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来年は経済急減速 高金利がラテンアメリカ資源ビジネスを圧迫

 

 

 多くの資源が眠るラテンアメリカの経済は、今後、大幅に減速し、来年(2023年)の成長率は今年(2022年)の半分以下に落ち込む見通しとなった。インフレ対策で日本を除く世界の多くの中央銀行が政策金利を引き上げている影響が直撃する。新型コロナウイルス、ロシアのウクライナ侵攻に続く「3度目の経済ショック」となりそうだ。物価高騰や貧富の差の拡大でラテンアメリカ各国市民の不満は既にピークに達しているが、今後の景気減速は、さらなる社会不安を誘発する恐れがある。

 

 国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)が10月19日に発表した経済見通しによると、カリブ海地域を含むラテンアメリカ全体の2022年の経済成長率は3.2%となる見込みだ。4月の予測では1.8%、8月の予測では2.7%の成長を見込んでいたが、予測をさらに上回ることになりそうだ。

 

 鉱物などコモディティー価格の高騰のほか、新型コロナによる経済停滞からの反発が経済を押し上げている。欧米からの観光客が再び訪れるようになり、米国などへの出稼ぎ者からの送金が増加した。

 

 しかしECLACの予測では、2023年は大幅に減速し、成長率は1.4%に留まる。急ブレーキとなる最大の要因は、インフレ対策を名目にした世界各国の高金利政策だ。中央銀行による急速な利上げが企業の動きを鈍らせ、ラテンアメリカへの資金流入をせき止めてしまうとみられている。

 

 

表

 

 

 特に地下資源や農産物などの輸出に頼る南米経済への影響は大きい。ECLACの南米地域に絞った経済見通しは、2022年の成長率が3.4%であるのに対し、2023年の成長率1.2%で、カリブ海地域を含めたラテンアメリカ全体の成長率よりも0.2ポイント低い数字となっている。

 

 金利が上昇すれば投資マネーは「安全性」に「逃避」することとなり、「ハイリスク・ハイリターン」の南米などの新興市場は大きなダメージを受けることとなる。

 

 さらにラテンアメリカ経済に大きな影響を与えるのは、中国経済のもたつきだ。中国の国家統計局は突如、7~9月の国内総生産(GDP)の公表を延期したが、1~9月のGDPは3%に届かないとみられており、通年の政府目標の5.5%前後を大きく下回る模様だ。

 

 ECLACの経済見通しも中国の経済状況を色濃く反映し、中国との関係が深い国は大きな影響を受ける。

 

 輸出量の40%が中国であるチリは2022年の成長率が2.2%の予測であるのに対し、2023年はマイナス0.9%に落ち込む予測だ。輸出量の30%以上が中国であるブラジルは2022年の予測が2.6%であるのに対し、2023年は1.0%の予測。ウルグアイは5.1%が3.0%に、ペルーは2.7%が2.2%になる予測だ。

 

 全体の傾向とは別に、今回のECLACの経済見通しで異彩を放っているのはベネズエラとガイアナだ。ベネズエラは2022年が12.0%、ガイアナは52.0%という高成長が予測されており、2023年でもそれぞれ5.0%、30.0%の経済成長を維持する見込みだ。その背景にあるのは共に原油だ。

 

 世界的な石油資源国であるベネズエラの経済は、米国による経済制裁などが影響し崩壊の危機に直面した。食料やエネルギー不足で国民生活は困窮しているうえに、マデゥロ政権による反対派弾圧が強まり、多くのベネズエラ市民が難民として国を捨てた。その数は600万人にのぼっている。

 

 2020年にベネズエラ経済は「底」を迎えたと分析される中、ロシアのウクライナ侵攻がベネズエラ経済の流れを変えた。中国やキューバが、ベネズエラ原油を積極的に買い付けた。イランとは重油の交換を進めている。経済制裁の中でもベネズエラは原油輸出を増加させ、経済成長につながった。欧州の投資銀行の担当者がベネズエラの経済見通しについて語る際、「これは誤植ではない」と断りを入れるぐらい、世界的に驚きの数字だ。

 

 米国のバイデン政権は原油の安定供給のため、ベネズエラへの経済制裁を緩める方向に舵を切っている。ロシアに替わる原油の生産拠点としてベネズエラが国際市場に戻るのは時間の問題で、ベネズエラ経済はラテンアメリカでは特殊な道をたどることとなりそうだ。

 

 一方、ベネズエラの東に隣接するガイアナは「世界で最も急成長している国」として注目が集まる。人口約79万人のガイアナは南米で唯一の英語国。米州の最貧国の1つとされてきたが、2015年に米石油大手のエクソンモービルが、沖合の海底に大油田を発見し国情が一変した。2019年から採掘が始まり、ロシアによるウクライナ侵攻後は欧州への輸出が急増している。今後、生産拡張の計画もある。

 

 ガイアナ西部はベネズエラと領土問題で対立しており、大油田が新たな地域紛争を生み出す可能性をはらんでいる。

 

 

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Taro Yanaka

 街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

 専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

 趣味は世界を車で走ること。

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