■戦火の中にある「静かな資源国家」
中東情勢が揺れる今、私はイランという国を単なる紛争の当事者として見ることができない。なぜなら、この国の本質は戦争の表層にはなく、その地下に眠る資源と、それを取り巻く構造にあると確信しているからだ。
米国とイランの関係は依然として不安定であり、制裁と緊張が続いている。しかしその裏側では、パキスタンが仲介に動くなど、秩序回復に向けた兆しも見えている。私は今回の衝突は長期化せず、あと数ヶ月で一旦の休戦に向かうと見ている。
ホルムズ海峡の封鎖など、誰の利益にもならない。ロシアを除けば、エネルギー価格の高騰を歓迎する国は存在しない。だからこそ、この混乱は長く続かない。むしろこれは、次の資源秩序への過渡期だと私は考えている。
そして私は、心からこの戦争の終結を願っている。パーレビ時代からの親しいイラン人の友人たちがいるからだ。彼らの穏やかな人柄と誇り高い文化を知る者として、この国が再び静けさを取り戻すことを切に祈っている。
■制裁に封じられた地下資源の宝庫
私は2014年頃、銅の副産品であるモリブデンの輸入を目的に、何度かイランを訪れたことがある。現地で契約までは成立した。しかし、最後の最後で壁となったのがアメリカによる経済制裁だった。
送金ができない。
それだけで、すべてが止まる。
この経験は、イランという国の本質を私に強く印象づけた。
イランは石油や天然ガスだけの国ではない。銅、モリブデン、鉄鉱石、亜鉛、さらにはレアアースやリチウムの可能性まで秘めた、総合資源国家である。特に銅とモリブデンは、エネルギー転換時代において極めて重要な金属だ。
だがその資源は、世界市場に出ることができない。
資源はあるが、金融で封じられている。
これがイランという国の現実である。
■制裁とは資源を止める装置である
私はこの経験から、制裁とは単なる外交圧力ではないと理解している。
それは
「資源を市場に出させないための仕組み」
である。
どれほど優れた資源があっても、
• 輸出できない
• 決済できない
• 投資が入らない
これでは資源は存在しないのと同じになる。
だが逆に言えば、この制約が外れた瞬間、イランは一気に資源供給国として浮上する。
私はこの“封印”が解ける瞬間を、常に意識している。
■インドとイラン――静かに続く現実的関係
インドとイランの関係は、政治的な対立を超えて続いている。
インドにとってイランは、
• エネルギー供給源
• 中央アジアへの出口
• 中国への対抗軸
である。
特にチャーバハール港の存在は象徴的だ。これは単なる港ではない。インドがパキスタンを経由せずに中央アジアへアクセスするための戦略拠点であり、資源と物流を結ぶ重要な結節点である。
私はこの構造を見て、イランが単なる資源国ではなく、資源を動かす地政学の要衝であると強く感じている。
■三極の思惑の中でのイラン
イランを巡っては、中国、ロシア、インドがそれぞれ異なる思惑を持って関わっている。
中国は資源とインフラを一体で押さえようとする。
ロシアは制裁下での連携を深めつつも、エネルギー市場では競合する。
インドは現実的かつ柔軟に関係を維持する。
私はこの中で、インドの立ち位置に注目している。
全面的な支配ではなく、部分的な連携。
これが長期的な信頼を生む。
資源は力だけでは動かない。信頼がなければ流れない。私はそう考えている。
■日本に残された可能性
日本とイランの関係は、決して悪くない。むしろ歴史的には信頼関係が築かれてきた国同士である。
だからこそ私は、戦争が終結し制裁が緩和されたとき、日本には大きな機会が残されていると見ている。
• エネルギー開発
• 銅・モリブデン資源
• 精錬・環境技術
• 高品質なサプライチェーン構築
日本の強みは量ではない。
「質と信頼」である。
これはこれからの資源市場において、最も価値のある要素になる。
■レアメタルという本当の主戦場
私はイランの未来を考えるとき、石油よりもレアメタルに注目している。
EV、再生可能エネルギー、半導体、軍需。
すべてがレアメタルに依存している。
イランにはその潜在力がある。しかもまだ十分に開発されていない。
未開発であること自体が価値
これは資源の世界では常識である。
■結語――封印が解ける瞬間を待つ
イランという国は、私にとって特別な存在である。
実際に足を運び、人と出会い、契約の現場を経験した国だからだ。