解体工事の実情を消費者に伝えることが大事〜株式会社クラッソーネ
9月10日(火)開催のIRRSG 2019年 第6回例会@学士会館(千代田区神田錦町)。講演トップバッターは、今回のテーマ「令和時代のNEW リサイクルクリエイター」に、まさに相応しい若手社長、株式会社クラッソーネ 川口哲平氏だ。解体工事マーケットや同社事業である解体業者の無料斡旋サイト「くらそうね」について解説。
→(関連記事)これから市場は急拡大!建物解体のプラットフォーマー〜株式会社クラッソーネ
課題山積の建物解体マーケット
まず川口氏が、月の半分を過ごす屋久島オフィスを紹介。豊かな自然で知られる島だが、エネルギーに関しては、島内の水力発電で100%まかなっているという、稀有な島なのだそうだ。
解体のマーケットについてだが、建設業から出る廃棄物は全廃棄物中の約21%で、その約6割が解体由来のものだという。これは廃棄物総量の約12%にあたるほどのボリュームだ。
昨今、空き家問題は深刻化しており、解体件数は年間で約50万棟にもおよぶという。ちなみに寿命は40〜50年程度で、これからしばらく家屋解体案件は増え、マーケットはかなりの広がりを見せると考えられている。正確なデータではないが、現在の解体市場は推定で1.5兆円強の規模で、そのうち戸建てはほぼ半数程度と見られている。
人口が都市部に移動することで、地方において空き家問題は特に深刻になっている。老朽化はもちろんだが、不審者が住み着くのでは?など、行政にも多く相談が寄せられているという。
さらにアスベストの問題もある。これまでは「アスベストの使用可能性あり」と思われる物件のみを検査すれば良かったが、2021年からは全解体物件に関してアスベストの使用有無チェックおよび報告義務化が行われる見込みだ(だだし方向性が示されただけで、法制定はこれから)。すなわち、解体業界においてはアスベストの処理、リサイクル対応が大きな問題となってくるのだ。
施主と工事会社が抱える課題を解決するマッチングアプリ「くらそうね」
そんななか、施主と工事会社は以下のような課題を抱えている。
施主:見積もりが大変、時間もかかる。HPを見てもどんな会社かわからない。金額以外の比較要素が分からない。HPを持っている会社が少ない(同社契約1,000社中2割しかHPを持たない)。
工場会社:丁寧な工場をしていることが伝わらない。不正会社と同じ土俵で比較される。価格でしか判断されない。相見積もりに疲れた。
環境省も問題として捉えており「建設リサイクル制度の施行状況の評価・検討についてとりまとめ」として報告している。
→ https://www.env.go.jp/recycle/build/matome01.pdf
ここでは、発注者の応分費用負担の意識が低い旨などが示されている。こうしたさまざまな課題の解消のために、「くらそうね」は生まれた。
「くらそうね」は携帯アプリLINEを用いて、工事会社数社から見積もりが取れるサービスだ。最大の特徴は、解体工事のコスパが見えること。これまで「解体工事のコスパ」はあまり指標として示されてこなかった。「くらそうね」では、工事を依頼したユーザーの工事後の声(評価)を見ることができる。
それでは、解体工事業界の未来はどうなるのか。川口社長いわく「それは現場にあるのでは?」。同社では川口社長はじめスタッフが解体現場、産廃業者、行政に足を運び、コミュニケーションをとって、身をもって実情把握に努めている。
そして、その得られた実際の情報を消費者に伝えること、それが一番大事であり、建物解体の実情理解につながるのではないかと、川口社長は締めくくった。
(IRuniverse kaneshige)
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