世界リサイクル金属産業サミットフォーラム・電池リサイクルフォーラム(主催:Shanghai Metals Market (SMM))が、5月11〜12日に開幕した。本フォーラムにはIRuniverseもメディアパートナー企業として参加し、20の国と地域から集まった約600人の参加者が、アジアを中心とした持続可能な資源循環の未来について議論を交わした。
11日午後に行われたリサイクルフォーラムには、IRuniverse代表の棚町祐次氏も登壇。棚町氏は前日までベトナム・ハノイで開催されていた「第3回中国金属リサイクル春季会議2026(主催:中国有色金属工業協会(CNIA)の再生金属支部(CMRA))」に参加しており、同会議の講演プログラムを終えた直後に帰国。成田空港から本フォーラム会場へ駆けつけて発表した。
本報では本フォーラムの前半に発表された講演、およびパネルディスカッションの内容、次報では後半に発表された内容について報告する。
◼︎欧米のアルミスクラップ市場 - 米国関税と地域保護主義の狭間:Recycled Materials Association (REMA)国際貿易・グローバル政策担当副会長、Adam Shaffer氏
Shaffer氏は冒頭、米国は2025年に約1億3500万トンの再生資源を処理し、そのうち鉄鋼スクラップが約6500万トンと最大を占めたと説明。米国では年間約710億ドル規模の経済効果と約60万人の雇用を支えており、世界最大級の再生資源供給国として国際市場に大きな影響力を持つ。一方、輸出量は2020年以降減少傾向にあり、2025年は約3000万トンと過去10年以上で最低水準になったという。
さらに、トランプ政権下で強化された関税政策が、再生資源業界にも大きな影響を与えている。米国では鉄鋼、アルミ、自動車部品、銅関連製品に対し最大50%の追加関税が課されているが、金属リサイクルそのものは現時点で一部適用外となっている。ただし、リサイクル設備や機械部品などには関税が適用されており、設備投資コスト上昇が業界全体の負担になっているという。また、アルミや銅スクラップの輸出規制を求める動きも強まっているが、REMAは市場アクセス維持を最重要課題として輸出制限に反対する姿勢を示している。
さらに、米国内ではEPR(拡大生産者責任)制度の導入も進みつつある。現在、カリフォルニア州など7州で包装材リサイクルに関する制度が施行されており、再生資源の回収・処理体制に変化を与えている。また、銅価格高騰による通信ケーブル盗難増加や、PFOS規制強化による環境対応負担も新たな課題として挙げられた。
Shaffer氏は最後に、再生資源は「持続可能で、強靭かつ不可欠な産業」であり、グローバル製造業の重要インフラとして今後さらに役割が高まると強調し、発表を締め括った。
◼︎パネルディスカッション:東南アジアの再生金属市場における変化する力学 -マレーシア・タイ間取引の減少と、成長するベトナムのリサイクル経済
東南アジアの金属リサイクル市場をテーマにした本パネルディスカッションでは、マレーシア・タイ市場の停滞と、ベトナム市場の急成長が大きな焦点となった。登壇者らは近年の市場変化について、各国政府による輸入規制強化や環境政策の変化が大きく影響していると指摘した。
Malaysia Non-Ferrous Metals Association会長のEric Tang氏は、マレーシア市場縮小の最大要因として厳格化された輸入政策を挙げた。2018〜2019年頃、中国がスクラップ輸入を制限したことで、マレーシアに低品質スクラップが大量にマレーシアへ流入し、環境問題や社会的批判が発生。この結果、政府はスクラップ純度94.75%以上など極めて厳しい輸入基準を導入したという。ただし、現場では「ゼロ汚染」レベルの基準は現実的に達成困難であり、業界側も制度運用に苦慮していると説明した。
Managing Director, Mahanakorn Metalscrap Co., Ltd.(タイ)のAchirawat Thanasethatokul氏は、タイも輸入スクラップへの検査強化や規制強化が進んでいると指摘。基盤混入や低品質スクラップへの監視が厳格化され、輸入許可取得には複数省庁の承認が必要となるなど、業界負担が増しているという。また、ミャンマー地震後の建築廃材流入問題や環境汚染懸念も規制強化の背景にあると述べた。
一方、ベトナムは東南アジアにおける新たな成長市場として注目を集めている。2025年には鉄スクラップ輸入量が前年比で25%増加し、高品質スクラップの流入先として存在感を高めている。この背景には、外資誘致政策やインフラ投資拡大に加えEPR(拡大生産者責任)制度の導入がある。登壇者らはベトナム政府が「廃棄物」ではなく「資源」としてスクラップを位置付け、高品質スクラップ受け入れを推進している点を評価した。
また、EUや米国で進む資源ナショナリズムも議論された。欧州では改正廃棄物輸送規則(WSR)によって高品質スクラップ輸出が制限されつつあり、米国でもアルミ・銅スクラップを戦略資源として国内優先利用する動きが強まっているという。その結果、東南アジア企業は従来の高品質輸入スクラップ依存から脱却し、低品位スクラップから金属を高効率回収できる高度選別技術への投資が必要になるとの見方が示された。
最後に、登壇者らは今後の東南アジア市場では、業界団体と企業が連携し、各国政府に対して非有害スクラップの合理的な輸入基準整備を働きかける必要性を強調した。また、国際標準を参考にしながら、域内全体で透明性と持続可能性を高めることが重要だと締めくくった。
◼︎日本の再生銅市場分析:Shanghai Metals Market (SMM))再生銅市場シニアアナリスト、AW YONG YI CHEONG氏
AW氏は冒頭、日本がアジアにおける高品質スクラップ供給拠点として存在感を高めていると説明。日本市場の強みとして①高度な選別技術による高純度スクラップ、②成熟した都市鉱山インフラ、③東アジア主要市場への近接性、④輸出関税ゼロ、⑤厳格なトレーサビリティ制度の5点を挙げた。特に、日本の銅スクラップ輸出価格は1トン当たり8,112ドルと高水準で、低品位スクラップ加工拠点としての性格が強いタイ市場とは大きく異なると分析されている。
2025年には米中関税対立の影響で、行き場を失った米国スクラップが日本へ流入し日本の輸出入量はともに急増。一方、日本国内では銅精錬企業によるスクラップ需要が急拡大しており、輸出余力は徐々に縮小している。この背景には銅精鉱不足による製錬マージン低下や、2023年以降の政策変更がある。現在は日本国内で発生する銅スクラップの約47%が製錬向けに使用されており、今後さらに国内循環が強まる見通しだという。
価格面では、2026年以降も日本産高品質スクラップに対するプレミアムが高止まりしている。中国側で税務管理が強化され、適格なインボイスを確保できる輸入スクラップへの需要が拡大していることが背景にある。また、供給不足と規制強化によって、従来の「銅価格上昇=スクラップ価格低下」という相関関係は崩れつつあり、銅価格高騰局面でも高い支払率が維持されていると説明した。
さらに、日本政府は2023年以降、輸入制度改革やバーゼル条約関連規制、経済産業省の補助金を通じて、国内資源循環を強化している。加えて、JX金属や住友金属など大手企業は2030年までにスクラップ使用比率を20〜30%へ引き上げる方針を掲げ、保管・前処理拠点や低品位スクラップ対応炉への投資を拡大している。
AW氏は最後に「容易にスクラップを調達できる時代は終わった」と述べ、今後はスポット調達だけでなく長期契約や共同出資など、より深いサプライチェーン連携が不可欠になるとの見方を示し、発表を締め括った。
世界リサイクル金属産業サミットフォーラム・電池リサイクルフォーラム#3:世界市場から読み解く金属リサイクル産業の最新動向(後編)へ続く。
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(IRuniverse Midori Fushimi)