【コモディティと人物余話】 ナポレオンは金とコーヒー価格をチェック-大陸封鎖令の効果見極めで
2020/12/30 18:40 FREE

イギリスに対する大陸封鎖令を発令した際、どの程度の効果が出ているのかを確かめたかった皇帝ナポレオンはコモディティ価格に注目したという。それはロンドン市場の金(ゴールド)とコーヒー価格の推移だった。(画像はYahoo画像から転載)
皇帝ナポレオンは1806年11月、入城したベルリンでイギリスに対し大陸封鎖令を発令し、イギリスを経済的に追い詰めようと試みた。この効果を確かめるため、ナポレオンが注視していたのはロンドンでの金(ゴールド)価格とコーヒー価格の推移だったという。
ヨーロッパではすでにコーヒーが広く飲用され、物価のバロメーターとしての役割もあった。ナポレオンは金価格が高く、コーヒー価格が安ければ封鎖の効果があると踏んでいた。また、砂糖価格の暴騰は代替となるビート(てんさい・砂糖大根)から製糖を作ることが普及するきっかけとなったとされる。
結果的に、大陸封鎖令は人々に不評だった。当時、ヨーロッパ諸国は産業革命後のイギリス製品を輸入し、その依存度が大きかったほか、フランス国内での品不足に民衆の顰蹙(ひんしゅく)も買ったのだ。こうしたなか、1810年にロシアがイギリスと貿易を再開した。
これに激怒したナポレオンはロシア制裁に乗り出す。60万人の兵を率いてロシアに攻め入ったが、冬将軍で悉く打ちのめされ、フランス軍は大敗北を喫した。皮肉にもこの敗北がその後のナポレオン神話崩壊の序曲となった。
在原次郎
コモディティ・ジャーナリスト。エネルギー資源や鉱物資源、食糧資源といった切り口から国際政治や世界経済の動向にアプローチするほか、コモディティのマーケットにかかわる歴史、人物などにスポットを当てたリサーチを行なっている。『週刊エコノミスト』などに寄稿。
関連記事
- 2025/05/01 原油価格の動向(4/30)
- 2025/05/01 米ウクライナ、資源協定を締結 復興基金を共同設立、米財務省が発表
- 2025/04/27 最近の一般炭と原料炭の価格推移(4/25)
- 2025/04/25 米国、インドと鉱物探査や資源貿易で協力へ バンス氏訪印、貿易協定第1号になるか
- 2025/04/24 原油価格の動向(4/23)
- 2025/04/22 ダイセル インターナルカーボンプライシング(ICP)制度導⼊
- 2025/04/21 米、迅速審査に鉱山事業10件を指定 国内生産拡大へ、中国依存脱却に急ピッチ
- 2025/04/20 最近の一般炭と原料炭の価格推移(4/18)
- 2025/04/19 豪州最大の太陽熱塩プロジェクト 全ての環境認可を満たしゴーサイン BCI Minerals社
- 2025/04/18 エヌ・ピー・シー(6255) 25/8H1決算メモ ペロブスカイトPV装置大型受注でポジティブ