韓国・電子新聞(etnews)は7月7日、BYDコリアが輸入代理店のGSグローバルと共同で、12m級の大型電気コーチバスeコーチ12(eCoach12)を10月にも韓国で正式発売すると報じた。サイバーセキュリティ管理体制(CSMS)認証の取得を進めている段階で、認証完了を経ての投入になるという。価格は3億ウォン台で調整中とされ、現代自動車グループなど韓国製の電気バスより1億ウォン以上安い水準になる見込みだ。
eコーチ12の中核技術はBYD独自のCTC構造(セルをシャシーに一体化する方式)で、バッテリーセルを車体フレームと直接組み合わせることで軽量化とエネルギー効率向上を両立させている。次世代リン酸鉄リチウム電池を457.8kWh搭載し、韓国環境部の認証基準で最大761kmを走行できる。この電池仕様と航続距離についてはGSグローバルが5月27日の釜山でのイベントで自ら公開済みの情報であり、10月の正式発売時期やCSMS認証の進捗、価格帯といった部分が今回のetnewsの報道で新たに明らかになった。
乗用車市場では急激な伸びが続く
今回のバス投入は、BYDが韓国の乗用車市場で見せている急成長と時期が重なる。韓国輸入自動車協会(KAIDA)の集計によると、BYDは2026年1〜4月の累計で5,991台を販売し、輸入車ブランドとして4位に浮上した。前年同期の553台からは983.4%の急増だ。2025年1月の市場参入からわずか11カ月で累計販売1万台を突破しており、韓国の輸入車業界史上最速の記録だという。
この勢いを支えているのは徹底した価格戦略だ。主力SUVのアット3は最上位グレードでも補助金適用前で約3,300万ウォンとなっており、現代のコナEVや起亚のEV3など競合する韓国製モデルより約700万ウォン安い。2月に投入されたコンパクトハッチバックのドルフィンはさらに踏み込んだ2,450万ウォンからの価格設定で、補助金を加味すると2,000万ウォン台前半まで下がる。地域によっては最大169万ウォンの自社補助金も上乗せしており、価格に敏感な層への訴求を強めている。中東情勢の緊迫化に伴う原油高や韓国政府の車両走行規制強化も、内燃機関車から電気車への乗り換えを押し上げる要因になったとみられる。
背景には中国内需の落ち込み
もっとも、この韓国での攻勢はBYD全体が置かれている状況と切り離しては見えにくい。BYDが5月に発表した2026年4月の販売実績では、バスなど商用車を含めた月間販売台数が32万1,123台に達した一方、純利益は前年同期比55.4%減の40億9,000万元にとどまった。中国国内販売は8カ月連続の減少となっており、価格競争の激化や小米(シャオミ)など新興勢力の参入、政府補助金の縮小が要因として挙げられている。これに対し海外向け販売は過去最高を更新し、東南アジアや南米、中東でシェアを伸ばしているほか、タイやハンガリー、ブラジルでは現地生産体制の構築も進めている。
韓国での乗用車シェア拡大と、今回の商用車市場への参入は、中国内需の落ち込みを海外展開で補おうとするBYDの経営姿勢の延長線上にある動きと位置づけられる。韓国市場では今後、ジーカーやシャオペンといった他の中国系EVブランドの参入も見込まれており、商用車を含めた中国メーカーの存在感がどこまで広がるかが焦点になりそうだ。
出典:ETNEWS