サイクラーズ(株)設立一周年①〜循環型社会をリードする企業に
サイクラーズ株式会社(東京都大田区)は、去る9月1日をもって設立から一周年を迎えた。創業約120年の歴史を持つ金属スクラップおよび産業廃棄物処理などを行う東港金属を中核に、2020年9月1日よりホールディングス体制へ移行、持株会社サイクラーズを設立したのだ。業界大手であり、また次々と新機軸を打ち出すサイクラーズ代表取締役、文字通りトップランナーでもある福田 隆氏に、この一年の振り返りや今後の戦略・抱負などを伺った。
サイクラーズ、グループ会社概要
まず、現在の同社の概要を整理しておく。
東港金属株式会社
・金属スクラップ全般に関する業務(国内/輸出入)
・プラスチックの各種リサイクル
・産業廃棄物の収集、運搬及び中間処理、再生並びにリサイクル事業
トライマテリアル株式会社
・産業廃棄物及び一般廃棄物の収集運搬業
・一般貨物自動車運送事業
トライメタルズ株式会社
・鉄鋼、ステンレス、プラスチック、アルミニュウム、銅等非鉄金属製品の加工処理および販売並びに輸出入
・製鋼原料の販売及び輸出
・国際的な資源循環の為の最適ネットワークの構築
東北トライメタルズ株式会社
・金属スクラップ全般に関する業務(国内)
トライシクル株式会社
・インターネットサービスの開発と販売
・インターネットサイトの運営
・ソフト開発と販売
・中古品の販売、加工
・動画配信、メールマガジンの配信
・リサイクル製品の販売
循環型社会実現の様々なリソースを提供する企業として設立
まず、昨年サイクラーズを設立した際の動機だが、福田社長によれば、東港金属は老舗であり、それが信頼につながりはするものの、しかし社名にもある金属のイメージが強く、今後プラスチックの処理に力を入れたり、サーキュラーエコノミーや循環型社会を推進するためのITやリユースなどの事業を行う上でもイメージが付きづらいなど、少々デメリットを感じる部分があった。そこから脱却しようと思ったのがまずひとつ。
それと、ある程度資本政策を整えることが必要だと感じていた。これは企業理念としても挙げているが、複数の会社をグループ化することで、グループ全体の状況さらには環境ビジネス全体を俯瞰的に見る経営を実践することを目的とする。
例えば、セブン&アイHDはもともとイトーヨーカ堂とセブンイレブンが提携したものだが、現在ではロフトや赤ちゃん本舗などをグループ化している。しかし、イトーヨーカ堂のままで他の企業を傘下に収めても、スーパーマーケットのイメージは拭えず、消費の多彩なスタイルを提供・提案していくリーディングカンパニーには成り得なかった。循環型社会をリードしていく企業であることを示すためにも、イメージに沿った「サイクラーズ」の名を冠した。
エコドラフト、リサコとも、ブレーク間近‥
サイクラーズは、冒頭に示した通り数社のグループ会社を抱えているが、なかでも廃棄物処理やリサイクル分野における、先進的な取り組みを行っているのが、2018年創業の「トライシクル」である。同社の事業内容は、同じく前記しているが、社会的にも進むDXの流れにシンクロしたデジタルプラットフォームの開発や、サーキュラーエコノミーでは大きな位置を占めてくるリユースといった特色ある、他社に先駆けたビジネスだ。
まず紹介したいのが、産廃・建廃の委託契約を電子化するサービス「エコドラフト with クラウドサイン」だ。これは従来、紙で行っていた委託契約を電子化でペーパーレスにすることにより、契約書作成の手間や印紙代・切手代などのコスト削減に寄与するもの。合意締結部分には弁護士ドットコムの運営する「クラウドサイン」を利用、安全安心に締結できる。また、クラウドサインとはAPI連携を行っているため、エコドラフトで作成した電子契約書をシームレスに合意締結に用いることができる。
「エコドラフトの外販を始めたのは、2020年3月からですが、社会、業界含めデジタル化の方向に進んでいるせいもあり、ここへきて非常に引き合いが増えていますね。今年から地方自治法が改正されたこともあり、自治体が電子契約を行えるようになりました。自治体が使えば、民間も使うようになるのは火を見るより明らかです」(福田社長)
また不動産業界でも宅建業法が変わるため、例えば重要事項説明書なども電子のやり取りで済むようになる。そうして不動産が変われば建設も変わる、建設廃棄物の扱い書面も電子化されてくる。そうして全てが紐付いてくるので、ここはもうブレイク寸前といっていい。
そうした状況にあるため、エコドラフトの宣伝・営業活動にも注力しており、毎月週1回ほどのペースで、無料のオンラインセミナーも展開中だ。
また、トライシクルが先駆けてスタートさせたのが、法人向け(BtoB)のフリマプラットフォーム「リサコ」である。同サービスは2019年から始められたものだが、徐々に大企業などからの引き合いも増えてきているという。リーユースというマーケットは、まだまだ未成熟だったため、少々伸び悩んできたが、同社が信頼性の担保を重視して開発したツールであるだけに、企業としても責任を持たねばならない廃棄物やリサイクルに対するソリューションとして認知が進んできた。
「こうした信頼感や、実際の事業スキームの中では、廃棄物処理で長年の実績がある、東港金属がバックにあることが非常に大きいですね。取扱量も増えてきており、千葉県富津市にある「ReSACO リサイクルセンター」では、保管倉庫をさらに2棟増設する予定です」(同氏)
エコドラフト、リサコともに「いつブレイクしてもおかしくない」と福田社長は語り、このふたつの事業に関しては、今後「一層気合を入れて、くどく、しつこく進めていく」と、その熱意のほどを、口調は静かながらも同氏は語ってくれた。(続く)
(IRuniverse kaneshige)
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