第3回中国金属リサイクル春季会議2026(主催:中国有色金属工業協会(CNIA)の再生金属支部CMRA)が、ベトナム・ハノイ市のJW Marriott Hotel Hanoiにて、2026年5月9日から12日までの4日間の日程で開幕した。本報告では、10日の午後に行われた「金属リサイクル産業の技術革新と低炭素化(Technological and Equipment Upgrading and Low-Carbon Development in the Recycling Metals Industry)」のセッション発表された4つの講演について報告する。
◼︎Advanced China's intelligent sorting technology, enable multi metals recycling's efficiency(中国の先進的なインテリジェント選別技術で、多種金属リサイクルの高効率化を実現):浙江天力設備科技有限公司(Zhejiang Tianli Equipment Technology Co., Ltd) ローカルマネージャー、Jin Cheng氏
浙江天力設備科技有限公司は分級機や金属分選設備を中心に事業を展開しており、近年は渦電流選別機、X線選別機、光学・レーザー選別機などを含む総合的な分選ソリューションを提供している。Jin氏は中国のアルミリサイクル業界の生産能力増強が続く一方、実際の稼働率は市場競争激化により低下していると指摘。その結果、ユーザー側ではアルミ成分や不純物管理に対する要求が高度化しており、従来の単純な選別工程では対応が難しくなっている。この結果、金属リサイクル市場では複数の選別技術を組み合わせた高精度な工程設計が重要になっている。
同社は2020年に鋳造用アルミスクラップ向け選別ラインを初導入し、中国国内最大級となる毎時30トン処理の廃アルミ選別ラインを展開している。2025年には智能倉庫一体型ラインや国産レーザー旧アルミ選別機も投入した。また、海外市場向けに短期間で移設可能な半移動式選別ラインを提案し、固定式に比べて基礎工事負担を抑えられる点を訴求した。さらに、型材アルミやUBC(使用済み飲料缶)向けでは、処理量や原料状態に応じて破砕・選別工程を細かく変更し、高効率化と設備保護を両立していると紹介した。
Jin氏は原料の多様化や品質要求の高度化が進む中、AIやセンサー技術を活用した智能分選の高度化が今後の競争力を左右すると指摘。分選工程の自動化・高精度化によって、再生アルミの品質安定化や歩留まり向上を図り、世界市場での展開をさらに進めていく方針を示し、発表を締め括った。
◼︎Localizing Advanced Global Sorting Technologies:SGM Enabling High-Quality Growth in APAC Recycled Metals(先進選別技術のローカライズで実現する、APAC金属リサイクル市場の高品質成長 SGMの取り組み):北京思吉科技有限公司(SGM (China) Technology Co.,)総経理、Cao Jun氏

Cao氏は冒頭に金属リサイクル業界における選別能力の重要性、および国際技術のアジア市場へのローカライズについて強調。従来の金属リサイクル業界では原料確保や供給量が競争力の源泉だったが、近年は国際規格や貿易ルールの変化、原料構成の複雑化により、競争の焦点が「資源」から「分選能力」へ移行していると指摘した。これにより、企業に求められるのは単に原料を確保することではなく「複雑かつ不均一な再生金属原料を、取引可能で追跡可能な標準原料へ転換する能力」となる。高品質な選別を実現することで、不純物低減やエネルギー消費削減、溶解工程の安定化につながり、結果として高付加価値化や利益率向上を実現できる。
しかしながら、欧米の先進分選技術をそのまま中国や東南アジアへ導入しても同等の成果が得られるとは限らない。その理由としては、アジア市場では原料の種類や不純物構成、処理量、操業条件が欧米と大きく異なることが挙げられる。特に、中国では原料の多様性が高く、前処理や破砕、篩分け、除去工程を含めた「全体工程設計」が不可欠だと指摘された。
Cao氏は最後に、今後の再生金属業界では「資源量」だけでなく「分選によって原料をどれだけ高品質化できるか」が競争力を左右すると強調。SPMとしては、グローバル技術と地域特性を融合させることで、顧客の収益性向上と国際競争力強化を支援していく方針を示し、発表を締め括った。
◼︎UBC Recycling System and Technology Application(UBCリサイクルシステムおよび技術応用):Juchen Equipment Technology Co., Ltd 総経理、Zhu Rongbin氏

Zhu氏はUBC(使用済み飲料缶)や天井材、ブラインドなど軽薄アルミ材のリサイクル向けに、側井式双室炉の活用について発表。同炉は明火を直接原料に当てずに加熱したアルミ溶湯で原料を浸漬溶解する方式で、焼損を抑えながら回収率を高められる点が特徴で、直燃式に比べて回収率で2〜3ポイント程度の差が出るという。
Zhi氏はUBCの用途として鋳塊、板材、アルミコイル向けの再利用を挙げ、中国ではUBC回収や「保級還元」分野で高い利用実績があると紹介した。ただし、現状ではUBC単独で完全な同級材への再生するのではなく、純アルミや3000系・5000系アルミ合金と混合し、再溶解原料として活用するケースが多いという。
また、UBC溶解時に発生する熱アルミ滓の処理も重要課題として取り上げた。アルミはどれほど清浄な原料でも溶解時に滓が発生するため、発生直後に一次回収を行うことで歩留まり向上につながると説明。小規模設備では台車式回収装置やボールミル、大規模では自動炒灰機、回転炉、予熱器付き連続炉などが用いられるとした。
Zhi氏は発表の最後にJuchen Equipment Technology社が再生アルミ加工設備分野で16年の実績を持ち、世界で600社以上に設備を提供していると説明。今後も再生アルミ産業の高度化に向け、顧客との連携を深め、歩留まり向上、省エネ、低炭素化に貢献していく方針を示し、発表を締め括った。
◼︎ESG / CBAM knowledge sharing UL Product Sustainability Services(SG/CBAMに関する知見共有): UL VS Vietnam Co., Ltd. ASEAN担当 アカウントマネージャー、Ho Thi Tuyet Anh氏

Ho氏は冒頭で近年は顧客から求められる前に、企業側が主体的にESG対応を進める必要があると強調。ESGは環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3要素から構成される単なる環境対策ではなく、企業活動全体を可視化・説明するための共通言語として機能するという。環境分野ではエネルギー消費、温室効果ガス排出、水利用、廃棄物管理などが重視される。一方、社会分野では労働環境や安全性、サプライチェーン管理などが対象となり、ガバナンスではデータ管理や説明責任、経営の透明性が重要になる。
Ho氏はESG関連基準については用途や市場によって使い分けが必要で、一般的なESGレポートではGRI、財務影響重視ではIFRS、欧州市場向けではESRSが用いられるケースが多いと指摘した。欧州の炭素国境調整メカニズム(CBAM)についても言及し、2023〜2025年は報告義務中心だが、2026年以降は実際のコスト負担が発生する見通しが共有された。対象は鉄鋼、アルミ、セメントなど高排出産業で、輸出企業にはScope1・Scope2排出量の定量的な把握と第三者検証可能なデータ管理が求められるという。
Ho氏は最後に、企業がESG対応を単なるマーケティングではなく「数値化・検証可能な形で説明できること」が今後の競争力につながると強調し、発表を締め括った。
今回の会議では中国系企業が展示会場で自社の選別機や分選ソリューションを積極的にPRしており、その技術力の高さや市場への普及度合いはIRuniverse調査チームの想定を上回るものだった。金属リサイクル市場においては単なる原料調達力だけでなく、高精度な選別技術や工程設計、設備提案力そのものが重要な競争力になりつつあることを強く実感した。
前報でも述べたとおり、金属スクラップやリサイクル技術は「新たな資源」として世界的に注目を集めている。今後は原料確保や輸出規制だけでなく、複雑化する原料をいかに高純度・高品質に選別できるか、またその選別ラインをどこまで高度化・自動化できるかが、各国・各企業の競争力を左右する重要な要素になるとみられる。
特に中国企業はAIやセンサー技術を活用した智能分選や、現場条件に応じた柔軟な工程設計を武器に国内外で存在感を高めている。今後は再生金属市場における選別技術の進化やサプライチェーンの変化、それに伴う国際競争構造の動向について注視していく。
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(IRuniverse Midori Fushimi)