岡本工作機械製作所(6125) 23/3期決算メモ ファイナルポリシャー好調持続で増益続く
23/3期21.2%増収37.2営利増で収益全て過去最高更新、24/3期は中計前倒し達成予想
株価4935円(5/13) 時価総額198億円 発行済株4718千株
PER24/3期DO予(4.7X)PBR(0.94X)配当(22/3DO予)220円 配当利回り4.5%
要約
・23/3期21.2%増収37.2%営利増と半導体関連装置好調で上振れ着地、収益全て過去最高に
・四半期は23/3Q4で10.2%増収も営利、経常利益は5.9%減と一服、受注28.4%減に
・24/3期9.8%増収7.2%営利増予想と膨大な受注残で新中計25/3期目標は今期達成予想に
・25/3期もグリーンフィールド投資、パワーデバイス向け等も加わり収益拡大期待
23/3期21.2%増収37.2%営利増と半導体関連装置好調で上振れ着地、収益全て過去最高に
平面研削盤でシェア5割、またシリコン半導体ウエハ加工用装置も手掛けファイナルポリシャーでは世界7割シェアを誇る。 5/12に23/3期決算が開示され、売上高455.24億円(期初計画比25.24億円増額、21.2%増)、営業利益55.98億円(同7.98億円増額、37.2%増)、経常利益55.52億円(同7.52億円増額、32.3%増)、税引利益40.29億円(同8.29億円増額、39.3%増)、受注504.76億円(24.5%減)、受注残565.81億円(9.6%増)となった。22/3期Q2の120億円の大型受注の反動で受注は減少も、売上、総利益は2期連続最高額更新、営業利益、経常利益は07/3期を抜いて過去最高益更新、税引利益は19/3期を抜き過去最高、全体として収益全てで過去最高更新に。なお受注額も前期比24.5%減も過去2番目の額であり、BBレシオは1.10と高水準で受注残高が積み上がった状況にあり、受注残高は2期連続最高額更新となっている。
事業別では工作機械事業が売上高313.05億円(期初計画比13億円増額、20.0%増)、営利27.49億円(68.7%増)、受注325.89億円(4.6%減)、受注残186.97億円(7.4%増)となった。売上で19/3期を抜き過去最高を更新、受注では減少も22/3期に次ぐ過去2番目の数字、受注残高は2期連続最高額更新と、BBレシオが3期連続1を超え、受注残高が積み上がっている。受注の国内は、ものづくり補助金や半導体関連向け中心に大型平面研削盤、セラミック業界向けにロータリー研削盤が好調に推移し増加した。具体的には門形研削盤UPGシリーズの受注が大幅に伸長、また半導体向け脆弱材加工では立軸ロータリー研削盤、横型ロータリー研削盤などが好調で、ロータリー研削盤は受注が1.7倍規模に。売上では半導体業界、補助金などで工作機械業界向け等にも好調に推移した。一方で海外は米国向け鋳物などが減少し受注減となったが、売上では汎用平面研削盤が好調に推移し増収に。欧州はウクライナ問題などの影響で受注減も売上は半導体関連、EV関連で大型平面研削盤、小型成形研削盤などが堅調で増加に。また中国はEV関連向けの大型平面研削盤、小型成形研削盤の好調で受注、売上ともに拡大した。なお工作機械事業の内訳の開示は6月の決算説明会まで開示されないも、岡本工機の歯車が受注、売上ともに上伸しているとみられる。利益面では増収効果が大きく操業度効果から大幅増益も、収益性で歯車の伸長があり、過去最高売上も収益力では過去に及ばない水準に止まっている。
半導体関連事業は売上高142.19億円(期初計画比12億円増額、24.2%増)、営利40.18億円(16.3%増)、受注178.86億円(45.3%減)、受注残378.81億円(10.7%増)となっている。売上では07/3期154.42億円に次ぐ水準、営業利益は2期連続最高益更新となっている。受注は22/3Q2でグリーンフィールド向けを含め120億円の大型受注獲得があり、この反動が大きく、期初では通常時の120億円水準までの減少があり得るとしていたのに対しては59億円上乗せ(但しDO予想では100億円減の230億円には50億円程度未達)となった。300mmウエハ向けファイナルポリシャーが東アジア及び欧州の複数の取引先から受注を獲得、最近の半導体生産減産を受けて一部台湾向け等で受注手控えも生じた模様であるが、次世代パワー半導体向やEVを中心とする車載向け半導体向け用途でラップ盤、グラインダなどが拡大した。売上では国内、東アジア、欧州向けにウエハ生産用ファイナルポリシャーやグラインダの販売が好調に推移した。ちなみに生産額(製造原価ベース)は107.96億円(24.4%増)と売上では一部検収遅れで期ずれも発生していると見られる。利益面では高収益のファイナルポリシャー以外の売上寄与もあったと見られ、MIX悪化もあり、営業利益率は1.93ポイント低下し28.3%となったが、依然として高い利益率を誇っている。なおBBレシオは受注が大きく減少も23/3期で1.26と、3期連続で1を上回り、受注残高が379億円、売上で2.7年分も積み上がっている。
四半期は23/3Q4で10.2%増収も営利、経常利益は5.9%減と一服、受注28.4%減に
四半期推移では23/3Q4は売上高122.96億円(10.2%増)ながら、営業利益14.74億円(5.9%減)、経常利益14.97億円(5.9%減)と21/3Q3以来の同期比利益減と一服状態に。なお受注が96.46億円(28.3%減)となっているが、受注残高が増加し、依然として生産が追いつかない状況が続いている。なお受注の減少、期末四半期の影響も有り、BBレシオがQ4では0.78と1を割り込んでいる。
事業別では工作機械事業が売上高92.55億円(同期比12.6%増)、営利10.82億円(21.2%増)と四半期決算 を開示して初めて四半期で売上高90億円超、営業利益10億円超と過去最高額更新に。受注は78.19億円(同期比11.8%減)と工作機械工業会受注12.0%減並みの減少となった。
半導体関連事業は売上高30.41億円(3.6%増)、営利7.39億円(22.2%減)、受注18.27億円(60.2%減)と収益はMIX悪化、受注は大口受注がなかったことで大きく減少した。売上高で地域別売上推移は有価証券報告書提出時でないと開示されないが、受注残高は378.81億円(同期比10.7%増、Q3比3.1%減)とグリーンフィールド投資向けの受注残高が多く残っているとみられる。なお事業内容の詳細については6/12のアナリスト向け決算説明会実施時に開示される見通し。但しIR活動については必ずしも積極的でないため、数値的な情報は有価証券報告書の発行を待って明らかになる見通し。
24/3期9.8%増収7.2%営利増予想と膨大な受注残で新中計25/3期目標は今期達成予想に
24/3期会社予想は売上高500億円(9.8%増)、営利60億円(7.2%増)、経常利益59.5億円(7.2%増)、税引利益42億円(4.2%増)となり、昨年提示した中期経営計画の25/3期目標値の1年前倒し達成予想とした。
6/12の決算説明会予定日まで、部門別売上予想、受注予想などの開示がない。しかし豊富な受注残を背景に、収益の上乗せが期待される。まず工作機械事業の中の工作機械は工業会受注予想で2023年が前年比9.1%減の1兆6000億円としており、同社も業界並みの落ち込みが見込まれる。また工作機械向け鋳物事業も同様の落ち込みが懸念される。但し岡本工機がロボット向けを中心に歯車需要に対応、新工場では能力が30%アップする計画。ユーザーはファナックが最大手ということでファナックのロボット生産の拡大が続いており、歯車の受注、売上はともに増加が見込まれ、売上高100億円が視野に入ろう。このため、同社工作機械事業全体として受注高は前期を若干下回る程度は確保しよう。また受注残高が過去最大の187億円あり、EVバッテリーパック製造向けやEVモーター用精密金型向けに超精密大型平面研削盤などの納入が順調に進むとみられ工作機械事業の売上は緩やかな増収確保が見込まれる。
半導体関連装置事業受注については、従来、信越化学とSUMCOの日系2社の設備動向に先行する形で受注が増えていたが、今回は海外向けが5割以上を占めている。現在受注残高が379億円あるが、グリーンフィールド向けが24/3下期には本格的な納入がなされ、25/3期まで納入が続くとみられ、売上高の伸長が続こう。24/3期受注については、昨今の半導体生産、とりわけメモリの不振影響が300mmウエハ需要にも影響を及ぼすと見られ、その影響から海外での増産投資が若干足踏みする可能性がある。このため、24/3期受注は非ファイナルポリシャー受注がパワー半導体向け等で拡大するとみられるが、全体としては10%程度減少すると見られ、受注残高の減少が進もう。
利益面では会社計画に対し、半導体事業の比率向上、工作機械の収益性アップなどが見込まれ、24/3期も会社計画を上回る利益が見込まれる。
25/3期もグリーンフィールド投資、パワーデバイス向け等も加わり収益拡大期待
300mmグリーンフィールド投資については2023年~2025年にかけて毎年月産40万枚~50万枚の投資が実行されるとみられる。このため同社ファイナルポリシャーについても25/3期にかけて納入が進もう。加えてそれ以降については半導体の2D、3D化による大容量化が進むとみられ、デザインルールの微細化シュリンクによるウエハ需要の停滞という要素が薄れ、積層化によるウエハ使用枚数の拡大、加えてウエハ薄化ニーズの高まりで、よりファイナルポリシャーによる極限の平坦化が求められると見られる。さらにパワーデバイスなどの拡大が続く中で、SiC等の化合物半導体ウエハへの投資が活発化するが、こちらもハイパワー化でウエハの薄化が求められ、グラインダ、CMP需要など、難作材加工の製品群の拡大が期待される。このため同社半導体関連装置需要は25/3期も拡大が続こう。また半導体の3D化に伴い、従来から研究を進めているSi貫通電極ウエハの超平坦・金属汚染フリー・薄膜化加工のための研削技術も実用化(2024年7月までJSTが延長支援)が見込まれる。加えてウエハ加工以外で後工程での異種材料同時研削可能な装置開発も行っており、従来のウエハ製造向けに加え、半導体後工程での製造装置分野でも売上拡大が期待される。
工作機械事業では研削盤についてEV関連でリチウムイオン電池製造装置向けの長尺超精密平面加工向けやモーターコア製造用連装金型向けの超精密平面加工向けに大型超精密門形平面研削盤などがさらに拡大見通し。半導体製造装置・電子部品製造装置向けではセラミックス等の難作材加工向けに精密ロータリー研削盤の拡大も見込める。また汎用研削盤においては中国で研削盤のNC化要求が高まっており、現地での生産を含めNC平面研削盤の売上拡大も期待される。一方、伸び率で高い成長が期待出来るのが岡本工機の歯車事業。広島県府中市の府中第2工場が2023年3月に竣工、7月より生産を開始する見通しに有り、月産15万個の生産能力が加わり、25/3期には歯車生産能力が約3割増となる。このため歯車だけで売上100億円を超え、2ケタ成長が続こう。また歯車については従来、EV向けには提供していない模様であるが、EV化により歯車の静音化が高まっており、岡本工機の精密歯車へのニーズも本格化する見通しに有り、EV向けも加われば更なる売上拡大もあり得る。このように研削盤を中心に工作機械は業界平均を上回る伸びが見込まれ、加えて歯車ビジネスが急拡大する中で、工作機械事業全体も収益拡大が続こう。
また4/28にプレシードと資本業務提携を発表、同社既存装置におけるローダー・アンローダ・マテハン関連機器の製作・販売も手掛ける事が加わり、熊本での半導体設備投資に関連した売上増加も期待される。事業規模は大きくないとみられるが、第3の柱として中期的には売上寄与が加わろう。
全体として25/3期も収益拡大が見込まれ連続最高益更新が見込まれる中で、半導体生産の拡大如何では収益拡大がジャンプアップする可能性もある。現在、同社24/3期会社予想EPS893.89円に対しPER5.5倍は東証スタンダード機械平均PER14.9倍に対し割安であるばかりか、PBRも0.93と、連続最高益更新企業としてさらに割安感があり、配当も20円上乗せし年間200円(配当利回り4.1%)も魅力的とみられる。このため株価水準の居所が大きく変わってくる可能性がある。
(H.Mirai)
関連記事
- 2025/05/19 日本国内ケーブルPSIレポート#27光ファイバ 2025年電気機械向け光ファイバ出荷増加
- 2025/05/19 日本国内ケーブルPSIレポート#26電線概況 2025年1-3月販売 銅線減 アルミ線増
- 2025/05/19 国内電気銅PSI Report #28 2025年1-3月の電気銅販売量 緩やかな減速
- 2025/05/19 国内伸銅品PSI実績Report #61 伸銅品販売量の減速止まるも回復も見えず
- 2025/05/19 民生用電子機器輸出入Report#55薄型テレビ輸入 2025年1-3月液晶テレビ台数伸びず
- 2025/05/19 産業用電子機器輸出入レポート#70パソコン輸入 2025年1-3月輸入台数増加続く
- 2025/05/19 産業用ロボット輸出Report#72 回復基調強まるが輸出先により明暗あり
- 2025/05/19 東北大学×住友商事 CO2と廃PVセルなどからSiC合成技術を共同開発
- 2025/05/16 電子部品輸出Report#119金属製磁石輸出 2025年1-3月の輸出量前年比17%増加
- 2025/05/16 半導体製品輸出入Report#99 DSP輸出 2025年需要回復の兆し