Loading...

ごみを運ばず、燃やさず、資源化する—JOYCLE、小型アップサイクルプラント先行機を製造開始

2026/07/02 17:25
文字サイズ
ごみを運ばず、燃やさず、資源化する—JOYCLE、小型アップサイクルプラント先行機を製造開始

JOYCLE BOX初号機の前で記念撮影をするJOYCLEメンバー(右から2人目が小柳代表)

 

「リサイクルを推進しなければならない」。これは国内の事業者や消費者の共通の認識ではあるが、リサイクルプラントを新規で導入するには膨大なコストと一定以上のスペースが必要なため、業界参入へのハードルは極めて高い。現在の廃棄物処理システムは、遠方の大型焼却施設への「運搬」と「焼却」に依存しており、高い物流コストやCO2排出、深刻な人手不足が課題となっている。小型アップサイクルプラントを開発中のJOYCLE(ジョイクル)の小柳裕太郎代表に、廃棄物処理の現状や、自治体が頭を悩ませる「使用済み紙おむつ」への対応、そして量産化に向けた今後の展望について尋ねた。

現在の廃棄物処理における最大の問題は、ごみを運んで燃やすという既存の中央集権的なモデルが限界を迎えている点にある。国内では、世界で最も多いとされる焼却炉が老朽化によって急減しており、維持が困難になった自治体では遠方の施設までごみを運ぶ必要が生じ、コストが著しく増大している。さらに、物流業界における2024年問題やドライバーの高齢化により、ごみを運ぶ担い手が不足しており、事故のリスクも懸念されている。

さらに、高齢化社会で深刻化しているのが「使用済み紙おむつ」の処理である。紙おむつは使用後に水分を吸収して新品の約4倍の重さになり、介護現場の重い肉体的負担や収集運搬コストの増大を招いている。さらに水分を多く含むため焼却効率を低下させ、炉へのダメージや追加燃料の投入が必要になるなど、環境・経済の両面で負荷が高い。小柳氏は、「焼却炉に悪さをしてしまう紙おむつ問題に、多くの自治体が頭を悩ませている」と、現場の声を代弁する。

 

オンサイト資源化を可能に

 

これらの課題を解決するためにJOYCLEが開発したのが、分散型アップサイクルプラント「JOYCLE BOX(ジョイクルボックス)」である。ごみを発生源で直接処理する「オンサイト資源化」を可能にするもので、最大の特徴は、電熱を用いることでごみを燃やさず、体積90%以上減容し、無機資源や炭化物へと転換できる点にある。小柳氏は、「小型インフラにおいて、廃棄物のデータを取り、サイエンスしながら自動制御できる技術を持っているのは我々がおそらく初めて」と、その独自性に自信を見せる。

車両で牽引して移動できるモバイル型であり、設置場所を選ばないこともおおきなメリットの一つだ。当然、大型プラントと比べると導入コストも低い。さらには、独自のIoTデータ可視化システム「JOYCLE BOARD」を搭載しており、処理パフォーマンスの可視化だけでなく、リモートでの自動制御も可能である。化石燃料を使用せず電気で稼働するため、再生可能エネルギーを活用すればカーボンフリーで資源化を行えるほか、災害時には電力網や通信網に依存しない「防災オフグリッドインフラ」としても機能する。

JOYCLE BOXはまだ販売こそされていないが、すでに北海道から沖縄まで全国各地で幅広い実証実験を積み重ねており、確かな成果を上げている。特に、北九州市で行われた実証実験では、自治体や現場の大きな負担となっている「使用済み紙おむつ」を含む一般廃棄物の再資源化に成功。高含水な紙おむつを完全に炭化させ無機資源へと転換し、重量ベースで最大99.5%という驚異的な減容率を記録している。紙おむつの投入量を20kgから40kgへ倍増させた際も安定した処理性能を発揮し、大規模な施設での運用可能性も証明された。

紙おむつをはじめ処理が難しい廃棄物をその場で資源化することは、自治体の焼却負荷を軽減するだけでなく、災害時に外部インフラが停止しても施設内で衛生的に処理を完結できるという、BCP(事業継続計画)の観点からも大きな意義を持っている。

また、同社は生み出された資源を確実に活用する「出口戦略」の確立にも力を注ぐ。JOYCLEは、総合リサイクル企業のHARITAと資源リサイクルに関する基本合意書(MOU)を締結。JOYCLE BOXから生成される資源をHARITAの高度な選別・再資源化機能と接続し、セメント原料として社会に還元する仕組みの構築を目指している。JOYCLEが分散型の処理で資源を「生み出し」、実績豊富なHARITAがそれを「活かす」という役割分担により、資源循環の輪を完成させる構想だ。

現在、両社は物流コストの最適化や環境負荷低減効果の定量評価についても群馬大学、九州大学や岡山大学と協力して進めており、有価物としてのリサイクルを成立させるためのデータ蓄積を行っている。この連携は、単なる廃棄物処理の代替ではなく、廃棄物を「価値」へと変えるためのスタートといえる。

 

JOYCLE BOX初号機

 

先行発売の10機の製造を開始

 

JOYCLEは量産体制の構築に向けた取り組みを着実に進めており、「JOYCLE BOX」先行発売機10機の製造をこのほど開始。来年から国内外で発売を開始する予定だ。これまでのテスト機(初号機)による実験結果を反映させたこの次世代機は、大幅なスペックアップが図られる。具体的には、1日の処理可能量を100キログラムから200キログラムへと向上したほか、実証データを活用した自動制御機能を実装し、操作性や効率性も改善する予定だという。

なお、筐体サイズは従来の12フィートコンテナサイズから20フィートコンテナサイズへと拡大されたが、引き続きトラックでの牽引・運搬が可能なモバイル型としての強みを維持している。20フィートコンテナは最も一般的なサイズであり、処理能力が倍増したことを加味すれば、量販化におけるマイナス要素はほとんどないとみられる。

「環境にいいからやろうという押し付けではなく、コストメリットや『街の景観を損なわずにかっこいい』といったフィーリングを伴うことが大切だ」と小柳氏は語る。社名の由来についても、「資源と喜び(JOY)が循環(CYCLE)する社会を作りたいという想いを込めた」と明かし、経済性と社会意義を両立させた「稼げる環境系スタートアップ」として、分散型資源循環インフラを世界中に広めていく決意だ。

Kota Kuribara

関連記事

新着記事

ランキング