次世代の課題に両輪から取り組む 大成株式会社
今回の企業紹介は大成株式会社である。
2021年12月6日から8日の間まで、東京都江東区有明にある東京ビッグサイトにてRX Japan株式会社主催の「第6回 ジャパンビルド-建築の先端技術展-」が開催され、展示されていた2つのソリューションを紹介していく。
人力を省力化する警備体制 アバター警備ロボット「ugo」
警備ロボットという単語を見て、この記事の読者はどういった物を想像するだろうか。
例えば非常にマッシブなロボ・コップの様なものであったり、あるいはASIMOの様なスマートな人の形を取っていたり。
各社がロボットに対し様々なアプローチで取り組んでいる中で大成株式会社が手掛けるのは、台座によるホイール移動を行う警備ロボット「ugo」である。
このugoというモデルは元々汎用的な作業用途を持つ手袋型のマニピュレータを装備したロボットであり、上下に本体位置を昇降させる脊柱と台座を備えた構造だ。
連続稼働時間は決して長いものではないが、施設を一周し見回るだけのバッテリーのキャパシティを備えている。
また本体にはカメラとマイクが内蔵されており、外部から状況を確認する事が可能となっている。
本体重量は50kg程とこの手のロボットの中では軽量であり、衝突防止センサーや緊急停止スイッチを備えているため衝突事故の回避にも余念が無い。
そして何よりも導入企業が気になるのはその価格であるが、参考までに警備員一人を配置する為に掛かる総合的な費用は月々40万円以上になるともいわれており、導入コストが月々40万円前後となる警備ロボットもある中、ugoの必要経費は月額レンタル料金のみで21万円前後とこちらも非常にローコストである。現状遠隔操作出来るロボットの仕事の多様さはまだまだ人間に及ばない為、人間ほどのポテンシャルを求めないが警備の体制を整えたい事業者にはオススメの製品となっている。
付随する機能として高度な自動巡回機能を設定する事が可能であり、実際にエレベーターのボタンをナックルガード部のゴム製突起で押す動きまでも自動化出来る仕様である。
実際にユーザーとなる企業の建物を見てからの設定となるが、巡回ルートの設定により自動で夜間警備を受け持つ事が出来る。
そして警備業を行う事業者として欠かせない「日報」の作成も、巡回時に撮影した画像をアップロードする事で業務品質の均一化に貢献する事ができ、コントロールする警備員側の負担を極力減らす事に成功している。
専用のソフトウェアはロボットのコントロールも容易に行う事が出来る様になっており、その場での360度旋回などエレベーター操作時に求められる機能もリアルタイムで実行する事が出来る。
ここまでいたれりつくせりな機能を備えたロボットであるが、その任務に欠かせないのが付属する「帽子」である。プラスチック素材と磁石が埋め込まれた簡素なものだが、これがある事で「警備をしているロボットである」という役割の判別が行われやすく、結果としてロボットが存在する場の異物感を減らす事が出来ると担当者は語る。
目の表示されているディスプレイも「警備中」など様々な文字をソフトで編集し表示させる事が可能となっている為、作業現場に応じて必要な装備と情報を提示する事でロボットの存在感と親しみやすさを引き上げる事が出来るのだろう。
サーキュラー・エコノミーを実現する 早生桐
早生桐(そうせいぎり)という植物をご存知だろうか。
通常の桐は20年程度で成木となり、主に桐箪笥などの頑丈な高級家具の材料として使われてきたが、早生桐は4~5年で成木となり、二酸化炭素の吸収力が非常に高いことから環境問題へも貢献することができる。
大成株式会社のソリューションはこの早生桐を使い、紙を原料とした補強材と合わせて家具を作るのである。
実際に軽量のボックスタイプの家具であったり、あるいは机がセットのブース型の家具やオフィスに使用される会議室スペースの創造等を手掛けている。
当然ながら素材が木材と紙である為、非常に軽量かつ独特の加工法を使っている為か紙の部分だけでも非常に頑丈な設計となっている。
その軽量さからレイアウトの自由度が非常に高く、ワークスペースの設定をほぼパズル感覚で行う事が出来てしまう。
素材が木材と紙である為リサイクルも容易であり、木質バイオマス発電の為のペレットや早生桐育成の為の肥料として活用する事が出来る。
この肥料で育った早生桐は二酸化炭素を吸収しながら短期間で成木となり、それがまた家具となって使われるという文字通りの「サーキュラー・エコノミー」を実現させているのである。
現にオフィスで使われている多くの家具はこの早生桐を用いたものであると担当者は語る。
筆者も紙で作られた蛇腹状の芯材に板を置いた物に座る体験をしたが、この即席椅子であっても男性一人の体重をまるまる支える事が可能であった。
そして紙で出来たこの芯材は折りたたんで格納する事が容易である事から、避難所に指定される建物等で緊急用の椅子を用意する為のパーツとしての提供も可能であるという事だ。
どの面を切り取っても現状隙が無い大成株式会社はこれ以外にも数多くの事業を手掛けている。
アイディアとしての奇抜さや意外さもそうであるが、それを実社会にどの様に還元していくのかという点で消費者目線に沿ったやり方を提示出来るのはひとえに高い企業センスの成せる技だと言える。
これからもこの企業のソリューションから目を離せないだろう。
(IRUNIVERSE ICHIMURA)
関連記事
- 2024/10/25 紫金鉱業、リチウム資源戦略を展開し、世界リチウム業界のリーダー地位を目指す
- 2024/10/25 中国初の全固体リチウム電池量産ラインが正式に稼働開始
- 2024/10/24 独ベンツ、南ドイツにバッテリーリサイクル工場 ブラックマスに特化
- 2024/10/23 出光興産と三菱ガス化学、e-メタノールの需要創出へ協業
- 2024/10/23 インド、米国に重要鉱物パートナーシップ協定を提案、電動車産業の発展を支援
- 2024/10/22 リチウム市況⑪下押し圧力再び――上旬比4,000元安の7万1,500元
- 2024/10/22 奇瑞、新バッテリー「鯤鵬」を発表、2027年に全固体電池の量産目指す
- 2024/10/22 サイクラーズ 東港金属 千葉工場でASR 処理ラインを導入及びASR 受入れ開始
- 2024/10/21 中国の海運価格、需要減少と過剰供給で下落が続く
- 2024/10/20 週刊バッテリートピックス 「環境省ヤード討論会」「CATLは3Qも減収増益」など