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ステンレス自体は影響ないが―じわじわ浸透するホルムズショック

2026/05/25 10:47
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各業界が「ホルムズショック」への対応に追われる中、あるステンレス問屋によれば、輸送コストの上昇を除けばステンレス自体の調達や価格への直接的な影響は今のところ限定的であるという。しかし、その一方で、加工済みの完成品を保護するために不可欠な「ビニール材」の供給が、静かに、しかし確実に行き詰まり始めている。

 

副資材価格がじわじわと上昇

 

今回の危機において、最も深刻な打撃を受けているのは「石油化学製品」である。ナフサはプラスチックや樹脂の原料であり、現代のあらゆる工業製品の「見えない血液」とも言える存在だ。ホルムズ海峡の封鎖を受け、国産ナフサ価格は跳ね上がり、異常な垂直上昇を記録している。この影響は、住宅建材や設備のみならず、金属業界の「副資材」という盲点を直撃している。

 

ステンレス流通の現場では、鋼材そのものの確保よりも、梱包や表面保護に使用する樹脂関係、特に保護ビニールの先行き不安が深刻化している。あるステンレス問屋の証言によれば、4月中旬の時点で発注したビニール材の納期が8月以降になると回答される事態が発生したこともあるという。

 

足元では例年通りの発注量は確保できる見通しが立ちつつあるものの、価格面での圧力は凄まじい。同業者によれば、2月末の事実上のホルムズ海峡封鎖からじわじわと価格が上がり始め、1年前と比べると既に2割増の価格で取引しており、6月からはビニール関係の価格が30%も引き上げられるという提示がなされているという。問屋側も「買わざるを得ない」という苦渋の決断を迫られている。

 

この背景には、日本のナフサ備蓄体制の不備があるといえる。赤澤亮正経済産業大臣は原油や石油関連製品について、「備蓄の放出や各国からの代替調達を通じて、日本全体として必要となる量は確保できている」と明言しているが、現場には正常な価格で供給されていないのが現実である。

 

法的な備蓄義務がないナフサは、供給が遮断されれば即座に製品不足に直結する運命にある。ステンレス問屋は、これからの夏にかけて最も厳しい局面になると予想しており、現状の在庫が底を突き、中東情勢の影響を本格的に受けた新たな調達分に切り替わる時期こそが、真の危機の始まりであると警鐘を鳴らしている。

 

優先的に確保できているはずのアルミ業界でも―白銅が値上げ発表

 

この「ビニール争奪戦」の裏側では、業界特有のパワーバランスも影響しているという。ステンレス業界関係者の間では、アルミ業界のメーカーが早々に動いて保護ビニールを優先的に確保してしまったために、ステンレス業界への供給が滞っているという噂まで飛び交っている。ビニールメーカー側がストックの予測を立てられなくなり、一時期は受注を停止する事態にまで発展したというのだ。

 

しかし、そうして「優先的に確保」しているはずのアルミ業界とて、決して安泰ではない。金属商社大手の白銅は21日、アルミ板に使用する表面保護ビニールの供給が不安定になっていることを理由に、製品仕様の一時変更を発表した。

 

対象となるのは厚さ3~50mmの特定のアルミ切板で、これまでは両面にロゴ入りの保護ビニールを使用していたが、5月下旬出荷分からは無地のビニールに変更される場合があるという。

 

この仕様変更は、保護ビニール自体の材質や品質には問題がないとされているものの、ロゴの印刷工程すら省略しなければならないほど、副資材の需給が逼迫している現実を浮き彫りにしている。

 

大手企業が供給体制の維持に苦心している事実は、下位の流通業者にとってさらに過酷な状況を予感させるものだ。物流経費の上乗せや、船便の遅延によるコスト増も重なり、ステンレス業界でも来月あたりからメーカーによるベースアップの提示が始まると見られている。

 

ホルムズショックという巨大な地政学リスクは、一見すると無関係に思えるステンレスの保護ビニールという細部から、日本の製造業の屋台骨をじわじわと侵食している。サプライチェーンの「隠れた急所」が突かれた今、企業には従来の調達ルートに固執しない柔軟な戦略が求められている。これから秋にかけて訪れるであろう「しんどい時期」を前に、副資材一つひとつの確保が、企業の生存を左右する分岐点となると想定される。

 

【参考記事】

赤澤経産大臣、原油や石油関連製品は「日本全体として必要となる量は確保」

 

Kota Kuribara

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