8月19日、大阪商工会議所にて次世代テックフォーラム:2026年度 第1回 Neoマテリアルクラスター会議が開催された。
大阪商工会議所では、2030年を見据えた次世代の技術・産業分野におけるイノベーション創出を目的に次世代テックフォーラムを運営している。その一環であるNeoマテリアルクラスター会議は、多様な価値観への対応や持続可能な社会の実現に向けて新たな製品・技術が次々と生み出される中、その競争力を左右する重要な要素の一つであるマテリアル(素材)に着目した取り組みである。
本会議は「次世代磁性材料」をテーマに電気自動車や風力発電、ロボットなど幅広い産業を支える永久磁石をはじめとした磁性材料に焦点を当てたものである。
IRuniverseは大阪商工会議所からレアアース資源の調達問題、永久磁石を含む次世代磁性材料の市場動向と課題、新規磁性材料の開発動向、2030~2050年を見据えた磁性材料の需要予測と技術ロードマップについて発表を依頼され、CEOの棚町と記者の伏見が登壇した。
本会議のプログラムは以下のとおりで、30名ほどの参加者が集まった。
話題提供
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 関西センター 首席研究員 舟橋良次氏「次世代磁性材料の技術トレンド」
基調講演
IRuniverse株式会社 代表取締役社長 棚町裕次氏「現在のレアアース市場と次世代磁石の最前線」
ビジネス共創セッション
ネクストコアテクノロジーズ株式会社 取締役CTO 金清 裕和氏「レアアース磁石を取巻く環境と次世代高性能モータ開発」
名古屋工業大学 准教授 岩本悠宏氏「永久磁石エラストマーの開発と展開」
パネルディスカッション
パネリスト:
・IRuniverse株式会社 棚町裕次氏、伏見碧氏
・ネクストコアテクノロジーズ株式会社 金清裕和氏
・名古屋工業大学 岩本悠宏氏
モデレーター:
・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 舟橋良次氏
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 関西センター 首席研究員 舟橋良次氏「次世代磁性材料の技術トレンド」

本会議のモデレーターを務める産業技術総合研究所の舟橋氏はプログラム開始に先立ち、自身の材料研究者としての視点から、次世代磁性材料を取り巻く現状と今後の展望について基調講演を行った。
高性能な永久磁石は電気自動車の駆動モーターをはじめ、風力発電、鉄道、リニアモーターカー、ロボット、自動運転など幅広い用途で利用されている。中でも重要なのが、高い磁力を持つネオジム磁石である。一方、その性能を支えるネオジム、高温環境での特性向上に使われるジスプロシウムやテルビウムなどのレアアースは、供給を特定国に大きく依存している。このため、レアアースの供給が途絶えれば磁石だけでなく、モーターやEV、発電設備など川下産業にも影響が及ぶ。このため、レアアースは単なる資源問題ではなく、事業継続や経済安全保障に直結する課題である。
日本では南鳥島周辺の海底レアアース資源開発をはじめ、供給源を多様化する取り組みが進められている。ただし、資源確保だけでは問題は解決しない。レアアース使用量の削減、使用済み製品からの回収・リサイクル、代替材料の開発を並行して進める必要がある。
磁石そのものの高性能化も重要なアプローチとなる。磁石内部の微細組織や結晶方位、粒界などを制御することで、少ない資源量から高い性能を引き出す研究が進んでいる。特に供給リスクの高いジスプロシウムやテルビウムを減らしながら、高温でも性能を維持する技術が重要になる。さらに、レアアースを使用しない、あるいは使用量を大幅に削減した新たな磁石材料の探索も進んでいる。材料開発の手法も変化しており、第一原理計算に加えて、機械学習やディープラーニングを活用するマテリアルズ・インフォマティクスが広がっている。将来的には量子コンピューターを用い、膨大な元素や構造の組み合わせから有望な材料を探索する可能性も期待されている。
舟橋氏は、日本の競争力を維持するには資源確保、材料開発、磁石製造、モーターなどへの実装、回収・再利用を個別に捉えるのではなく、一つのサプライチェーンとして構築する必要があると強調。材料研究や製造・加工技術など日本が蓄積してきた強みを結び付け、研究成果を実際の製品や産業へ展開するエコシステムを形成できるかが、次世代磁性材料をめぐる国際競争の鍵になるとの見方を示し、挨拶を締め括った。
本フォーラムの詳細は、次報以降で順次報告する。
(IRuniverse Midori Fushimi)