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SAF狂想曲に揺れる日本の廃食用油(後)〜UCOをJAS規格認定品に!

SAF狂想曲に揺れる日本の廃食用油(中)〜SAF需要増に従来のUCO需要家はどうする?からの続き

 

 UCO(廃食用油)を取り巻くいくつかのことがら挙げてみよう。まずバイオ由来であるSAF、ジェット燃料の代替になる「ユーグレナ」に関連することがある。これは微細藻類から抽出された油ということが一般的に知られているが、しかしその組成の大部分は廃食用油を精製したUCOであるというのが現状だ。いまはまだ、藻類からは極微量しか油分は抽出されていない。

(参考)ユーグレナ社、航空自衛隊戦闘機に国産SAF「サステオ」を初給油 本邦戦闘機として初のSAF使用

 

最初のUCOの販路は韓国だった

 また、国内ではバイオマス発電が行われているが、これは当初はパームオイルを燃焼させて発電を行うものだった。しかし、これは食糧と競合すること、またパームオイルの国際相場が上昇したことにより、調達や扱いが難しくなった。その代替としてUCOを燃料にできないか?と引き合いがあったというが、しかしUCOも飼料に供されることから食糧と競合するなどの理由で使用はされず、現在のバイオマス発電は木質チップを燃料にするもののみとなっている。

 

「このUCOを用いたバイオマス発電では、通常バイオマス発電のFIT価格は24円/kWhであるところ、UCOを燃料とした際には廃棄物扱いとされ、廃棄物発電の17円/kWhが適用されました。UCOは、しっかり費用をかけて精製を行い、品質も高いことから、廃棄物発電の買取価格に相当するのはおかしいし、それこそ価格は24円よりももっと高くてもいいのではないか?という議論も出ていました」(塩見氏)

 

 そんな状況であるときに、コロナショックが世界を覆った。国内では外出(外食)が制限され、そのためUCOの発生も減少した。しかし宅食が増えたため、食品工場などからのUCOの供給は増えることとなった。それでも全体では3割減ほどとなったという。また、当然鶏肉・鶏卵・豚などの需要も減ったことから、頭数の調整も行われ、結果として飼料の需要も減少、UCOも行き場をなくした。

 

 そんなとき、国内の事業者は海外に販路を求めた。まずは隣国の韓国である。実は韓国は2010年頃から、国策として、バイオディーゼルを燃料に混合することを義務化しており、2018年当時でその率は0.3%以上となっていた。同国は、かねてから日本のUCOを購入していた。つまり実は、一番最初の輸入国はEUではなく韓国であったのだ。

 

 しかし、それでも国内のUCOは余剰した。だが、そこへきて折もおり、EUからSAFの風が吹いてくる。ここで調達したのが、全世界的にUCOを買い集めていた前出の「ネステ」というフィンランドの企業だ。日本のUCOのマーケットリーダーは「全農」であり、全農価格というものがあったが、しかしいつの間にか、海外への輸出価格が全農価格を追い抜いていた。

 

 同時期、こうしたSAFの世界的な状況を見据え、中国が自国のUCOを回収して、日本同様精製し、EUに廉価で輸出するようになった。しばらく欧米は、加熱するSAF需要を満たすため、同国からの輸入を歓迎していたが、しかし欧米はトレーサビリティに非常に厳しい。調査した結果、中国のUCOは、どうもバージンのパームオイルなど本来UCOではない材料を加えて、かさ増ししているらしいことが分かってきた(こうしたものをフェイクUCOという)。その結果、中国産のUCOには排斥運動が起こっているという。逆にいえば、日本のようにマニフェストなどによりしっかりトレーサビリティの取れているUCOは珍重されるのだ。

 

「アメリカにしてもEUにしても、自国のSAFを得るために、補助金や補助政策を打ち出しているにも関わらず、日本政府の取り組みは局所的であるといわざるを得ない状況です。いまは、民間企業同士が、ケンケンガクガクとやりながら利益優先で〝小競り合い〟をしているような状態です。これでは、日本はSAFに関しては大きく立ち遅れることになるでしょう」(塩見氏)

 

 いまのところ、SAFを製造するプラントは、コスモ石油の大阪堺、それと計画としてENEOSが和歌山県で同プラントを建設する予定にある。しかし、では全国からこの拠点へわざわざUCOを輸送してこなければならないのか?

 

 つまりUCO利用の理想は、地産地消であり、近畿圏のUCOであればSAF原料とすればいいし、他地域のものは従来通り飼料他の用途に用いることが、最も合理的といえるのではないか。

 

アセアンとの共同体で、UCOを利用したSAFのサプライチェーンを

 また、少々話は変わるがマレーシア、インドネシアはパーム油生産において世界の約9割を占めているが、この2国は自国の食文化においても同油も多く用い、UCOも月間で40万t出るという(製造過程での油脂性廃棄物も含む)。日本が年間40万tであるのに対し、月間で40万トン排出されるのだ。しかし、その中でも回収されている廃食用油は2万tに過ぎないという。リサイクルする技術はあっても「回収」するスキームがまだ整備されていないのだ。(写真はインドネシア環境林業省へ訪問時の写真(固形廃棄物処理局長))

 

 現状、このような状況にある2国だが、回収できたものはEUに販売をしている。しかし中国の例のように、欧米はトレーサビリティの取れていないUCOはあまり使いたがらない。ましてや、EUではパーム由来の原料をSAFなど再生可能燃料には利用しないというルール作りも始まっている。そうなるとこの2国のUCOも行き場をなくしてしまう。

 

 そこで、日本の出番となる。日本は、回収技術で大きくリードしている(全油連は回収業社の集まりでもある)ことから技術供与をするもよし、UCO製造の処理施設を作るもよし、また廃棄物としてではなく資源として輸入しても良い(廃棄物扱いだとバーゼル法に抵触する場合もある)。しかし資源として認定するのには、なにかしらのエビデンスが必要になる。

 

「全油連では、そのエビデンスとなるよう、廃食用油の規格化=JAS(日本農林規格)化を計画、3年間の制定準備を経て、今年3月末「廃食用油のリサイクル工程管理」としてJAS認証(JAS0028)に漕ぎ着きました。この規格に基づいたUCOであれば、資源として国をまたぎASEANという大きな共同体の中で、廃食用油を流通させられる可能性があります。インドネシア、マレーシアのUCO協会と連携し、JASを軸としたUCOのASEAN規格制定の話も持ち上がっています」(塩見氏)

 

(写真左:インドネシア工業省へ訪問時の写真(農産業総局長、森林・プランテーション産業局長) 写真右:インドネシアのUCO回収業の現場)

 

 こうした、世界的なSAF需要を起点に、UCOは世界をまたぐ物資となった。この状況を受け、全油連ではきたる8月9日同団体初のUCOに関する情報公開セミナーを行う。

 

 カーボンニュートラルは、もちろん達成しなければならない。しかし、その前にSAFの現状・現実、そしてUCOの状況をしっかりと知ることが重要だ。全油連の情報公開セミナーは、必ずやその布石となるだろう。

 

 問い合わせはinfo@zenyuren.or.jpまで

 

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(IRuniverse kaneshige)

 

 

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