【コモディティと人物余話】 鉱物資源大国だった日本-田中清六と佐渡金銀山開発

金鉱開発を重視した徳川家康は佐渡(現在の新潟県)を天領とし、奉行所を設置した。江戸時代初期には、佐渡金銀山開発で画期的な政策が採られた。それまでの採掘方法を見直し、誰でも、どこでも、自由に試掘することができるようになった。その発案者が田中清六だった。(写真はYahoo画像から転載)
家康から鉱山運営を任された田中が採用した画期的な手法とはどんなものだったのだろうか。佐渡では請負人が1年間にわたり鉱区を独占してしたが、田中はこれをあらため、自由に試掘させる方法に転換した。
鉱脈を発見した場合、山師たちにそれまでにかかった費用相当分の鉱石を採らせた。その後、10日間に日にちを区切り、銀運上額を競わせ、入札値の最高者に銀山掘りを任せた。これは、どれだけ多くの鉱石を採ろうが、入札分の運上額さえ納めればよかったことを意味した。そのため、諸国から3万5,000人ほどの山師らが佐渡に押し寄せ、空前のゴールドラッシュとなった。
ところが、うまい話には思わぬ落とし穴がある。鉱区を落札した場合、人足らを雇い、給金を支払う資力があるか。また、採取した鉱石を精錬する施設を保有しているかなど、もともと資金力がなければ、他の山師たちと競い合うことは不可能に近かった。そもそも鉱脈を10日間で探し当てる眼力が必要だった。結果的として、大金をものにできた人はほんの一握りであったという。
「江戸時代、佐渡金山は金の含有量も選鉱技術も世界のトップレベルだったことが最近の調査で判明した」(2009年9月1日付の『朝日新聞』夕刊)。資源小国である日本はかつて鉱物資源大国であった。
在原次郎
コモディティ・ジャーナリスト。エネルギー資源や鉱物資源、食糧資源といった切り口から国際政治や世界経済の動向にアプローチするほか、コモディティのマーケットにかかわる歴史、人物などにスポットを当てたリサーチを行なっている。『週刊エコノミスト』などに寄稿。
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