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Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.59 使用済自動車台数と中古車輸出台数の短期的変動(1)

2020.08.19 09:32

 新型コロナウィルス感染症の影響により経済活動が一時的にスローダウンしている。自動車の静脈市場においても同様であり、使用済自動車台数や中古車輸出台数の減少が予想される。また、使用済自動車市場は、中古車輸出市場と競合することがある。世界経済の低迷により中古車輸出台数が減少することで、国内の使用済自動車台数が増大する可能性もある。これらの感染症の影響はどうだったのだろうか。今回は、使用済自動車台数と中古車輸出台数の近年の動きを眺めておく。

 

 まず、図1は自動車リサイクル促進センターにより公表された使用済自動車引取件数の推移である。これを見ると、2020年5月は、3月や4月より減少が大きい。対前年同月比では、2月、3月、4月は96%、95%、97%であるが、5月は85%である。6月に若干回復し、91%になっているが、7月は再び85%と悪化している。

 

 2019年を見ると、7月は前年と比べると大幅に増加している。それが上記の85%に影響しているものと思われる。そこで2018年に対する2020年の比率(2020年/2018年)を出してみると、5月、6月、7月はそれぞれ81%、91%、91%である。つまり、6月と7月は同等であり、5月とは異なる水準である。これを見ると、使用済自動車の発生量は5月が底であるようにも見える。とはいえ、6月や7月も前年や前々年を下回っているのは確かであり、感染症の影響から回復しているようには思えない。

 

 

グラフ

図 1 日本の使用済自動車の引取報告件数(引取工程)の推移
出所:自動車リサイクル促進センターホームページより筆者作成

 

 

 図2は中古車輸出台数の推移である。これを見ると2020年3月の時点で対前年同月比が92%となっており、感染症の影響とも思われる減少の様子が窺える。続く4月、5月の対前年同月比は49%、50%であり、感染症の影響が顕著に表れている。6月は68%であり、多少回復傾向になっている様子が見えてくる。

 

 数量的には2020年4月よりも5月のほうが少ない。前年の2019年5月を見るとさらに前年の2018年より大きく減少していることがわかる。2018年に対する2020年の比率(2020年/2018年)を出してみると、4月が48%であるのに対して、5月は42%である。これを見ると中古車輸出台数も5月が底なのかもしれない。

 

 

グラフ

図 2 日本の中古車輸出台数の推移
出所:財務省貿易統計より筆者集計
注:バス、乗用車、貨物車の合計。2018年、2019年は確定値、2020年は確報値。

 

 

 使用済自動車引取件数(図1)と中古車輸出台数(図2)を比較すると、2020年4月の対前年同月比は、使用済自動車引取件数が97%であり、中古車輸出台数が49%である。続く同年5月の対前年同月比は、使用済自動車引取件数が85%であり、中古車輸出台数が50%である。これらから、中古車輸出台数のほうが感染症の影響が大きいことが窺える。また、中古車輸出台数のほうがタイミング的にも早く影響があったと言うこともできる。

 

 図3は図1の使用済自動車引取件数と図2の中古車輸出台数を合計したものである。これを見ると、2020年3月から5月にかけて減少していることがわかる。対前年同月比も減少しており、2020年3月、4月、5月の対前年同月比はそれぞれ95%、83%、75%である。6月の対前年同月比は84%と若干回復している。

 

 

グラフ

図 3 使用済自動車引取件数と中古車輸出台数の合計の推移
出所:財務省貿易統計、自動車リサイクル促進センターホームページにより筆者作成

 

 

 図4は、図3の使用済自動車引取件数・中古車輸出台数の合計のうちの中古車輸出台数の割合を示したものである。2018年から2019年の推移を見ると、中古車輸出の割合は25%から31%の間で推移していることが確認できる。2020年になると、1月、2月、3月は前年、前々年と同等の水準であるが、4月以降は前年、前々年の水準と乖離していることがわかる。4月は16%と大きく減少し、5月は若干回復しているが、18%とまだ低い。6月は23%にまでなっているが、前年、前々年の水準には至っていない。

 

 

グラフ

図 4 使用済自動車台数・中古車輸出台数の合計のうちの中古車輸出台数の割合の推移
出所:財務省貿易統計、自動車リサイクル促進センターホームページより筆者作成
注:[中古車輸出台数]を[使用済自動車台数・中古車輸出台数の合計]で割ったもの。

 

 

 これらより何が言えるだろうか。まず、図3で見たように、使用済自動車引取件数・中古車輸出台数の合計は減少している。それは図1、図2で見たように、使用済自動車引取件数、中古車輸出台数ともに減少した結果である。これが意味するのは、国内で不要となる自動車そのものが減少しているということである。

 

 使用済自動車引取件数・中古車輸出台数の合計は、抹消登録台数(前期末自動車保有台数+当期新車販売台数-前期末自動車保有台数)の近似値である。新車販売台数が減少したり、保有台数が増加すればこの数値は減少する。つまり、買い替えを控えるなどの動きがあれば、この数値は減少する。感染症の影響により経済がスローダウンし、その結果として使用済自動車引取件数・中古車輸出台数の合計が減少したということである。

 

 また、中古車輸出市場はしばしば国内中古車市場と競合することがある。感染症の影響により、海外からの引き合いが減少し、国内中古車市場に車が流れた場合、使用済自動車引取件数・中古車輸出台数の合計が減少しうる。それらの動きが数値に表れているのではないだろうか。

 

 次に、図4より使用済自動車引取件数・中古車輸出台数の合計における中古車輸出の割合が減少している。これより、中古車輸出市場に行くはずのものが使用済自動車市場に流れていた可能性が推測される。使用済自動車引取件数は減少しているが、中古車輸出台数ほどではない。つまり、中古車輸出市場の大幅な縮小により、使用済自動車市場の縮小の一部が抑えられたのかもしれない。とりわけ4月はその傾向が最も強かったのではないだろうか。それ以降は徐々にではあるが、元に戻りつつある。これらの点はあくまでも仮説でしかなく、さらなる議論、検証が必要である。

 

 本稿では示していないが、新車販売台数の対前年同月比は、2020年4月、5月、6月、7月がそれぞれ71%、55%、77%、86%であり、5月を底として徐々に回復しつつある。図4を見ると、使用済自動車引取件数・中古車輸出台数の合計における中古車輸出の割合は2020年6月には23%と回復傾向である。これが7月以降、どのようになるかであろう。

 

 

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阿部新(Arata Abe)

 山口大学 国際総合科学部・准教授

 2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。

 同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授

 2015年より同大学国際総合科学部・准教授

 

 

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