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未知なる資源探訪シリーズ#2 隠れたイランの大鉱脈バローチスタン

2020.10.26 13:51

 前回までパキスタンのバローチスタンについて触れてきた(→ 未知なる資源探訪シリーズ#1 中国が狙うパキスタンの金属資源)。このバローチスタン、即ちバローチ人の土地はパキスタンのみならずイラン*、アフガニスタンにも存在する。

 

 イランにおいては南東部に位置しパキスタン、アフガニスタンと国境に位置し、海に面しており湾岸諸国ともつながる交通の要所である。

 

 

地図

(バローチスタンの州内主要都市と広域図 出展:Google Map)

 

 

 パキスタン同様、金属資源が豊富かつ民族紛争を抱える点で近い。中東の金属資源の行方、またイランの運命を占う上で重要な地域である。

 

 バローチスタンは山がちで、そびえる山々は赤茶色、紫色等と鉱山然としている。

 

 

写真

(バローチスタンの山 筆者撮影)

 

 

 イランの国営イスラム共和国通信もバローチスタンをイラン屈指の金属資源に富んだ州と紹介する。銅、アンチモン、チタン、鉄鉱石、鉄化合物、マンガン、クロム、スズ、タングステン、マグネシウム、カオリナイト(カオリン石)、ケイ素等々希少金属含む鉱物資源が豊富なのは勿論のこと、花崗岩等建材も豊富である。クロムは中東で3番目に多いという。しかし、技術、資金不足により採掘・精錬は進んでおらず、未だ海外輸出の機会に恵まれていない。石油が利益を生み出しにくくなっている現状、イラン国家にとって金属資源の重要性は高くなる。パキスタン同様、少数民族の資源は誰のものか?という問題に行きつく。現状では鉱山の本格的開発が進んでも、バローチ人には鉱山労働者の募集が増える程度の恩恵しかない。

 

 イランのバローチスタンはパキスタンのグワダルと同様天然の良港チャーバハールを有する。同港は自由貿易・工業特区に設定されている。自由であるが故にイランの神権体制にとって好まざる物も流入する。

 

 現地のバローチ人は酒を飲みたい時は同港を通じ湾岸から仕入れると言っていた。グワダル同様、中国も食指を伸ばしており。イランのネギン石油化学企業集団と中国の国家石油和化工網は戦略的パートナーシップ協定を結んだ。両国企業の協力の下でチャーバハールに石油化学工業団地を建設するとのことである。現地人によれば同港は中国製品供給の窓口になっているとのことで、安い中国製品との競争にさらされた地元の工場が倒産し失業も発生しているとこぼしていた。同港の戦略的価値により、中印対立の隠れた舞台にもなっている。インドは中国がチャーバハールをグワダル同様手中に収めるのを阻止するため、大臣の訪問含めイランに働きかけをしている。

 

 イランのバローチ民族問題について概観したい。バローチスタンはレザー・シャーが権力を握る以前は半独立状態の部族国家群であった。放牧や交易に従事する傍らで略奪を大きな収入源としていた。レザー・シャーが1921年のクーデターにより権力を握ると中央集権体制確立のため、バローチスタンを「征服」した。略奪の機会は失われることになった。部族の指導者たちは国家と現地社会の中間に位置する役人として再編され自治は失われた。その一方で、略奪を生業とする程の貧しい地域であったことから、産業は遅々として育たずインフラ整備も遅れている。

 

 こうした歴史的背景、バローチ人の貧しい経済状態によりイランの多数派ペルシャ人はバローチ人を野蛮人視する。彼らはパキスタン同様シャルワールカミーズを着用している。これが国民服のパキスタンと違い、イランではかなり異質だ。

 

 

写真

(テヘランのバローチ人 筆者撮影)

 

 

 バローチスタンを訪問したことをイラン中心部のペルシャ人に話すと、何故そんな場所へ行ったのかと怪訝な顔をされた。バローチ人はイランの映画、ドラマでは犯罪者等、粗暴な役割を与えられる。

 

 イラン側バローチスタンにもご多分に漏れず反政府武装勢力がいる。

 

 神の軍団(Jundullah)が一番有名である。度々治安部隊への襲撃や誘拐、爆弾テロ等を繰り返している。スンニ派テロ組織と分類されがちだが実態はバローチ民族主義勢力である。スンニを掲げるのはそれがバローチ人の宗派であり、シーア専制体制に反抗する丁度いい旗幟となるからに他ならない。

 

 より深い背景として彼らの隠れた収入源である密輸問題がある。前述のレザー・シャーのバローチスタン征服後、バローチ人が略奪に従事できる環境は消滅したが、それに代わって密輸に手を染める者が現れた。

 

 イラン―パキスタン国境は広大かつ平坦な地形でもないため、両国ともその全てを管理することは不可能である。元来季節で移動を繰り返す遊牧バローチ人は国境観念に乏しく違法出入国に躊躇しない。

 

 パキスタン領のバローチスタンで商品を仕入れてイラン領内で売りさばく、またはその逆の密輸行為が新たな生業となった。神の軍団はそうした密輸業者に立脚した勢力という一面がある。国家の無為無策により貧困状態にあるから密輸に手を染めざるを得ないのに、それを取り締る不当な官憲と戦うという大義がある。

 

 かつてフランスや中国等で塩の専売制がしかれていた頃、塩の密売人は国家権力と敵対する存在のため、時に官憲と戦う武装勢力でもあり義賊とされたものもいた。神の軍団もテロ組織とされながら、そうした義賊的側面がある。あるバローチ人ガイドは神の軍団を一般市民を攻撃するテロ組織ではなく、警察・軍を主に狙う反体制派だと評していた。

 

 カージャール朝末期、イラン革命の際にも辺境の動向は、イランの変革に影響を与えた。バローチスタンもまた、次の動乱の震源地となる可能性を持っている。

 

*正式名称はシェースターン・バルーチェスタン(Sistan and Baluchestan)州

 

 

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Roni Namo

 東京在住の民族問題ライター。大学在学中にクルド問題に出会って以来、クルド人を中心に少数民族の政治運動の取材、分析を続ける。クルド人よりクルド語(クルマンジ)の手ほどきを受け、恐らく日本で唯一クルドを使える日本人になる。今年7月に日本の小説のクルド語への翻訳を完了(未出版)。現在はアラビア語学習に注力中。ペルシャ語、トルコ語についても学習経験あり。多言語ジャーナリストを目指し修行中。。

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