ソフトバンクグループの時価総額が6月1日、22年ぶりにトヨタ自動車を抜き、同社が日本最大の企業となった。ソフトバンクは5月上旬に国内電池事業への参入を発表したばかり。株価上昇のきっかけとなった5月末のフランスでのAIデータセンター建設発表の後ろで、事業の支えとして電池事業にも意欲を見せる。カギは「レアメタルレス」の蓄電池だ。(表題画像ロゴはソフトバンクグループのホームページから、図表はすべて同社発表資料より)
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■国産事業の基礎は「亜鉛ハロゲン化物バッテリー」

ソフトバンクは5月11日に国内電池事業への参入を発表した。少し詳しくおさらいすると、世界初となる「革新型バッテリーセル」を軸に、蓄電システムの開発から製造までを一貫して行うとしている。大阪府堺市にあるシャープ株式会社の工場跡地に工場を建設し、2027年度にバッテリーセルおよび蓄電システムの製造を開始、2028年度をめどに年間ギガワット時(GWh)規模の量産を目指す。
ソフトバンクの「革新型バッテリーセル」は、正極にハロゲン化物を、負極に亜鉛を採用する「亜鉛ハロゲン化物バッテリー」。現在主流のリチウムイオンバッテリーに比べ発火リスクが低く、リチウムなどのレアメタルを使わないことで材料調達も容易なのがメリット。リチウムイオンバッテリーと同等以上の優れたエネルギー効率を実現できるとしている。韓国新興のCOSMOS LAB(コスモス・ラボ)と提携して開発する。

■米国でも蓄電池工場を建設中
ソフトバンクは米国でも電池・電力事業に注力する。3月には、日米政府の戦略的投資イニシアティブの対象となるポーツマスの大規模な発電所およびAIインフラ建設プロジェクトに参画すると発表していた。カリフォルニア州やネバダ中では蓄電池工場の建設を進める。

プレスリリース:日米政府の戦略的投資イニシアティブにおける「ポーツマスコンソーシアム」発足 | ソフトバンクグループ株式会社
■次に来る金属を探せ 亜鉛、ニッケル、ウラン…
プレスリリース:ソフトバンクグループ、フランスで5GWのAIデータセンターを構築へ | ソフトバンクグループ株式会社
プレスリリース:ソフトバンクグループとSesterce、フランスのBosquelで1GWのAIデータセンターを開発へ | ソフトバンクグループ株式会社
ソフトバンクの時価総額首位奪取は、日本の産業が「製造業→半導体・AIデータセンター」へと中心を移した象徴的な出来事だとの見方が多い。それはまた、トヨタ式に象徴されたグローバルな分業体制時代の終わりの始まりとも言えるだろう。
AI、データセンター、EVといった新たな時代の主役を支えるのは一にも二にも電力だ。急増する電力需要を火力発電で賄うのは気候変動対策の観点から見て本末転倒なので、他の再生エネルギーの電力生産量が十分とは言えない中、おのずと原子力発電や蓄電池の需要が増える。
その蓄電池の材料も、これまでのようにグローバルに融通しあうことが期待しにくくなってきた。ソフトバンクが進める亜鉛のように、比較的手に入りやすいベースメタルへの注目が再度高まる可能性がある。車載電池の世界では、低コスト化を目指して入手の容易なナトリウムイオン電池の実用化が進む。
データセンター需要への期待で銅価格も高止まりが続く。MLCC(積層セラミックコンデンサ)に関連してニッケルパウダーの需要が増えるとの観測もある。原発が推進されれば、ウランなどにも注目が集まりそうだ。