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脱炭素の部屋 #6 カーボンプライシングとは

2021.04.13 10:03

 昨今よくメディアでも目にするようになった「カーボンプライシング」というコトバについては、気候変動枠組み条約が出来た1992年前後あたりから何度か報道されかけたことがあったように思いますが、1997年に合意された京都議定書のときも、あるいは2015年のパリ協定合意のときも必ずしも詳しく伝えられる機会は多くなかったように思います。

 

 専門家の間ではそれなりの情報共有が図られた場面もあったようですが、一般的な報道でカーボンプライシングというコトバを見聞きするようになったのはごく最近のことではないでしょうか。メディアとしては、イマサラ感が強いのか、基本的な情報を割愛してニュースとなる部分のみを伝えるため、受け手側としては消化不良感を感じることも少なくないのではないかと思います。

 

 制度的には、良く伝えられるように二酸化炭素排出に対して課税するカーボンタックスと、排出量や排出権を市場で商取引するカーボントレーディングの2種類がよく取り上げられます。プライシングですから、追加的にはたとえばオークションめいた仕組みや先物取引なども設計しうるのだろうと思いますが、学術研究段階のものはいざ知らず、まだビジネスベースではそこまでの議論を耳にしません。

 

 いずれの場合も、社会的負荷である二酸化炭素(または温室効果ガス)の排出について、それまで外部経済とされてきたものを経済の仕組みに取り込むための工夫です。先進的な取り組みをしているのが欧州で、排出権取引市場(EU-ETS)では熱入力2万kW超の燃焼設備および域内の全航空便について、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量が取引されています。

 

 この後を追いかけて制度インフラの構築を急いでいるのが中国です。今年から中国全土を対象とした取引市場が稼働し、とりあえずは発電セクターを対象として温室効果ガスの取引が始まろうとしています。

 

 これに比べるとアメリカの動きはやや緩慢で、インフラ投資を通じて気候変動問題への積極的な取り組みを見せるバイデン政権でも、カーボンプライシングへの取り組みを加速させている状況にはない模様です。他方でビジネス界や金融関係者にはカーボンプライシングに期待する声もあるようなので、今後の展開が注目されるところだと思います。

 

 日本でも、カーボンプライシングを進めるべきであるという意見が出ています。この動機の一つには、欧州がカーボンプライシングを導入していない国からの輸入品について、競争上の不公平を是正する意味で、一般には国境炭素税とも呼ばれる関税を掛けようとしていることが挙げられます。つまり、今のままではCO2のコストを負担している欧州企業とそうでない日本企業の間には明らかなハンディが生じるので、その分を関税で調整しましょうということです。

 

 欧州に続く形で取引市場を整備しつつある中国では、たとえば植林をして確保したCO2排出権を市場でおカネに変え、それをまた別の排出削減事業に投資する、といったビジネスも想定されているそうです。ここにも新たな成長機会の萌芽を見ることができます。

 

 日本の場合、それが炭素税になるのか、あるいは取引市場になるのかの議論すらまだ煮詰まっていない状況ですので、リードタイムは他の地域に比べて長くなるかもしれません。しかしながら世界に伍してパリ協定の実現に取り組もうとするならば、カーボンプライシングの制度構築は間違いなく避けて通れない課題です。来週の気候サミットを契機に国内でも議論が高まることを期待したいと思います。

 

 

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西田 純(環境戦略コンサルタント)

 国連工業開発機関(UNIDO)に16年勤務の後、2008年にコンサルタントとして独立。サーキュラーエコノミーをテーマに企業の事例を研究している。サーキュラーエコノミー・広域マルチバリュー循環研究会会員、サーキュラーエコノミージャパン会員

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