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第3回中国金属リサイクル春季会議2026 - 詳報②:各国で進む金属リサイクル戦略と資源囲い込みの動向

2026/05/13 15:02
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第3回中国金属リサイクル春季会議2026 - 詳報②:各国で進む金属リサイクル戦略と資源囲い込みの動向

第3回中国金属リサイクル春季会議2026(主催:中国有色金属工業協会(CNIA)の再生金属支部CMRA)が、ベトナム・ハノイ市のJW Marriott Hotel Hanoiにて、2026年5月9日から12日までの4日間の日程で開幕した。本会議は約1250人が参加者、海外11の省庁・関連機関および53社の出展者が集結し、世界各国のリサイクラー、メーカー、商社、技術企業、専門家が集結する重要な交流・商談の場となった。

10日の午前中に行われた「グローバル視点と最新動向(Global Perspective and Emerging Trend)のセッション」ではIRuniverse CEO棚町も登壇。本稿ではこのセッションで発表された5つの講演について報告する。

 

◼︎Policy Framework and Development Opportunities for the Metal Recycling Industry in Vietnam(ベトナム金属リサイクル産業の政策動向と成長機会):ベトナム金属リサイクル協会代表・ハノイ建設大学 科学技術研修応用研究所 研究員、Dr. Ngo Thi Lan Phuong

ベトナム政府は循環経済やESG対応を重視しており、金属リサイクル分野の制度整備を進めている。特に金属包装材、電子機器、自動車、電池などに対して具体的なリサイクル率目標が設定されており、企業には環境保護法や廃棄物管理規制への対応が求められている。

ベトナムの金属スクラップ市場は国内資源よりも輸入依存度が高く、2025年には約600万トンを輸入していた。主な供給元は台湾、日本、米国、豪州で、鉄・非鉄ともに輸入量は年々増加している。一方、国内のリサイクル拠点は北部地域に集中しており、ハノイ周辺では伝統的な「リサイクル村」が存在するものの、手選別中心の低効率な操業や環境汚染、労働安全面の課題を抱えている。このため、今後はAIを活用した自動選別技術や高度分離技術の導入、物流・価格評価制度の整備、正式なリサイクル制度への移行が重要になる。このため、今後は日本や韓国の自動車・家電リサイクル法制、欧米のAI選別技術などを参考にしながら、ベトナム独自の制度設計を進めていくという。

ベトナム政府は2026年までに50以上の工場の正式化と技術支援を進め、2028年には鉄鋼原料の50%をスクラップ由来とする目標を掲げている。Ngo氏は最後に、ベトナムはアジアの物流拠点としての地理的優位性や、電子機器産業へのFDI流入拡大を背景に将来的なリサイクル市場拡大余地が大きいと強調し、発表を締め括った。

 

◼︎Strategic Repositioning of Japan's Metal Recycling(日本の戦略資源としての金属スクラップ): IRuniverse株式会社CEO、棚町祐次氏

セッション2番目の発表で、弊社CEOの棚町が登壇。日本ではの金属スクラップが「廃棄物」ではなく、経済安全保障を支える戦略資源として再定義されつつある。政府は「循環経済アクションプラン」を通じて銅やアルミ、永久磁石などのリサイクル比率向上を掲げ、官民合わせて約1兆円規模の投資を進める方針だ。

日本では脱炭素化の流れを受け、電炉(EAF)鋼の拡大に伴って鉄スクラップ需要が増加しており、日本国内では高品質スクラップを囲い込む動きが強まっている。これにより、輸出余剰は2030年までに半減する可能性も指摘される。一方、中国やASEAN向け輸出は依然活発で、銅スクラップは中国価格の高騰を背景に流出が加速。アルミスクラップも東南アジア経由で中国へ流れるケースが増えている。欧米では既に輸出規制や課徴金の検討が進む中、日本でも2028〜2029年頃に同様の規制導入が予想されている。

こうした環境下で注目されるのが、高度選別技術の導入だ。特にLIBS選別機は、アルミ合金成分を瞬時に識別でき、「サッシ to サッシ」など高純度リサイクルを可能にする技術として期待される。さらに、日本では製鋼ダストから99.99%純度の亜鉛を回収するなど、高度な精錬技術も強みとなっている。棚町氏は資源小国だった日本は、リサイクルを基盤とした「循環型資源大国」への転換点を迎えている点を強調し、発表を締め括った。

 

◼︎Navigating Trade Hurdles in the Global Nonferrous Scrap Market(世界の非鉄スクラップ市場における通商課題への対応):Fastmarketsリサイクル金属価格担当者、Carman Chew氏

Fastmarketsはロンドン本社を中心に、米国、英国、アジアなど世界各地で商品価格評価を行う情報機関であり、金属や農産品、エネルギー、カーボン市場など幅広いコモディティを対象としている。Chew氏は過去1年間の非鉄スクラップ市場における「障壁と好材料」をテーマに、価格形成への影響を分析した。特に米国ではトランプ政権復帰に伴う米中貿易摩擦の再燃により、市場環境が大きく変化していると指摘。アルミ・銅スクラップの国際流通にも影響が及び、サプライチェーンや貿易フローの再編が進んでいるとの見方を示した。

また、世界的な地政学リスクや関税政策の不透明感が価格変動を強める一方、脱炭素化や循環型経済への移行を背景に、再生金属需要そのものは中長期的に拡大基調にあると説明。とりわけ、アルミや銅はEVや再生可能エネルギー関連分野で需要拡大が続くことから、スクラップ市場においても重要性が高まっているとした。

Chew氏はアルミ、銅、およびLME(ロンドン金属取引所)市場の今後の見通しについて触れ、市場参加者には価格変動リスクへの対応力と、グローバルな需給動向を踏まえた調達戦略がこれまで以上に求められるとの認識を示し発表を締め括った。

 

◼︎Outlook on Indian Metal Recycling Industry: Trends, Challenges and Way Forward(インド金属リサイクル産業の展望:トレンド、課題と今後の方向性):MRAI(Material Recycling Association of India)事務総長、Amar Singh氏

Amar氏は冒頭、金属リサイクルがインドの産業発展だけでなく、世界的な持続可能性や資源循環においても重要性を増していると強調した。インドの鉄鋼生産量が過去5年間で1億900万トンから1億5,200万トンへ拡大し、年平均成長率(CAGR)7%で成長している。このうち約7,140万トンが電炉などによる二次鋼材(リサイクル原料由来)であり、残り約8,040万トンが高炉など一次ルートによる生産だという。

また、国内の鉄鋼消費量も2020年の約1億トンから2025年には約1億5,000万トンへ増加しており、需要の約65%を建設・インフラ分野が占めている。その他、自動車、資本財・エンジニアリング、鉄道・物流、包装材、消費財分野などでも需要が拡大している。

Amar氏はインドが急速な都市化とインフラ整備を進める中、スクラップ資源の安定確保や高品質リサイクル材の供給体制構築が今後の重要課題になると指摘。鉄鋼需要拡大に対応しながら、資源効率向上や脱炭素化を実現するためには、循環型経済を基盤としたリサイクル産業の強化が不可欠との認識を示した。

 

◼︎China- Vietnam "Two Countries, Twin Parks" Cooperation: Jointly Promoting the Development of the Recycling Metals Industry(中国・ベトナム『二国双園』協力:リサイクル金属産業の発展を共同で推進):中国・広西チワン族自治区東興市 科学技術局 局長、Mai Yaohai氏

東興市はベトナム・モンカイ市と川を挟んで接する中国で唯一ASEANと陸海両面で接続する国境都市であり、中国ASEAN再生金属越境産業協力の中核拠点として位置付けられている。広西チワン族自治区の最西南端に位置し、2025年には東興口岸(国境ゲート)の輸出入総額が1,700億元を突破、出入境者数は900万人を超え、中国の陸路国境口岸で全国首位を維持しているという。

Mai氏は再生金属産業が中国の「双炭(カーボンピークアウト・カーボンニュートラル)」政策に合致するだけでなく、中国・ベトナム両国のサプライチェーン連携強化にも重要だと強調。東興市としては、国境立地や越境協力の優位性を活用し、再生金属越境産業園区の建設を積極的に推進していく方針を示した。

また、東興市とベトナム・モンカイ市は「両国双園」協力メカニズムを構築しており、ベトナム側工業団地との産業連携や資源共有を進めているという。これまでに江西省、広東省、福建省、浙江省などから37件の産業移転プロジェクトを受け入れており、中国ASEAN間の産業移転・越境協力拠点としての役割が拡大していると説明した。

 

BIR in Bangkok2025で交流したChew氏と再会 メディア同士、情報交換に勤しんだ

本セッションではベトナム、日本、中国、インド、さらにはグローバル市場動向まで、幅広い視点から金属リサイクル産業に関する発表が行われた。各講演を通じて印象的だった点は、日本では高品質スクラップの国内循環強化、中国・ベトナムでは越境産業連携、インドでは急拡大する鉄鋼需要への対応など、それぞれ異なる立場からリサイクル産業強化を進めている点である。世界的にリサイクル需要が拡大する中、各国では高品質スクラップの囲い込みや輸出規制、越境リサイクル拠点整備など、自国産業や資源安全保障を意識した動きも強まっている。

弊社CEOの棚町氏が発表した経済安保による輸出規制については参加者にインパクトを与え、セッション後にいつ輸出規制が始まるのか、等の質問がなされ日本のアルミ・黄銅スクラップの需要の高さが窺えた。今後は循環経済推進と資源ナショナリズムの双方が同時に進行する中で、各国の制度設計や貿易政策、AI選別など高度リサイクル技術の普及動向を注視したい。

 

【関連記事】中国金属リサイクル春季会議(CMRA)2026アーカイブ/Archive of 2026 CMRA in Hanoi

(IRuniverse Midori Fushimi)

Midori Fushimi

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