磁石の研究・開発状況について報告したので、後編ではフェライト磁石の性能向上に向けた研究動向、日本の磁石産業の維持強化に向けた展望について述べる。

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フェライト磁石の性能向上に向けた研究動向

日本ではフェライト磁石の性能向上を目的として、1997年ごろよりランタンとコバルトを添加したストロンチウムフェライト磁石の開発が進められてきた。これはストロンチウム(Sr)系フェライト磁石SrFe₁₂O₁₉にランタン(La)とコバルト(Co)を適量含有させたSr₁₋ₓLaₓCoₓFe₁₂₋ₓO₁₉を採用するものである。これはランタンコバルト置換フェライト磁石と呼ばれ、ランタン(La)とコバルト(Co)を添加して新たな組成とすることで残留磁化を損なうことなく異方性磁場を大幅に向上させることができる。日本国内ではこのような組成制御により、従来のフェライト磁石の弱点であった磁力の低さを補い、高性能化を図っている。

さらに、2007年ごろからはLa-Co置換フェライト磁石のストロンチウム(Sr)を同族元素であるカルシウム(Ca)に置換したCa-La-Co系フェライト磁石の開発がなされてきた。例えばカルシウム系ではCa₁₋ₓLaₓCoyFe12-yO₁₉といった組成となる。このような元素置換によってフェライト磁石の磁気特性の最適化が狙えるものの、ストロンチウム系に比べ、カルシウム系は結晶組織制御が難しいとされ、Ca-La-Co系フェライト磁石のノウハウを積み上げてきた日本が中国に比べて優位性を持つ。

この置換技術の特徴は、レアメタルであるコバルトを使用するものの、その添加量が限定的である点にある。例えば、ストロンチウム系のランタンコバルト置換フェライト磁石では、鉄(Fe)が12モル量に対してコバルト元素の添加量xがおよそ0.3モル量程度にとどまるため、コスト増加の影響は小さい。またカルシウム系においても、添加量xが0.5程度であるためにレアメタル使用による価格高騰や地政学リスクの影響は限定的とされる。フェライト磁石は主成分として酸化鉄を用いるため、鉄鋼メーカーの副産物などを活用できる点もコスト面での優位性につながる。

日本の磁石産業の維持強化に向けた展望

日本のフェライト磁石産業は中国をはじめとする諸外国と比べ、技術面で優位性を有する一方で価格競争の激化により厳しい状況に置かれている。国内で研究開発を進める大学や企業も限定的であり、企業の収益性が低下すれば事業撤退につながり、技術流出や産業空洞化を招くリスクがある。

今後、日本の磁石産業の優位性を維持・強化するためには、短期的な補助金にとどまらず、長期的な研究開発支援や産業維持政策が重要となる。また、大学における基礎研究の継続、技術者の育成、企業による量産技術の維持といった取り組みなど、一体的な支援も必要で、資源安全保障や自動車産業への影響を踏まえてフェライト磁石を戦略技術として位置付ける視点も求められる。磁石産業、並びにモーターをはじめとした日本のものづくり技術を発展させるためには、国による支援や制度設計を通じて研究開発から量産、産業基盤の維持までを継続的に支える体制が必要である。小原准教授とMIRU取材チームは、日本の技術優位を維持するとともに市場競争力の強化につなげていくことが不可欠であるという認識を共有し、取材を締め括った。

 

筆者は前職においてネオジム磁石およびフェライト磁石を用いたモーターの制御研究に携わっていた経験を持つ。制御の観点から見ると、ネオジム磁石を用いたモーターはフェライト磁石モーターと比較して高速域や高温域での制御が複雑となり、実装面での難易度が高い場面も多かった。この点を踏まえると、今後の用途拡大やコスト低減の観点ではフェライト磁石に一定の優位性があると感じられる。

また、2010年頃のネオジム磁石価格高騰を契機として、ネオジム磁石を使用しないモーター開発が各所で進められたことも印象に残っている。当時は基礎研究や試作段階にとどまる取り組みが多かったが、2026年現在では地政学リスクや資源確保の課題を背景に研究成果の蓄積が進み、実用化を視野に入れた開発段階へと移行しつつある。こうした流れは、レアアース依存低減の観点からも重要な意味を持つといえる。

フェライト磁石は資源制約の小ささや価格安定性といった従来からの利点に加え、材料設計やモーター制御技術の進展によって適用領域が拡大しつつある。今後は性能向上とシステム設計の最適化が並行して進むことで、産業用途における存在感はさらに高まる可能性がある。引き続きフェライト磁石を巡る研究開発の動向を注視していきたい。

(IRuniverse Midori Fushimi)

Midori Fushimi

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