オーストラリア・シドニーで10/27-29で開催された「IMARC 2026」では、世界各国の鉱山会社や資源関連企業が集まり、重要鉱物の新たな供給源確保に向けたプロジェクトや事業戦略を発信した。本稿では展示ブース立ち話シリーズ後編としてニオブ、ウラン、アンチモンなどに関わる3社NioCorp Developments、Alligator Energy、Larvotto Resourcesを紹介する。
MIRUはそれぞれの企業が進める米国の重要鉱物開発、豪州のウランプロジェクト、アンチモンの生産・供給計画について話を聞いた。
NioCorp、米国の重要鉱物供給網構築へ Mark Smith氏に聞くニオブ・レアアース開発
NioCorp DevelopmentsのMark Smith氏は、かつて米国のレアアース企業Molycorpの経営に携わった人物だ。Molycorp時代から米国のレアアース産業に深く関わり、現在はNioCorpのCEOとして、ニオブ、チタン、スカンジウム、レアアースなどの重要鉱物開発を進めている。
同社が開発を進めるネブラスカ州のElk Creekプロジェクトは、米国内での重要鉱物の供給体制強化を目指すもの。特にニオブやチタンなどは、高性能合金や航空宇宙・防衛産業をはじめとする戦略分野での需要が見込まれている。米国の防衛産業を含む国内需要への供給を視野に、プロジェクトの開発と事業化を進めている。
また、レアアースについても、MP MaterialsやLynasなど既存の精製・供給事業者との関係を含め、米国内外のサプライチェーンとの連携が重要となる。
今回のIMARC会場では、MIRU代表の棚町がMark Smith氏と再会した。両者が顔を合わせるのは2011年以来。米国のレアアース産業が大きく変化してきた十数年を経て、重要鉱物をめぐる新たな供給網の構築について意見を交わした。
Alligator Energy、豪州でウランの原位置回収を推進 ISR技術で新たな供給源開拓
オーストラリアでウラン探査・開発を進めるAlligator Energyは、南オーストラリア州のSamphireプロジェクトを中心に、ウランの新たな供給源の確立を目指している。
同社が採用を目指すのは、地下の鉱床に回収液を循環させ、ウランを溶出させて地上で回収するISR(In-Situ Recovery、原位置回収)技術だ。従来型の露天掘りや坑内採掘とは異なり、大規模な掘削や廃石処理を抑えられる可能性がある。
ウランは原子力発電の燃料としてエネルギー安全保障に直結する資源である。豪州での新たなウラン開発が、今後の国際的な燃料供給網にどのような役割を果たすのか注目される。
Larvotto Resources、豪州Hillgroveでアンチモン生産 中国依存の強い戦略鉱物の供給源に
豪州ニューサウスウェールズ(NSW)州でHillgrove金・アンチモンプロジェクトを進めるLarvotto Resourcesは、アンチモンの生産を通じて、中国への依存度が高い同鉱物の供給多角化を目指している。
Hillgroveは金とアンチモンを含む鉱床で、複数の鉱山エリアから構成される。アンチモンは難燃剤、鉛蓄電池、各種合金など幅広い用途を持ち、防衛・エネルギー関連産業でも重要な金属だ。
IMARCでは、同社のRon Heeksマネージングディレクターによると、Hillgroveは、豪州国内におけるアンチモンの新たな供給拠点として注目されるという。金との複合開発による経済性に加え、戦略鉱物としてのアンチモンをどのように国際市場へ供給していくかが今後の焦点となる。

重要鉱物プロジェクトの本当の勝負はこれから――資源価格の変動を乗り越えられるか
今回取材した企業のプロジェクトは、米国のニオブ・レアアース、豪州のウラン、アンチモンと対象鉱物こそ異なるものの、共通しているのは、各国が重要鉱物の安定供給に向けて国内外で資源開発を進めていることだ。
鉱山開発は、資源の存在を確認するだけでは完結しない。資金調達、採掘・回収技術の確立、選鉱・精錬設備の整備、そして長期的な販売先の確保が必要となる。特に重要鉱物では、鉱石の供給だけでなく、最終製品に加工するまでのサプライチェーンをどのように構築するかが重要だ。
日本企業にとっても、海外の資源開発会社とのオフテイク契約や出資、技術協力など、関与できる領域は幅広い。IMARCでの各社との対話からは、資源国と需要国の企業が開発の初期段階から連携する可能性が見えてきた。
一方で、こうしたプロジェクトを評価する際には、資源の将来性や高い市場価格だけでなく、価格変動に対する事業の耐久力にも目を向ける必要がある。現在のオーストラリアでは、重要鉱物への関心の高まりや相場上昇を背景に、フィージビリティ・スタディ(FS)を進める案件や、新規投資を呼び込むプロジェクトが相次いでいる。しかし、資源価格が下落すれば、採算性の悪化や資金調達の難航によって、開発計画の延期・縮小、さらには事業撤退に追い込まれるケースも過去に見られた。
実際、豪州の重要鉱物プロジェクトについては、プロジェクト数の多さに対して、最終投資決定(FID)に近い段階まで進んだ案件は限られるとの分析もある。重要なのは、資源価格が高い局面で投資を集められるかだけではなく、市況が反転した際にも開発を継続できる資金力、技術力、販売先、そして事業計画を備えているかという点だ。
さらに、中国のレアメタル・レアアースの供給政策や輸出規制が変化し、供給環境の緩和によって国際価格が下落した場合、現在注目を集めているスタートアップやジュニアマイナーがどこまで事業を継続できるのかも注視する必要がある。中国依存からの脱却や供給網の多角化という戦略的な意義があっても、最終的には商業ベースで競争力を持ち、継続的に生産・販売できなければ、安定供給の担い手にはなり得ない。
今回取材した企業が、今後どのように資金を確保し、技術を実証し、商業生産へと進んでいくのか。MIRUとしても、今回の取材を出発点に、2年後に各プロジェクトがどの段階まで進み、どの企業が事業を継続・発展させているのかを改めて追っていきたい。重要鉱物の供給網多角化に向けた期待が高まる今だからこそ、プロジェクトの発表や投資計画だけでなく、その後の進捗と事業の持続可能性を見極めることが重要になる。