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デジタルツインの正しい在り方 京セラ株式会社

 11月8日から11月13日までの6日間、東京都江東区の東京ビッグサイトにて一般社団法人 日本工作機械工業会、株式会社 東京ビッグサイト主催による「JIMTOF 2022」が開催された。

 今回の記事では京セラ株式会社の製品について紹介する。

 

 

話題となるデジタルな展示会の在り方

 

 ここ最近になって話題となっているキーワードの一つが「メタバース」である。

これは仮想空間上に様々なコンテンツを配置し、実社会に紐づく様な経済的活動を可能とする空間の事である。

もちろん現在そこまで高度なものはまだ開発されてはいないものの、多くの企業が仮想空間を活かしたコンテンツについて開発を進めている。

しかしこのコンテンツの開発の流れは、ある種の停滞を引き起こしている状態だ。

 

 インターネットブラウザやアプリケーションを通して仮想空間にアクセスする方法やサービスは、現在多くの日本企業も参画を掛けている。

だがそのコンテンツの質においては残念なことに、これまた多くの企業が画一化されている状況である。

特にここ最近メタバースという名称を標榜し開発されたコンテンツの大半は、非現実的な要素の強い空間にクオリティの低いアバターデータを配置し、特に手足が動かせる様な擬似的な感覚も得られない状況で看板に表示された製品説明をクリックさせ、ECサイトや企業ページに誘導させるというものである。

 

 この展示会形式は、仮想空間上というともすれば現実に親しいリアリティを体験する事もできる空間を「一手段」として落とし込んでしまっている所に大きなマイナス点が存在する。

いわば、既存の通販サイトやECサイトの様な体験の一部として、仮想空間という擬似的なウェブ会議・ミーティングシステムを組み込んだだけに過ぎない。

企業の製品に対する魅力を十分に分かってもらう為には、仮想空間という領域を最大限に活かした上で「買いたいと思わせる」展示会を開催する必要がある。

 

 仮想空間上における企業の製品展示会というソリューションにおける現状最大の成功例を、京セラ株式会社は他の企業に先駆けて実現させようとしている。

 

 

顧客が見たいものを具体化する

 

 京セラ株式会社は京都府京都市に本社を置く企業である。

大手電子部品・電気機器メーカーとしてファインセラミック製品や半導体部品を始め、今回の展示会の様にフライス盤という切削加工機の様な機械に対応した切削工具等の開発や販売も手掛けている。

そんな同社が今回打ち出した最大の取り組みが、JIMTOF2022の展示会場をほぼそのまま仮想空間上に再現する「メタバース体験コーナーとバーチャル展示ブース」の設営だ。

 

 

 これはJIMTOF2022会場内、あるいはVR対応SNSである「VRChat」上から参加する事が可能なコンテンツとなっている。

会場内では京セラ株式会社の開発する工具をダイジェスト映像の様な形で見る事ができる他、VRChat上では仮想空間上に構築された大規模な展示スペースにて間近で製品が動作するデモンストレーションを見たりする事が出来る。

その最大の特徴は、先述したJIMTOF2022の展示会場を「ほぼそのまま再現する」というところにある。

 

 

 リアル会場でコンテンツを体験する際は周囲を見渡す事が可能な状態であり、その風景がJIMTOF2022の会場にやや似ている事が分かる状態からプレゼンテーションに移行する。

だがVRChat上の会場ではJIMTOF2022の展示会場に展示されている各種製品からブースの構造に至るまで、寸分違わぬ状態で構築されているのである。

展示されている製品の数や種類に差はあるものの、実際に同社の製品がフライス盤で動作する様子を見る事が出来る上に、間近でその様子が眺められるという仮想空間ならではの醍醐味もある。

この「リアル空間とバーチャル空間に大きな差が無く、そこまで派手ではない落ち着いた展示会場の構築」というのは既存のメタバースと名の付く様々な事業とはその方向性を大きく異にする物であり、かつ両方の空間に展開されるコンテンツの質がどちらも高いものであるからこそ実現出来た物と言える。

 

 もう一つ大きな特徴として、JIMTOF2022の会期中には17時から23時まで、案内スタッフが常駐し製品の説明等を行ってくれるサービスが行われている。

更に20時と22時という時間限定ではあるものの、JIMTOF2022会場の内容以上に詳細かつビジュアル性に優れたプレゼンテーションも行われる。

その上このコンテンツはMeta社の販売するHMD(ヘッドマウントディスプレイ)「Meta Quest2」単体でもVRChat上から参加する事が出来るのだ。

高性能なパソコンは持っていないという人であったとしても、Meta Quest2さえあれば多くのユーザーと同じ目線でこの体験を享受出来るのである。

 

 

 担当者曰く「京セラという会社がこういった方面の事も率先して行い、企業として真摯に向き合うという姿勢とこれから来る若者を始めとしたユーザーに親しみを覚えてもらいたいというコンセプトからこの展示を企画した」という事である。

なお会期終了後も、この仮想空間上の会場は内装を変えたりする等して継続的に展示・コマーシャルの為の空間として利用していきたいとも語っていた。

 

 これまで多くの企業が取り組みかけていたメタバースとデジタルツインという2つの要素を、非常に高いクオリティで実現させていく京セラ株式会社。同社の今後の取り組みは、メタバースという名称や空間における企業の在り方に大きな一石を投じるに十分な物だと言えるだろう。 

 

 

IRuniverse Ryuji Ichimura

 

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