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トルコ拡張路線放棄の予兆か-東地中海ガス田問題、リビア介入で関係改善の動き

 東地中海ガス田問題、リビア介入などでアラブ諸国と対立を続けたトルコが関係改善に向けた動きを見せている。トルコはここ数年、越境攻撃や他国領土の占領並びに様々な紛争に介入するなど、覇権主義的な動きが目立っていたため、拡張路線を放棄する予兆かを検討する必要がある。

 

 リビア問題について、東地中海ガス田問題でトルコと激しく対立してきたエジプトは関係改善を目指し、交渉を続けている。9月7~8日には第2回の交渉に入っており引き続き交渉を継続していくことで合意したということだ。エジプトは、アラブ連盟の会合でトルコを覇権主義の止めるよう呼びかけるなど、アラブの大国として反トルコの急先鋒であった。最近はトルコの関係改善の呼びかけに応じた。エジプトは、トルコとの一番の懸案事項である隣国リビア情勢が休戦並びに新暫定政権樹立により一旦小康状態になったことで、休戦の機運が生じたということであろうか。

 

 トルコのカタール問題介入などで対立してきたアラブ首長国連邦(UAE)のMBZこと、ムハンマド・ビン・ザイドとトルコは先月31日、電話会談を行い、両国関係の強化、また地域の諸問題について意見交換したと伝えられた。また、UAEの友邦かつ「カショギ氏事件」やカタール問題などでトルコと激しく対立してきたサウジとも関係改善を模索する。5月、エルドアン大統領は、サウジのサルマン国王と電話会談し、諸問題について意見交換を行ったと伝えられた。サウジは昨年、トルコ製品に対し非公式の禁輸措置をとり、いくつかの製品については正式な輸入禁止を発表していた。先月時点で、トルコ―サウジの貿易は歴史的な落ち込みを見せているという。

 

 また、ムスリム国家の盟主を気取るエルドアン大統領がパレスチナに肩入れしたことで対立関係に陥ったイスラエルとも和解の動きが見え始めた。イスラエルは、パレスチナ問題のみならず、東地中海ガス田問題でもギリシャなどと歩調を合わせ、反トルコ側を軍事的に支援もしている。しかし、トルコ政権の与党広報官は7月14日、両国首脳同士の電話会談で関係改善に向け動くことで合意したと伝えた。

 

 一方で、周辺諸国との緊張を招いた東地中海ガス田問題について、トルコはガス田開発をやめようとしないため、この問題で最も対立するギリシャとは相変わらず緊張状態が続いている。トルコのアカル国防相は7月、ギリシャにエーゲ海の非武装化を呼びかけた。エーゲ海の緊張はそもそも、ガス田開発と並行してギリシャに対する領空侵犯などの軍事的挑発により引き起こされたものだ。単独でトルコと対抗するのが難しいギリシャは、利害を共有する各国と事実上の軍事同盟を結び、トルコに圧力をかけることになった。ギリシャが緊張を招いたとするトルコの主張を真っ向から否定し、関係改善の糸口は見えない。ギリシャとの対話が進まない現状を鑑みると、トルコが諸国との緊張を招いている問題を本当に解決する気があるのか、疑問を抱かざるを得ない。

 

 トルコとアラブ諸国との交渉を巡り報じられた情報を子細に見ると、紛争解決に向けた具体的な取り組みについては何一つ合意はない。ロイターの分析記事は、トルコとアラブ諸国と対立の「代償」が、融和の動きにつながったとしている。つまり、トルコとこれらアラブ諸国との和解の動きは経済的休戦というわけである。トルコは、覇権主義自体を放棄する気はさらさらないと思われる。

 

 

Roni Namo

 東京在住の民族問題ライター。大学在学中にクルド問題に出会って以来、クルド人を中心に少数民族の政治運動の取材、分析を続ける。クルド人よりクルド語(クルマンジ)の手ほどきを受ける。日本の小説のクルド語への翻訳を完了(未出版)。現在はアラビア語学習に注力中。ペルシャ語、トルコ語についても学習経験あり。多言語ジャーナリストを目指し修行中。

 

 

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