花王の使用済み紙おむつ炭素化リサイクル実証実験の進捗
花王株式会社(社長・長谷部佳宏)は、国立大学法人京都大学(総長:湊長博)と共に、2021年1月から、愛媛県西条市の協力のもと「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の確立に向けた実証実験を進めており、2023年までに炭素素材への変換技術の確立、2025年以降の社会実装をめざしていおり、現在の進捗状況を報告した。
使用済み紙おむつは、現在年間200万トン以上がごみとして主に焼却処分されており、燃えるごみの4~6%を占めると言われている。また、多くの水分を吸収しているため、焼却炉の燃焼効率を悪化させる原因になっているケースもある。今後、高齢化による大人用紙おむつの使用増加に伴いごみの量が増え、環境に与える影響がさらに大きくなると予想され、有効なリサイクル技術の確立が期待されている。
目的
以下3点を実現し、CO2排出量削減による環境負荷低減*1への貢献をめざしている。
1. 使用済み紙おむつの「炭素化装置」の開発
少ないエネルギーインプット(低温反応)で、効率的に炭素化
炭素化に伴い殺菌・消臭されるため、衛生面の問題が解決
炭素化に伴い体積が減り、回収頻度を減らすことが可能
2. 炭素化した使用済み紙おむつの炭素素材への変換
3. リサイクルシステムの社会実装
*1 使用済み紙おむつが燃やされる際にはCO2が発生するが、炭素化の場合は炭化物に炭素が固定化されるため、発生するCO2を削減することができ、環境負荷低減につながる
目標
2023年まで 炭素素材への変換技術の確立
2025年以降 リサイクルシステムの社会実装
・2022年2月 ニュースリリース
花王と京都大学の「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」実証実験の進捗について
https://www.kao.com/jp/corporate/news/sustainability/2022/20220224-001/
・2021年1月 ニュースリリース
花王と京都大学、「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の実証実験を愛媛県西条市で開始
https://www.kao.com/jp/corporate/news/sustainability/2021/20210114-001/
進捗と今後の展開
1. 使用済み紙おむつの「炭素化装置」の開発
2021年11月に西条市の保育施設に花王が開発した「炭素化装置」を設置し、12月から稼働。使用済み紙おむつの処理データを採取し、性能向上に向け検討している。
花王・京都大学において、使用済み紙おむつを想定したパルプの熱分解による炭素化技術の開発を推進。炭素収率を高め、細孔(微細な穴)を発達させる手法を確認。廃棄されたパルプから効率的に活性炭に転換できる可能性を見出した。これによって活用用途が広がり、例えば吸着剤としての利用が想定される。同内容は、2022年9月に開催された「化学工学会第53回秋季大会」で、京都大学が発表している。
「炭素化装置」により、使用済み紙おむつの体積を20分の1程度に減らすことができた。今後は、より省エネルギーでの稼働、処理時間の短縮をめざし、2号機の開発を進めていく。
2. 炭素化した使用済み紙おむつの炭素素材への変換
花王・京都大学において、「炭素化装置」から得られるようになった質の高い半炭化物*2をサンプルに、タイヤの充填剤や電子材料等の高度リサイクル素材、保水・土壌改質剤、植物育成や下水処理に活用できる活性炭といった炭素素材への変換をめざし、研究を進めている。
花王は、2020年4月より、化学メーカーである三洋化成工業株式会社、鳥取大学と共に、紙おむつに使用されるSAP(高分子吸収体)のリサイクルに向けた研究開発を行なっており、2022年9月の日本土壌肥料学会2022年度大会にて、「使用済み紙おむつの土壌改良資材としての適用可能性」について鳥取大学が発表した。
*2 熱分解により炭素成分が多い物質にすること
3. リサイクルシステムの社会実装
引き続き、「炭素化装置」の設置拠点、回収方法などインフラの検討を進めている。
(IR universe rr)
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