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株式会社HIKKY:加速するメタバースコンテンツの需要と展開

2023年7月15日から30日までの間、ソーシャルVRプラットフォームであるVRChatにて株式会社HIKKY主催による「バーチャルマーケット2023 Summer」が開催されている。
今回の記事では累計10回目の開催を迎えるこのイベントの、今回の会場概要とメタバースプラットフォームの利用の今後についてを記載していく。

【関連記事】
株式会社HIKKY:メタバースというこれからの市場に向けて(バーチャルマーケット 2022 Winterの内容)
https://www.iru-miru.com/article_detail.php?id=56465

 

 

より多様化する企業出展と現実世界の再現

 


 入口となるエントランス会場は、過去様々あったバーチャルマーケットのエントランスの中でも相当に未来的な雰囲気を感じる設計となっている。
入室後目の前にある台座に乗れば、出展企業やアンバサダー、スタッフ案内などが展示してある広場の先に各会場を繋ぐ電車へ乗るゲートに突き当たる。
過去にバーチャルマーケットでは電車の駅、あるいは空港やこれから着陸する宇宙船等をエントランス会場の出発点として見立てた事はあるものの「電車に乗る様にポータルを潜って各会場へと向かう」という擬似的な交通体験に近いやり方はこれが初めての実装となる。

 

 

 今回企業向け会場として選ばれたのはラスベガス、福岡、そして秋葉原の三箇所だ。
「パラリアルラスベガス」ではアスレチックコンテンツや宝探し等で会場内で利用できるコインを稼いだり出来る他、企業ブースの中には実際のスロットマシンをプレイできるブースも存在する等、今回の企業向け会場の中では最も派手な要素が強い。
舞台がアメリカのラスベガスという事もあり、ワールド(会場)内の景観の混沌さは企業向け展示会場の中で随一と言えるだろう。
アーティストの広瀬香美氏とタイアップした株式会社JVCケンウッドブースやポテトチップスでおなじみの株式会社湖池屋によるポテトチップス製作体験、初出展ながらギミックに溢れたブースとキン肉マンでおなじみのゆでたまご氏デザインのオリジナルキャラクター「カップヌードル大帝」をひっさげる日清食品株式会社ブースなど、その顔ぶれは非常に多岐にわたっている。

 

 


 「パラリアル福岡」は福岡県の各名所をモチーフとした会場であり、空港到着後に名所が立ち並ぶ市街地や参道に繋がるビーチを駆け抜け博多駅がゴールとなる構成となっている。
企業展示会場としては主に現実の観光地や名産品、アイコニックな物を一度に詰め込んだワールドとなっており、現実世界の再現というよりは仮想空間ならではのメリットを存分に活かした形だ。
出展する企業や団体の顔ぶれもより規模の大きいものが多いのか、特定非営利活動法人 国境なき医師団日本や静岡県焼津市に浜松市、福岡タワーや九州旅客鉄道株式会社(JR九州)や西日本鉄道株式会社といった公共性と隣合わせの層が多く、それぞれ趣向を凝らしたブースで来場者をお出迎えする。
特にJR博多駅のホームに止まる西鉄5000形の反対にある「ふたつ星4047」の車内内装再現度は素晴らしく、このワールドのコンテンツとしてただ内装を再現するに留まらない仕掛けも施されている。

 

 

 「パラリアル秋葉原」は企業向け会場の中で最も現実世界に即した地形をベースとしている。
とはいえ流石の仮想空間であり、色とりどりの結晶が立つ秋葉原駅から電気街口方面の出口を通ると、全体が綺羅びやかかつネオン色の強いデジタルな表現を施された秋葉原を歩く事となる。
会場全体がキラキラとした表現に溢れているものの、仮想空間のお約束なのか会場全体に潜む「バグ」を見つけ出し修正するという探索要素も備えたこの会場。
7月29日と30日にベルサール秋葉原にて行われる「バーチャルマーケット2023リアルinアキバ」に併せたこのギミックは是非参加者にも解いてもらいたい所である。
今回の秋葉原ベースの会場ではサブカルチャー項目であったり、地元に根ざした企業や団体が多いのかイギリス風パブチェーンのHUBを運営する株式会社ハブや株式会社バンダイナムコミュージックライブ、著作権管理事業者の株式会社コアミックスや筆記具でお馴染みの株式会社パイロットコーポレーション等こちらも顔ぶれの幅が広い。
なお今回のパラリアル秋葉原の各所に居る、キタサンブラックを含む乗馬可能な馬たちが一同に介する「バーチャル中山競馬場」の入り口も同会場に存在しており、日本中央競馬会(JRA)お墨付きの公認コンテンツとなっている。

 



 

 そして3ワールドにまたがる企業も幾つか存在し、その顔ぶれも様々だ。
メンテナンス企業である協和機工株式会社、質の良い製品取り扱いでお馴染みの株式会社大丸松坂屋百貨店、レンタルサーバーでおなじみロリポップサーバー運営元のGMOペパポ株式会社といった企業は、各企業向け展示会場にそれぞれ出展を行っている。
同じく3ワールドにまたがり宣伝をしている食品スーパーマーケット ベルクでお馴染みの株式会社ベルクは、これまで展開した「リアルでは絶対やってはいけないシリーズ」をひとまとめにした「ベルクランド」というワールドを何と別途公開している。
食品ボウリングや売り場内でのカートレースといった独自性の強いコンテンツを纏めてブラッシュアップする気合の入れようは一味違う凄みを感じるものである。


 

 バーチャルマーケットは年を重ねるにつれ参加する企業の顔ぶれも年々変わりつつあり、そのコマーシャルに関する影響力がどれだけあるのかという点で各社まだまだ手探りという状況が続いている。
そういった中で本年のバーチャルマーケット2023 Summerは各企業がギミックや再現度に重きを置いた「面白さ」を感じるコンテンツをブースを通して発信する事が多かったのは、一つの転換点では無いだろうか。
これまで企業のコンテンツをある種単方向で宣伝をしてきた形から、実際にユーザーが参加し触れる自由度を備えたあり方へ変わっていく事で、よりユーザーが製品やサービスに対し親しみを覚えるのかもしれない。


多様化するクリエイターのあり方とメタバースを主軸に広がる技術
 

 今回はクリエイター向けの一般展示会場にも非常に趣向の凝らされた物が多く、会場の多さも合わさって見るだけで一日掛かる程の規模となっている。
 

 

 宇宙の片隅にあるとある星の外周に作られた円周状コロニーを探索する「スターシップオーケストラ」、中央にある御神木の周囲を取り囲む動物や亜人種の楽園を探索する「森聖街 ヤポプエト」、巨大なオアシスの真上に建つアラビアンチックな「水砂の都 アビダール」といった会場が存在する。
 

 


 他には海洋生物を展示し幻想的な雰囲気の漂う「幻想コロニー コクーン水族美術館」、西洋建築の城塞で開かれる展示会と舞踏会を楽しむ「カステロマギカ Reborn」、そして大型ブース専用の展示場である「Poppin' Splash」とこれだけでも相当数だ。
そこにバージョン違いが入るのだから、実質この数のニ倍少々の一般展示会場となる。
 

 


 高性能なPCを持っておらず、VRHMD機器だけあるという人向けの措置も行われている。
市中に流通している中で数が多いHMDである「Oculus Quest2」でも訪問する事が出来るワールドは今回も用意されているのだ。
今回は以前の展示会で出てきたワールドがその装いを変える形で出てきており「VketPlaza -Quest Mode-」「南国の楽園 ルルアナリゾート」「魔法学園グランヴェール」がQuest対応ワールドとして開かれている。
そして2018年に開催された第一回バーチャルマーケットの開場を再現した「バーチャルマーケットClassic」も今回公開されている。

 


 また企業向け展示ブースの中でパラリアル福岡にある「JR博多駅」が博多駅前と駅構内のコンテンツの大半を詰め込んだQuest対応ワールドとして構築されており、これだけ大規模な構造のワールドのQuest対応となると相応のコストと手間が掛かる。
なお先述のベルクランド、そして株式会社東京マルイが公開しているサバイバルゲーム向けワールドの「CONQUEST」も同様にQuest対応となっている。
PC向けに公開する物とQuest向けに公開するものでは可能な設定内容の差異や処理不可を抑える仕組みなどをより徹底する必要があるため、今回はより一層の力の入れようである事が見て取れる。
 

 

 

 更に高性能なパソコンもなく、デスクトップモードでVRChatが動作するかもわからないというユーザー向けのコンテンツも実装されている。
株式会社HIKKYが開発したWeb上で動作するメタバース開発エンジン「Vket Cloud(ブイケットクラウド)」というサービスを利用したもので、こちらはWebブラウザに対応している機器であればPCでなくともスマートフォンやタブレットでも入場が可能となっている。
今回はこのVket Cloud対応の企業展示会場がとても多く、エントランス会場の対応はもちろんのことJR博多駅前のワールドに関しても、PC版やQuest版とはまた違う企業の小ブースを多々展示。
博多駅構内もPC版、Quest版と違う他ブラウザ上でも株式会社パイロットコーポレーションブースのシューティングゲームや静岡県焼津市ブースの釣り体験等がプレイできる。
更にこのVket Cloudのみのコンテンツとして株式会社Robot Consultingの法律クイズや株式会社ジェイ・キャストの提供する「バーチャ場(ば)」スタジオでのイベント、株式会社JVCケンウッドの手掛けるコンサートホールなどこちらも盛りだくさんのコンテンツが一杯となっている。
一般ユーザー向け展示会場としては「【イマネジア】王都マギカ」と「【テクノカインド】テザーフォート」の2会場が公開されており、ファンタジックなものやSFチックなアバターのデータを購入出来る。
 


 さて、ここまで長きにわたって内容を記載してきたが今回のバーチャルマーケット2023 Summerではパラリアルラスベガスを筆頭に特に海外のユーザーを多く見かけた。
確かにVRChatのアクティブユーザーの大半は日本国外のユーザーではあるが、バーチャルマーケットに関してVRChatのワールド(仮想空間上のスペース)検索欄にも目立つタグが追加されており、「気になったから行ってみる」という導線が確保されやすい状態となっている。
そして連日ユーザーが入れ代わり立ち代わり、企業や一般ユーザーが公開した様々なコンテンツを楽しんではSNSにアップロードしコンテンツの拡散を行っている。
ここに今話題の「メタバース」というコンテンツにおける一つの方向性が見えてくる。

 

 一般ユーザーが展示している製品は自身で作り上げ、それを展示するに至ったものである。
単純にそれがVRSNSというややもすれば技術者向きのユーザーが多い所で公開・展示され取り上げられる事は自身の技術をアピールし様々な出会いの機会を提供する。
特にそれが市井の一ユーザーの物と知り、声を掛けたいと思っている企業は少なからずあるだろう。
企業向け展示物に至っては今回も例年通り気合の入ったものがとても多く、それだけ「企業がこちら(VRSNS等のユーザー)側を見ている」という強烈なアピールになる。
またこういった所で公開を行うということは、そこを訪れる多くのユーザーに自社の製品がアピール出来るというコマーシャル効果を生む。
それはいわゆる「国内企業向け、限られた人間にのみ公開できるハコモノ」という多くのいわゆる「メタバース的なソリューション」とは大きく方向性が違うものである。

 

 特にPCVR向け対応のコンテンツに関しては、いわゆるスマートフォン向けのコンテンツで展開されている各種企業の制作物やアバター対応物などとはそのベクトルも大きく違う。
「自社の製品を、仕様上定められたアバターに仕様内のギミックで所有させる」というだけに留まらないやり方を可能としている。
バーチャルマーケットでは定期的にコンテンツの担当者や宣伝の為のユーザーが訪れるブースがあったり、企業公式VTuberによる配信等が行われる事もあり、イベントとしてのサプライズ感も会期中欠かす事が無い。
こういった「やるからには徹底的にやる」という姿勢は先の「ハコモノ系コンテンツ」と比べてどれだけ発展性を持っているのか、言わずもがなであろう。

 

 情報通信技術という点においてもこの手の大容量コンテンツのやり取りや処理の高速化が急務となる。
ハードウェアも含めて、こういった仮想空間上かつ情報容量の大きな物を取り扱うとなれば相応に高性能な物が求められる。
この文化が局所的なものではなく、より大規模かつ当たり前の物となっていった先にあるのはどういうものだろうか。
それは仮想空間上に築かれる経済圏の構築と、それをよりスムーズにするためのハードウェアの性能向上だ。
特に情報通信においてはネットワークが逼迫する現在において、より端末側での情報処理と最適化を行った上での通信が必須とされている。
より多くの情報が行き交うようにするためにも、HMDに搭載される半導体やバッテリー等のパーツの性能向上は更に進めていく必要が出てくる。
一般向けはもちろん、企業向けの開発環境を構築する為の物においても同様である。
これを促進する為の一側面として、仮想空間というフィールドにこれだけ多くのユーザーが行き交っており市場があるという事をより強くアピールしていく必要があるのではないだろうか。

 

 今回のバーチャルマーケット2023 Summerは2023年7月30日まで開催予定となっている。
是非とも会期中に一度は新しい未来の扉を叩いて、技術と文化の先端に触れてみてはいかがだろうか。

 

(IRuniverse Ryuji Ichimura)

 

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