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マサンのタングステン鉱山大規模拡張 非中国産の供給網強化へ

2026/06/23 14:35
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ベトナム最大のタングステン企業であるMasan High-Tech Materials(以下、マサン)は2026年6月、主力となるNui Phao鉱山およびNui Chiem地区の大規模な拡張を発表した。新たに1億1,500万トンに上るタングステン多金属資源が確認され、向こう20年から30年間の採掘継続を裏付ける強力な供給体制が整うこととなる。

今回の拡張で注目すべきは、この大規模な生産基盤の延長が「巨額の追加投資なし」で実現する点だ。

 中国の輸出規制とAPT価格の急騰

タングステンは半導体チップの配線材料、掘削機器、徹甲弾など幅広い用途を持つ戦略金属だ。中国は世界生産量の約83%を握るが、2025年2月にタングステンを輸出管理品目へ追加。APT輸出量は同年だけで約70%減少した。さらに2026年1月には日本向け輸出を事実上禁止し、同年2〜4月の対日輸出はゼロが続いた。

この結果、国際指標であるAPT(パラタングステン酸アンモニウム)価格は規制前比で約10倍、3,000ドル/mtu超まで高騰している。需要面でもAIチップ製造での使用量増加や、各国の国防費拡大が価格上昇に拍車をかけている。

米国では国防権限法(NDAA)に基づき、2027年1月以降、中国が関与したタングステン製品の国防調達を全面禁止する方針も決定しており、非中国産タングステンの争奪戦はさらに激化する見通しだ。

供給基盤の長期化へ

越南は年間約3,000トンの生産量で世界第2位のタングステン生産国だ。越南北部タイグエン省に位置するNui Phao鉱山は、中国以外では世界最大級の規模を誇る。

マサンはかねて探査区域の拡大を申請していたが、今回の発表で1億1,500万トンという具体的な確認資源量が示されたことで、同鉱山の長期的な供給力が裏付けられた格好だ。今回の拡張は既存の破砕・選鉱設備を活用するため、大規模な追加投資を必要としない点も注目される。

同社会長のDanny Le氏は「中国以外で規模ある加工済みタングステン供給が希少化している今、マサンの長期的な戦略的ポジションを強化するものだ」と述べた。越南政府も同鉱山を2021〜2030年の国家鉱物計画の重点対象に位置づけており、まさに官民一体となって世界の代替供給源としての地位を固めつつある。

供給不安を追い風とした業績への波及効果も鮮明だ。2025年に初めて通期黒字を達成したマサンは、2026年の利益目標を最大9,500万ドルに設定。日米欧豪の戦略投資家との交渉や、2027年第1四半期を目標とするホーチミン市証券取引所への上場移転も進めており、国際的な資金調達に向けた動きが加速している。

地政学的な分断が進む世界のタングステン市場において、同社の存在感は今後さらに増していくことになりそうだ。

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