ゆく年くる年②ニッケル&SUS鋼材&スクラップ 春の椿事を経て鋼材価格は大幅上昇 スクラップは・・
今年のニッケル市場を振り返ったときに一番に思い起されるのは3月の大暴騰、まぼろしの100,000ドル、そしてその後のLMEニッケル相場の混乱はいまだに尾を引いている。100,000ドルというありえない価格ではあったが、一旦は取引として成されたものを「無かったことに」した強引なまとめ方はLME市場への信頼を失わせるに十分な出来事であった。そのためにいまやLMEに変わるニッケル取引の新しいプラットフォームができつつある。
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LMEニッケル相場($/ton)と304系スクラップ相場(\/kg)の推移 1年
304系冷延薄板価格の推移(\/kg コイルセンター売値ベース)1年
アジア304系冷延コイル価格の推移(304/2B USD/ton)1年
このLMEニッケル相場の大暴騰でステンレススクラップも4月にはキロ当たり300円を超え、ステンレス鋼材価格も値上がりが続き、2007年以来のキロ当たり700円をつける(10月)。スクラップも鋼材価格の上げに追随してさらに上伸が期待されたが、5月以降は急落。一時は150円近くまで下落したが、鋼材のほうはタイト感が強く、実勢として8月、9月までは値上がりが続いた。鋼材については9月初頭の韓国浦項を襲った台風でポスコの熱延工場が深刻な被害を受け、一時はかなりな供給不安が懸念されたが、結果的に年末のこの時期まで混乱は生じておらず、むしろ市況軟化。アジアは勿論、日本国内においてもステンレスミルはひところ、コイルセンターとの契約を最初からカットしていたほど旺盛な受注を抱えていたが、夏場から完全に緩みはじめ、いまでは受注難状態。ステンレス、特殊鋼ミルはいきおい減産モードとなり最大手の日鉄ステンレスも大減産。来年1-3月は3万トン以下の低水準生産が続く見通しとなっている。
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こうしたステンレス、特殊鋼ミルの減産が実態で、それは半導体、部品不足による自動車の長期的な減産が、とりわけ特殊鋼メーカーでは強く現れているのだが、自動車向け以外でも需要が低迷しているのは鋼材価格の高さだけではない。来年の世界経済を俯瞰したときにあまりにも不確実要因が多いために各社が生産計画を落としていることも影響している。期待の半導体製造装置もしかり。シリコンバレーならぬシリコンアイランドとなる九州地区でも今のところは半導体製造装置向けの受注は停滞している様子。
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そして、スクラップ市場のほうだが、今年の日本市場での最大のトピックは、3月~4月の高騰を除いていえば、中国系ディーラーの本格的な台頭であろう。
2022年末の国内ステンレススクラップ市場では依然として中国系ディーラーの買いが市場を支えている。304系でキロ当たり210~215円のレンジで変わらず。国内ミルもある程度ついてきているが、購入モチベーションは決して高くないというのも変わらず。韓国向けは浦項ポスコの買いが待たれるところだが、来年2月以降、とみる。今のところ買い気があるのは中国系だけであり、逆にいうと彼らの存在がなければ需給は緩みに緩んでマーケットは200円以下まで下落していたかもしれない。そういった意味でいえば中国系の買いが相場を「下支え」しているといって過言ではない。
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(IRUNIVERSE YT)
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