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三井ハイテック(6966)MF東京、24/1Q1決算メモ ややポジティブ

MF東京で新型モーターコア紹介、24/1期17.4%増収0.1%営利増予想も25/1期再飛躍へ

 

株価9300円(7/14)   時価総額3670億円 発行済株39467千株

PER(24/1DO予19.9X)PBR(4.1X) 配当(24/1予)72円、  配当利回り:0.8%

 

要約

・プレス・板金・フォーミング展でモーターコア新積層技術披露、欧州向けに樹脂積層も

・24/1Q1はモーターコア好調、電子部品不振で5.8%増収もMIX悪化で42.1%営利減

・24/1期モーターコア拡大も半導体部品不振から17.4%増収もMIX悪化で営利横ばい予想

・中計計画を増額、25/1期売上高2540億円(240億円増)、営利330億円(同30億円)、増収、期予想く拡大装置拡販、収益大幅拡大続く一般産業向けもして

 

プレス・板金・フォーミング展でモーターコア新積層技術披露、欧州向けに樹脂積層も

 

 「MF-TOKYO 2023 第7回プレス・板金・フォーミング展」が7/12から4年ぶりに東京ビックサイトでリアル開催(2年おきの開催で前回2021年はオンライン)された。この会場で車載用モーターコアトップの三井ハイテックブースでは、従来のカシメ方式によるモーターコア積層に加え、カシメブロック、環状取りコア、そして樹脂接着積層など、新積層技術が紹介された。同社は現在カシメ技術によって、自動車用モーターコアを年間約160万個生産、主要サプライヤーから沢山のサプライヤーアワードを受賞し、世界シェア30%を誇っているが、本格的なEV拡大の中で新たな展開として注目される。

 

  まずカシメブロックは顧客のカシメ積層のモーターコア特性を向上させたいとの要求に対し対応した。現在、積層鉄心の製造過程では上下方向で隣り合う電磁鋼板同士を締結する手段として、ダボカシメ(小さな突起を利用して塑性変形を利用して接合する方法)及び溶接が広く利用され、同社はカシメ方式によるHEV向け等で圧倒的な強さを有している。この締結手段はコスト及び作業効率性の点で優れるが、高級EV用モーターでは低鉄損、高トルクの要求が強く、これを優先させる場合に樹脂材料又は接着剤を用いて電磁鋼板同士を締結する方式(黒田精工が先行、テスラなどに採用)を採用することが多く見られる。電磁鋼板は板厚の2乗に比例し鉄損となる過電流が発生する。このためできるだけ電磁鋼板を薄くして積層する事が必要となり、主機モーターコアは現在、0.25mm程度の薄い電磁鋼板を金型でプレスして製造している。薄型化に対し、接着方式は平滑かつ鋼板にストレスを与えず、機械精度も優れているのに対し、カシメでは突起によって板厚が厚くなること、性格に積み重ねることが難しいこと、カシメを小さくすると締結力が弱くなるなどが指摘されていた。またトルクについては鋼板占積率(モーターコア積層方向の高さに対する鋼板の割合)が重要な要素で、カシメでは突起により物理的に鋼板占有率が低くなるとされ、特に欧州メーカーでは接着接合方式を選択する例が多くみられた。同社は今回、モーターコア外周面にモーター形状に干渉しないカシメブロックを生成、カシメブロックを付けた状態でモーターコア内ではカシメレスを実現、接着剤の厚みが無く鋼板占有率も高められ、鉄損の削減を可能とした。また電磁鋼板は打抜きやスリット加工、積層などで加工時の残留応力が磁気特性の劣化に寄与し鉄損を増加させる性質が有り、この残留応力低減についてはひずみ取焼鈍が有効とされているが、接着方式では接着剤が溶けるため焼鈍ができず、この点でも優位性があるとしている。焼鈍についてはトヨタが焼鈍方式を採用しており、最大ユーザーの要求に叶う方式となっている模様。また接着方式では短時間で硬化する接着剤を利用しているものの、製造設備のラインが長くなる等のデメリットもあるとのことで、欧州メーカーでも改めて新方式に興味を持つところが出てきたとのこと。但し、依然として樹脂積層方式の認知度が高いことから、同社は参考出品として黒田精工の特許を侵害しない新方式での樹脂積層方式の製品も展示を行った。同方式の利点も有り品揃えの強化として考えるが、主戦場としては新技術を含めたカシメ方式を拡大させる方針とのこと。もう一つの新積層技術としては分割コアの精度と生産性を高めた環状取りコア技術。昨今、モーターの小型高効率、高出力化も求められているが、モーターの鉄心を複数の部品に分割することでコアの鉄心の損失を低減し、巻線効率を向上させ銅損失を低減する事が可能で、採用が増えている。分割コアではモーターコアの真円度が静寂性やモーター寿命、トルク変動などに影響が及ぶため、分割コアの組立精度が要求される。同社は単純な分割コアではなく一体コアとして打抜きを実現し、内径真円度を向上、がたつき(コキング)を大幅低減する事に成功した。最近の採用事例では、電動ステアリングなどでコキングによるハンドル操作でがたつかないなどで、採用が増加している模様。なお同環状取りコアは主機モーターとは異なり、モーターコアとしての販売というよりも金型販売として伸ばす事が多くなるとみている。

 

 

 いずれにしてもトヨタ向けのHEV用カシメ方式で売上を大きく伸ばしてきた同社は、トヨタ以外でも着実にユーザーを広げ、さらにEVにおいても新技術で対応、黒田精工と真っ向勝負で、今後も2大金型メーカーの戦いが続くと見られる。

 

 24/1Q1はモーターコア好調、電子部品不振で5.8%増収もMIX悪化で42.1%営利減

 

  24/1Q1決算は売上高452.65億円(5.8%増)、営業利益38.23億円(42.1%減)、経常利益45.37億円(44.4%減)、税引利益32.13億円(53.0%減)と、モーターコア好調も電子部品不振で増収ながらMIX悪化で営利大幅減となった。

 

 

 部門別ではリードフレーム中心の電子部品が売上高133.56億円(26.3%減)、営利11.52億円(67.9%減)。スマホやPCなど向け半導体中心に在庫調整が継続、大幅な収益悪化に。モーターコアを中心とした電機事業は売上高306.55億円(30.3%増)、営利26.97億円(3.1%増)に。自動車メーカーの生産回復を受けて既存製品の需要回復と新規製品の量産開始により大幅増収。利益は設備投資39.34億円(37.2%増)に伴い減価償却費が15.09億円(23.2%増)と膨らみ、初期コスト増なども有り利益が伸び悩んだ。ちなみに償却費控除前営業利益は42.06億円(9.5%増)となっている。金型・工作機械は売上高29.54億円(1.0%増)、営利3.05億円(3.4%増)となっている。電機部品部門の需要増に対応、緩やかな増収増益を確保した。

 

 

 全体を通じ営利の27.79億円減益の増減要因では、電子部品が28.83億円圧迫の大半を占め、為替影響を除くと33.5億円の利益減となっている。また営業外では為替差益が6.14億円(61.1%減)となっており減益幅が拡大、さらに税引利益は固定資産売却益の減少13.99億円も影響、減益率が高まっている。

 

 

24/1期モーターコア拡大も半導体部品不振から17.4%増収もMIX悪化で営利横ばい予想

 

  24/1期予想は売上高2050億円(17.4%増)、営利226億円(0.1%増)、経常利益224億円(1.2%減)、税引利益168億円(5.6%減)予想。セグメント別では電子部品が売上高650億円(7.2%減)、営利98億円(19.8%減)、電機部品が売上高1300億円(29.8%増)、営利113億円(24.3%増)、金型・工作機械が外部売上高100億円(2.3%増)、内部売上含む130億円(10.1%増)、営利13億円(0.8%増)予想。電子部品は半導体の在庫調整が上期まで継続、受注回復はQ4となる見通しで収益の大幅悪化を見込む。但し電子部品部門も設備増強は78億円(62%増)を計画、償却費も40億円(30.5%増)と大きく伸びるため、減価償却控除前営業利益は138億円(9.7%減)と1ケタの減少に止まる見通し。一方、電機部品は電動車向け駆動・発電用モーターコアの需要拡大が続き、大幅増収、投資負担増でも売上増に近い利益増を見込む。ちなみに設備投資は330億円(2.2倍)、償却費87億円(57.8%増)を想定、減価償却控除前営業利益は200億円(37.0%増)と、収益性も高まる見通しに。金型・工作機械はモーターコア増産に伴う内部売上が減少、外部への金型販売が伸びる見通しで、こちらも設備投資を13億円(2.6倍)、償却費8.4億円(11.4%増)を見込み、利益の伸びは投資負担などで小さい見通し。

 

 

 全体では設備投資を420億円(2.0倍)、これに伴い減価償却費が130億円(36.4%増)の計画となっており、減価償却費控除前営利が356億円(10.8%増)と2ケタ増見通し。また為替前提が130円(2.73円の円高想定)で、電機部品の増額見通しも有り、会社予想を上回る収益が見込まれる。

 

 

中計計画を増額、25/1期売上高2540億円(240億円増)、営利330億円(同30億円)

 

  同社は2022年3月に新中期経営計画として25/1期に売上高2300億円、営業利益300億円を目指す計画を発表した。しかし昨今の電動車市場の拡大、また最大手ユーザーのトヨタのEV戦略の大胆な変更、さらに為替の大きな変化などがあり、今年3月に新中計の増額変更を行った。具体的には売上高を240億円増額し2540億円、営業利益も30億円増額し330億円予想、為替前提は1$=110円を130円とした。売上高の構成については元々具体的な開示がなされていないが、昨今の世界的なEV拡大の中で、売上増額の中心は電動車向けと見られる。また設備投資についても、当初計画の3年間で680億円に対し売上の増額を上回る320億円を上乗せし1000億円とするとしたが、これも電機部品の増産投資の上乗せが大きいとみられる。具体的に電機部品の北米の第2の生産拠点として、カナダに加え新たに5月にメキシコで新工場を立ち上げることを開示、2025年9月の量産開始を目指すとしている。

 

  2022年、IEA調査によると世界のBEV、PHEV合計販売が初めて1000万台を超え、1022万台(前年比55%増)となった。最大販売国は中国で590万台(80%増)、次いで欧州260万台(15%増)、米国99万台(55%増)となっている。また2023年は1400万台(35%増)を見込んでいるが、同社が注力する欧米メーカー向けも同様の伸びが期待されている。そしてIEA予測ではベースラインシナリオで2025年に2050万台、2030年に3690万台に拡大すると予測している。平均的に2025年までで21%、2025年以降は年率13%程度の伸びを想定している。同社においてはHEV市場でトヨタの大きな販売先を確保、加えてトヨタのEV戦略でEV向けの本格拡大が見込まれ、さらに新技術製品の攻勢も加わり当面は30%程度の伸びが続くとみられる。

 

  電子部品事業については半導体の立ち直りが2023年4Qからとみられるが、2024年は2ケタ増に回帰しよう。先端半導体においてはフリップチップBGA基板の多用が見込まれるが、車載などでは接着強度など、安全性重視の観点も有り、リードフレームの地位は変わらない見通し。また発熱に対してヒートシンク付きリードフレームなど、ユニークな製品も提供している。全体的にはリードフレームも多ピン化、狭ピッチ化など高い技術を必要とする製品群も増えており、業界トップクラスのインナーリード先端ピッチ0.12mmに対応、半導体生産の増加とともに増産効果と収益性の回復も進むとみられる。

 

 金型・工作機械については、車載主機以外ではモーターコアビジネスではなく金型販売も積極展開する見通しで、電動ステアリングやエアコン向けなどに精密プレス用金型、MACシステム(三井オートマチックコア・アアッセンブリ・システム:打抜きから結束にいたる工程を一つの金型内で行ない高い生産性を誇る)などを提供していく。

 

 

 

 このような状況で、25/1期修正中計予想は超過達成が期待される。現状、株価は24/1期会社予想EPS454.16円に対し、PER20.5倍と東証プライム電機平均PER20.2倍とほぼ平均並みの数字となっている。しかし同社が1月決算で、5月にトヨタがEV戦略で2030年までにEV関連投資を1兆円増増加し5兆円にすると表明、テスラ以外でも投資額増額のアナウンスが相次いでおり、今後、新たなEV主機用モーターコア受注の成約が期待される。25/1期にはリードフレームの収益回復も加わり修正中計予想を超える収益の期待もあり、ややポジティブと考える。

 

 

 

(H.Mirai)

 
 

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