京三製作所(6742) 23/3期WEB決算説明、有報メモ ややポジティブから中立
23/3期半導体減で0.8%減収25.7%営利減、24/3期信号牽引し5.4%増収72.2%営利増へ
株価円(7/3)520円 時価総額327億円 発行済株62844千株
PER(24/3期DO予11.2X)PBR(0.70X) 配当(24/3予)18円 配当利回り:3.5%
要約
・23/3期半導体関連低調で0.8%減収ながら25.7%営利減と利益大幅減も受注2.6%増確保
・24/3期は信号牽引し5.4%増収72.2%営利増予想も、受注前倒し発注一巡で16%減見通し
・新中計の25/3期売上高850億円、営利60億円目標は信号の増額でも達成ハードル高い
23/3期半導体関連低調で0.8%減収ながら25.7%営利減と利益大幅減も受注2.6%増確保
23/3期は売上高723.27億円(計画比20.73億円未達、0.8%減)、営業利益22.07億円(同2.07億円増額、25.7%減)、経常利益26.83億円(同2.83億円増額、21.7%減)、税引利益20.70億円(同7.70億円増額、82.5%減)、受注高773.77億円(同16.23億円未達、2.6%増)、受注残高1062.87億円(5.0%増)と、部門別では差異があるものの、全体では計画範囲内で着地した。
部門別では信号システム事業が売上高566.37億円(同2.63億円増額、1.1%増)、受注高660.42億円(同15.42億円増額、16.9%増)、受注残高1053.30億円(10.2%増)、営業利益53.62億円(同3.62億円増額、0.3%減)となった。売上高では半導体不足などの影響があるも豊富な受注残の消化を着実に実行、売上横ばいを確保した。利益面でコスト削減など横ばい維持も、子会社の退職給付債務計算の変更分5億円を勘案すると実質増益となる。受注は国内外で大型案件を獲得、加えて一部案件の前倒し発注も有り、計画を上回る。
パワーエレクトロニクス事業は売上高156.90億円(同18.10億円未達、7.0%減)、営利18.52億円(同5.48億円未達、22.2%減)、受注高113.34億円(同31.66億円未達、40.2%減)、受注残高47.56億円(47.8%減)に。同部門は22/3Q3の受注54.97億円をピークに23/3Q4には23.27億円まで減少、売上でも22/3Q4の46.09億円から23/3Q4には34.47億円まで減少している。この影響が年度でも現われている。
売上面では半導体製造装置向けが売上高99.45億円(同19.01億円未達、0.6%増)と大幅減額も微増を確保。内訳は大半を占める東京エレクトロン宮城(以降TEL宮城)向けが90.03億円(3.8%減)、その他が9.42億 円(2.2倍)なっている。計画ではパワエレの海外向けを153.02億円と見ていたものが133.99億円と22.93億円未達成となっており、FPDがほぼ計画並みの着地であり、TEL宮城向けの売上がメモリ不振の影響でエッチング用DC電源、RF電源の受注急減、売上減額となった模様。通信向けは21.55億円(27.4%減)と設備工事が一巡、FPD向けは35.90億円(10.5%減)と市場不振が影響している。受注面では半導体製造装置向けが81.01億円(同32.27億円未達、25.1%減)となり、TEL宮城向け宮城のエッチング装置向け電源の大幅減少が影響したとみられる。FPD向けは受注25.97億円(2.06億円未達、57.3%減)と想定通り厳しい受注環境が続いている。また通信設備向けは計画を上回り6.36億円(2.67億円増額、68.6%減)も影響は軽微。利益面では材料高等の影響、研究開発費増(23.8%増の24.34億円)なども有り営業利益率が2.3ポイント悪化し11.8%に止まる。
全体としての営業利益の増減要因では、売上減による影響が1億円、退職給付費用追加計上5.0億円(子会社で簡便法から原則法に変更)、販管費増影響7億円(特に研究開発費は25.08億円増)の減益要因に対し、原価率改善効果6億円で全体7.62億円減少とした。なお税引利益は昨年度の本社工場火災受取保険金127.74億円がなくなったことから大きく減少している。
24/3期は信号牽引し5.4%増収72.2%営利増予想も、受注前倒し発注一巡で16%減見通し
24/3期は売上高762億円(5.4%増)、営業利益38億円(72.2%増)、経常利益42億円(56.5%増)、税引利益28億円(35.2%増)、受注高650億円(16.0%減)予想とした。
部門別では信号システム事業が売上高622億円(9.8%増)、営利70億円(30.5%増)、受注高500億円(24.3%減)予想。受注は前期にJR向け等で前倒し発注があり、海外も大型案件の反動減でこれらが剥落する事が大きい。売上では半導体不足などの影響が緩和、海外の大型案件納入なども有り豊富な受注残の消化で増収予定。
パワーエレクトロニクス事業は売上高140億円(10.8%減)、営利17億円(8.2%減)、受注は150億円(32.3%増)を見込む。売上面では半導体製造装置向けが下期に急回復を想定、年度で受注116.35億円(43.6%増)を見込み、売上高は101.63億円(2.2%増)と微増を確保する見通しとしている。一方、FPD向けは受注低迷でボトムを打つものの31.31億円(20.6%増)想定は22/3期の半減状況程度に止まり、売上は33.96億円(5.4%減)と減少見通し。通信設備他は投資一巡で、鉄道用電源システムを信号システム部門に組み替えたことも有りさらに縮小見通し。現状、3DNANDの不振で稼働率の低下、大型設備投資の遅延が生じており、TELの24/3期半導体製造装置部門の売上予測も23%程度減少、新規装置では12630億円(25.4%減)を見込んでいる。この中ではダイヘンがRF電源中心でほぼTEL宮城向け同様の減少を想定、同社はDC電源に加えRFでも採用が増加、海外ユーザーでの採用もあり売上維持を見込む。
全体の営業利益38億円(16億円増加)の要因分析として、増収効7億円、リードタイム短縮や部品の標準化など原価率改善11億円のプラス効果に対し、売上増に伴う営業費用増、研究開発費増(6億円増の58億円)等があり、その他経費抑制も販管費増2億円のマイナス効果を見ている。
現状、会社想定について、信号システムは中計の2年間累計で受注が1160億円見通しと計画を75億円上振れる見通しで好調な推移、一方でパワエレ部門は半導体の見通しが狂ったことで前期に続き24/3期も中計を下回る見通し。パワエレは半導体向けで24/3期売上横ばいを見ているが、これは海外で新規受注を獲得していること等で可能と判断、全体として会社想定並みの収益が見込めよう。
新中計の25/3期売上高850億円、営利60億円目標は信号の増額でも達成ハードル高い
同社は昨年、「中期経営計画2025」を発表、2事業の拡大と新規事業へのチャレンジで25/3期に売上高850億円、営利60億円を目指すとした。今回、中計初年度で計画未達成、24/3期についても未達想定となっているが、会社側では中計予想を変更しなかった。
しかし現状、パワエレで半導体市場がメモリ中心に調整が長引く見通しから、24/3期会社予想累計での進捗率がパワエレの半導体については23/3期、24/3期売上累計201億円(計画比78%)、中計3年累計比46%、受注も2年累計197億円(同76%)、中計3年累計比45%に過ぎない。今後、下期からの半導体の回復を見込んでも、25/3期については生産能力の上限もあるとみられ、達成は難しいと言わざるを得ない。一方で、信号システムは国内ではJR向け、関西のホームドアなどが好調、海外もインドなどで継続案件があり、全体として中計を上回る収益が見込まれる。
全体を通じ、パワーエレクトロニクスの未達成、信号システムの増額修正が見込まれ、売上面では中計達成が可能も、MIX悪化で利益面では中計の達成にはかなりな努力が必要とみられる。株価は24/3期会社予想EPS44.64円に対しPER11.6倍はプライム電機平均PER19.1倍に対し、年初来高値更新ながら割安感がある。また日本信号14.3倍に対しても割安感があるものの、半導体RF電源国内最大手のダイヘン10.3倍、2位のアドテックプラズマ10.82倍と比較し同様な水準にある。現状、同社は信号事業の性格上、上期までは確実に営業赤字となる業態で有り、しかも今期は半導体部門の収益拡大が期待薄のため、当面は追加の好材料が出にくい局面にある。しかも同社は中計達成について利益面でのハードルが高いとみられ、会社側でも中間決算で改めて中計について言及がなされる(減額改定)可能性もある。このためPBR0.7ではあるものの、従来のややポジティブから中立に対応を変更したい。
(H.Mirai)
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