オーストラリア資源大手のエナジー・トラディション・ミネラルズ(Energy Transition Minerals、ETM)は4月7日、上場するオーストラリア証券取引所(ASX)で、「デンマーク自治領グリーンランドの自治政府が、レアアース採掘に関する同社のライセンス更新を認めないようだ」と発表した。ETMの内部の混乱に政治的要素が加わり、開発が滞ることになりそうだ。
プレスリリース: ASX:ETM - Update on Kvanefjeld Exploration Licence
発表によると、ETMが採掘ライセンスを保有しているのはグリーンランド南部のクヴァネフィエルド(Kvanefjeld)レアアース鉱山。表向きの理由は、2021年制定のウラン法に基づくとされた。実際、この鉱山はウラン含有量が高く、ETMは2007年から採掘事業を手掛けるも、ウラン法施行後の2022年以降は開発が滞りがちだった経緯がある。
ただ、ETMは声明で、「過去にはウラン法施行中にもグリーンランド政府は採掘を認可してきた」とも指摘した。ライセンス自体が不認可となるのは今回が初めてだ。
■企業内も政治面もゴタゴタ
理由は、企業内・政治面双方の混乱がある。
ETMは豪州企業だが、中国レアアース生産の盛和資源控股が発行済み株式の6.5%を握る。両社の関係は2016年に盛和資源の子会社がETM株をASXで購入したことに始まり、既に10年が経過する。この間、盛和資源の持ち株比率はETM側の増資などにより当初よりも低下した。ETMはさらに今年2月、盛和資源の反希薄化「トップアップ権」が期限切れであると主張し、両社のパートナー関係が終了したとASXに申請する意向と伝わった。盛和資源はこれに反発している。
政治面でも、グリーンランドは国際政治の争点だ。トランプ米大統領は2025年からあからさまにグリーンランドの領有意思を示してきた。ニューヨーク・タイムズは4月1日、米国がグリーンランドの軍事基地3カ所について追加のアクセス権を確保するため、デンマークと協議していると伝えた。グリーンランドにはレアアース確保はもちろん、軍事的にも米国の腕が伸びてきている。これにはグリーンランド市民も黙ってはおらず、3月下旬のデンマーク議会総選挙では、同国からの早期独立を掲げる自治領グリーンランドの政党「ナレラク」が初の議席を獲得した。
今回のライセンス不認可は、企業としての混乱と政治的な微妙さが合わさっての結果だったとみられる。グリーンランドは世界8位のレアアース埋蔵量を誇るが、ウランの含有が高く環境汚染が懸念されたり、人口が少なく物流などのインフラが不足していたりとレアアースの生産を商業ベースに乗せるには問題も多い。グリーンランド産レアアースが国際市場で大規模に流通するには、やはり時間がかかりそうだ。
(IR Universe Kure)