中国経済、やや改善も勢い鈍い 不動産は一段と悪化 8月指標一覧
中国当局が9月15日までに発表した2023年8月の主要経済指標は、データの一部が7月から改善した。ただ水準は低く、回復の勢いはやや鈍い。一方で中国人民銀行は9月14日、銀行が当局に納入する準備金の基準である預金準備率を0.25%引き下げた。度重なる利下げで苦しくなった銀行の財政を支える目的と見られ、苦しいかじ取りを強いられている様子がうかがえる。
中国の2023年の主要経済指標
(注)単位は新規融資以外は前年同期比増減で%、固定資産投資と不動産開発投資は1月からの累計、GDPは四半期。
(中国国家統計局、中国海関、中国汽車工業協会、中国人民銀行などの発表をもとにIR Universeが作成)
■新車販売や消費者物価がプラスに戻る
8月までの経済指標では、工業生産高や小売売上高の前年同月比での伸びが改善し、新車販売台数や消費者物価指数(CPI)の伸びも7月の前年割れからプラスに転じた。ただ、回復が力強いとは言いがたい。製造業景況感指数(PMI)は7月からやや改善したものの、5ヶ月連続で好不況の境目となる50を下回った。サービス業のPMIは悪化しており、不安を誘う。
最も不安を誘うのは、不動産開発投資が1-8月に前年同期比8.8%減と1-7月期の8.5%から下落率を広げたことだろう。8月に発表の民営不動産大手の2023年1-6月期決算の内容は惨憺たるもので、世界中に衝撃が走った。鉄鋼や銅、レアアースなど、不動産が供給先となる鋼種には特に需要低迷懸念が根強い。固定資産投資も伸び鈍化に歯止めがかかっていない。輸出入も8月はともに減少し、貿易の比率が高い中国経済にはダメージが大きいとみられる。
■金融緩和と銀行支援を同時に
不動産をはじめ傷んだ経済を活性化させるため、中国当局は今年に入り、世界の趨勢と逆行して政策金利を引き下げてきた。しかし、金融緩和を続ければ利ざやが縮小して銀行の経営が苦しくなってしまう。そこで、9月15日には預金準備率を引き下げ、銀行の負担を軽減した。
人民銀は、9月15日発表の中期貸出制度(MLF)の金利も前回から据え置いた。中国の実質的な政策金利である最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)はMLFを基準に設定されるため、9月20日に発表予定のLPRもおそらく据え置きになるだろう。
景気を下支えするためには金融緩和を続けたいところだが、そればかりもやっていられない。8月の一部データの改善が短期に終わるのか本格回復の予兆なのか、中国当局も見守っていることだろう。
(IR Universe Kure)
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