新着情報

2024/05/20   日産 30年までに...
2024/05/20   コンデンサ国内生産...
2024/05/20   二次電池PSI-R...
2024/05/20   東京製鐵 2024...
2024/05/20   東京製鐵の鉄スクラ...
2024/05/20   フジクラ:社長ミー...
2024/05/20   日本国内光ファイバ...
2024/05/20   国内酸化チタンPS...
2024/05/20   国内伸銅品PSI実...
2024/05/20   アミタHD、インド...
2024/05/20   中国景気刺激策への...
2024/05/20   全固体電池の産業化...
2024/05/20   内モンゴルのリチウ...
2024/05/20   比亜迪(BYD)は...
2024/05/20   第1四半期の世界L...
2024/05/20   雲南省のアルミ企業...
2024/05/20   米国 コバルト過剰...
2024/05/20   DRCコンゴは中国...
2024/05/20   中国のLIB企業は...
2024/05/20   江西省 国内外での...

黒田精工(7726) 23/3期IR説明会動画メモ  業績悪織込みポジティブ

23/3期はモーターコア好調も半導体向け不振、原材料高等で6.1%増収3.8%営利減

株価1493円(7/10) 時価総額85億円           発行済株5693千株

PER(24/3DO予:7.8X)PBR(0.81X) 配当(24/3DO予)48円  配当利回り:3.2%

要約

・23/3期はモーターコア好調も半導体向け不振、原材料高等で26.1%増収も3.8%営利減

・24/3期半導体不振に加えモーターコアがユーザー一服で13.4%減収24.5%営利減予想

・25/3期は駆動システムの本格回復、EV用金型生産能力倍増し本格戦力化で収益上伸へ

・中期計画(Vision2025)で26/3期売上高236億円、営利20.8億円目指すが超過達成期待

 

23/3期はモーターコア好調も半導体向け不振、原材料高等で26.1%増収も3.8%営利減

 

 精密ボールネジ、モーターコア用精密金型、計測・工作機械を3本柱に展開。23/3期は売上高227.46億円(会社予想比27.46億円増額、26.1%増)、営利12.84億円(同0.66億円未達、3.8%減)、経常15.33億円(同2.83億円増額、6.6%増)、税引利益9.06億円(同2.06億円増額、60.8%増)となった。また受注高219.58億円(9.9%増)、受注残高は59.14億円(11.8%減)となった。

 

 部門別で主力の駆動システムは売上高89.66億円(同0.57億円増額、7.1%増)、営利10.30億円(9.5%減)、受注72.75億円(27.3%減)、受注残21.83億円(43.9%減)となった。受注面では主力の半導体製造装置向けが急速に減速、売上は豊富な受注残高の消化で確保した格好。国内向けが売上高47.16億円(7.3%増) と好調で、利益面では単独での同部門として過去最高の利益を獲得したとのこと。北米向けも14.09億円(38.7%増)と半導体製造装置向け等が好調に推移した。一方で欧州向けは7.06億円(6.9%減)とドイツの不振が影響、利益面でもドイツ海外子会社の工場移転に伴う一時的な費用(販管費で3億円程度と推定)発生があり、全体として営業減益に。

 

 金型システムは売上高97.99億円(同26.99億円増額、63.7%増)、営業利益3.67億円(33.9%増)、受注106.45億円(75.4%増)、受注残25.77億円(48.9%増)に。車載用モーターコアの受注急増により、受注高、売上高ともに大幅な上振れ、売上で最大部門に。金型においては22/3期末でグローバル20件のEVプロジェクトが進行中であったが、23/3期末では24プロジェクトに増加、北米8件(3件増)、中国9件(1件増)、欧州3件、日本4件の内訳。4件増は何れも同社独自技術のGlue FASTEC System(金型内自動接着積層システム)の採用となっている。

 

 なお、従来のカシメ方式、IPMモータハイブリッド方式の採用数は変化なし。売上の内訳は30%弱が金型、60%強をモーターコアが占める。このモーターコアの中に米国高級車EVメーカーのLucid USAが納車を始めたことで売上38.98億円含まれており、このインパクトが大きい。仕向先別では米国が39.17億円(5.1倍)となっており、大半がLucid USA の増加で占められる。ちなみに22/3期は金型40%、モーターコア60%とのことで、金型が21%増、モーターコアが92%増程度となった模様。納入先ではLucid社向けが最大であるものの、グループとしてテスラ等に納入しているイタリアのユーログループ合計ではLucid社を上回っていると見られる。利益面では受注急増により金型部品などの外注加工費が急拡大、また収益性で部材比率の高いモーターコアの売上構成比が高まり、部材高も影響しMIX悪化から利益の伸び率が低位に止まった。

 

 機構・計測システムは売上高39.91億円(同計画並み、8.0%増)、営業損失0.82億円(0.3億円悪化、赤字拡大)、受注40.5億円(0.6%増)、受注残11.54億円(5.1%増)に。受注は自動車業界の減産緩和などで緩やかに受注が回復、但し利益面では部材調達コスト上昇、高採算の超精密表面形状測定装置の売上減、一部子会社の事業縮小などの影響で若干赤字拡大に。

 

 全体の利益面では営業外で受取ロイヤリティが1.19億円(1.16億円増)、為替差益1.10億円(計画では為替益ゼロ想定)などで経常利益では会社計画に対し上振れ、特別損失で前期のドイツの減損3.81億円に対し、今回は機構部品で富津工場の減損0.77億円に止まったため、税引利益は大幅な増益となった。

 

24/3期半導体製造装置向け減、金型もLucid社低迷影響で13.4%減収24.5%営利減予想

 

 24/3期会社予想は売上高197億円(13.4%減)、営利9.7億円(24.5%減)、経常利益8.7億円(43.3%減)、税引利益5.6億円(38.2%減)と、半導体製造装置向け減少、金型もLucid社低迷影響で大幅な収益低迷を予想している。

 

 具体的に事業別では駆動システムが売上高81億円(9.7%減)、営利5.0億円(51.5%減)予想。現在、半導体生産の減速で同部門の売上高の30%弱を占める半導体製造装置向けの受注が急減、精密ボールネジの在庫調整が継続している。同社では下期からの受注回復、売上は25/3期に本格増加見通し。但し同社は近年、リニアガイドなど、アクチュエーターなど複合製品の売上拡大を行っており、医療機器や食品製造など高クリーン度を求められる分野の拡大なども7%程度に拡大、24/3期には2ケタの比率まで高まると期待され、半導体製造装置受注の落ち込みほどには減少しないとみられる。但し利益面では減収影響が大きく、MIX悪化なども有り営業利益は半減見通しに。

 

 金型システムは売上高74億円(24.5%減)、営業利益3.70億円(1.1%増)予想。売上の大幅減要因は前期大幅増となったLucid社が、バイデン政権のIRA法案でEV補助金政策の変更(55000ドル以下のEVにしか補助金を出さない方針)により、高級車で55000ドル以上の車種しか投入していないために2023年3月にEV販売台数を2023年当初計画20,000台から12,000台に大幅な販売計画の下方修正を実施。24/3期は日本からのモーターコアの米国向け輸出が激減する事が大きい。但しテスラを中心とするユーログループ向けの金型事業は順調に推移、欧米、中国での欧米メーカーのEV投入増のための設備増強が寄与する見通し。このため売上では金型37億円(28%増)とモーターコア37億円(46%減)、ほぼ半々となる見通しが推定される。利益面ではMIX良化で減収ながら微増益を確保できる見通し。受注面では24件の電動プロジェクトに加え、さらに国内外で10件程度の引合いがあり、受注が売上を上回り、売上寄与が来期以降に本格寄与する事が見込まれる。

 

 機工・計測分野は売上高42億円(5.0%増)営利1億円(1.81億円改善し黒字転換)予想とした。現在、新市場開拓を進め、前期に減損も実施し、受注が緩やかな拡大をする見通しの中で黒字転換が可能となるとのこと。

 

 全体を通じ利益面では減収影響、原価面では物流費、電力コスト増などの影響で8億円程度の営利減影響、人件費など販管費負担増1億円の減益影響に対し、MIX良化で3億円のプラス、ドイツ子会社移転に伴う一時費用の減3億円のプラス効果で全体では3億円の営業減益を見込む。現状、半導体製造装置関連の受注減の状況はQ1でも厳しい状況で、円安影響があっても営業利益は会社計画並みに止まるが、経常利益は上振れるとみられる。

 

25/3期は駆動システムの本格回復、EV用金型生産能力倍増し本格戦力化で収益上伸へ

 

 25/3期は23/3期下期からの半導体製造装置受注の回復を受けて、精密ボールネジ、精密直動システムの売上拡大が見込まれ、さらに医療、食品等の非半導体製造装置向けに低発塵クリーンアクチュエーターの売上拡大も加わり、同部門の売上拡大が期待される。また利益面ではドイツ子会社JGWTの工場移転が2023年3月に完了、25/3期には旧工場と比較し生産効率が大きく改善する見通し。このため駆動システムの収益急回復が見込まれる。

 

 金型システム事業は引続き中高級EV用金型について拡大が期待される。同社最大のであるユーログループは、テスラ向けで売上50%程度を占めると見られるが、テスラ以外にもBMW、VW、ベンツなど高級車メーカー向けにもモーターコアを供給している。現在能力増強を行っているが、イタリア本社で1億ユーロ投資し20%増、メキシコでは3億ユーロを投じ40%増、中国工場でも2億ユーロ投入し30%能力増強を図る計画が進行中。同社とEuro Groupとの提携は2014年にスタートしたが、高級車EVでは大出力、高効率のモーターが必要で、同社の金型内接着方式が低振動、剥離強度、低鉄損などで従来のダボ方式に対し優位性を持つことで、事業拡大に提携が大きく寄与した。この背景から、両社は今回ライセンス契約を更に8年間延長することに合意している。また無錫隆盛新能源科技でも設備増強が行われている。さらに同社も長野工場内に第8工場と倉庫棟を増設しモーターコア専用の大型プレスラインと磁石の樹脂固着システムMAGPREX®を増設(2022年度着工、2023年度中に稼働開始)、する計画。これらによりモーターコア生産は2025年に2023比倍増予定となっている。

 

 同社はこれらモーターコア製造拡大に合わせ、大型モーターコア用金型の生産能力を集中的に増強中で、2025年に2023年比倍増する計画。このため25/3期はモーターコア金型の売上拡大が加速しよう。また23/3期に大幅販売数量減を余儀なくされたLucid社も2024年は25000台の生産を見込むなど、実際にこの数字には達しない可能性が高いものの、生産調調整一巡効果も期待される。利益面では設備増強による償却負担増が見込まれるものの、増収効果が大きく、収益性の改善も期待される。機構計測は緩やかな受注回復と生産効率の改善が進み収益の確保が見込まれる。

 

 全体を通じ25/3期は主力の駆動システムの収益回復、金型システムの収益本格拡大から全体収益も上伸が見込まれる。

 

中期計画(Vision2025)で26/3期売上高236億円、営利20.8億円目指すが超過達成期待

 

 同社は2021年6月に中期計画(Vision2025)を策定、26/3期売上高236億円、営利20.8億円を数値目標として掲げた。事業別予想は開示していないものの、22/3期~24/3期会社予想累計の進捗率では売上高で8%。営業利益で31%超過達成している。また25/3期は収益上伸が見込まれる事から、26/3期中計予想の上振れ達成が期待される。

 

 株価は24/3期会社予想EPS98.53円に対しPER15.1倍と、東証スタンダード精密PER17.3倍に対し割安感がある。また円安でもあり、モーターコアの三井ハイテックのPER20.1倍に対しても割安感がある。24/3期はユーザーの特殊事情でEV用金型システム部門が想定外の減収となるも、25/3期は半導体製造装置向け、金型両部門で収益上伸が見込まれる。このため23/3き決算発表で悪材料出尽くし感があり、EV関連、特にテスラ関連として改めてポジティブに考えたい。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る