非鉄リサイクル産業の展望は明るい!?--BIR非鉄金属部門

欧州を拠点とした世界的なリサイクル業界団体であるBIRがが10月22~24日の日程で開催した「World Recycling Convention & Exhibition」(アブダビ)が終了した。24日に非鉄金属部門などは「非鉄金属リサイクル産業にホライズンは明るい展望を提供する」と題したセッションを行った。本記事では、セッションのポイントを紹介する。
非鉄リサイクル産業の将来に楽観的な展望を示す登壇者が多かった。
最初の登壇者は、米国のリサイクル業者団体ISRIのチーフエコノミスト兼商品部長であるJoe Pickard氏である。
「ISRI会員に話を聞くと、2023年が2022年や2021年よりも良い年だったという人は一人もいません。しかし、今後、事業を成長させる絶好の機会がある。たとえ短期的な課題があったとしても、私たちの業界にとって中長期的な展望は信じられないほど明るい」。
しかし、同氏は、中国の不動産セクターの危機で、商品輸出国に世界的な影響が及ぶ可能性があると指摘した。また、失業者数よりも求人数の方が多いという米国の労働市場の逼迫は、労働力の定着を目指す米国のリサイクル業者にとって大きな課題であるともした。
ただ、「市場は変化しており、米国ではリサイクル能力の増強が始まっている。中国が低品質スクラップの輸入削減を推進しているため、米国は現在、より高品質の非鉄スクラップ、ベア・ブライトやカッパー1、2 などを輸出している」が、ピッカード氏は、銅やアルミをはじめとする二次原料を処理するために、米国で新たに稼働する施設の数に勇気づけられたという。例えば、アルミニウム・ダイナミクスやとノベリスが発表している数十億の大型プロジェクトなどだ。
インドは現在、リサイクル商品の第2位の市場になってきており、さらなる貿易拡大の可能性を秘めているとした。
2人目のゲストスピーカーは、アラブ首長国連邦のフジャイラ・ゴールド社のチーフ・コマーシャル・オフィサーであるDeepesh Goyal氏で、中東の銅市場の現状について分析を加えた。 フジャイラ・ゴールド社は、インドの鉱業多国籍企業ヴェダンタ・リソーシズ社の子会社になる。
同氏は5年前、「様々な一次金属を生産しているので、二次原料には手を出したくなかった」と率直に語った上で、「しかし、ESG目標やその他のコミットメントにより、われわれ一次生産者は、カーボンフットプリントを削減するために、これを放っておくわけにはいかないと感じている」と強調した。
銅に焦点を当てて、同氏は次のように指摘する。電気自動車と再生可能エネルギー産業がもたらす需要は世界的に「素晴らしい」ものであり、 「リサイクル産業にチャンスをもたらすものだ」と述べた。
全体的な需要は 2030 年まで毎年 100 万トンずつ増加すると予測。中東に限って言えば、その消費量は50%近く伸びると予想されるとした。
最後に同氏は、リサイクル業者にとっての主な課題として、規制、貿易規制、品質の一貫性、透明性、利幅の低さなどを挙げた。
リサイクル業者を買収する計画があるかと尋ねられた同氏は、「持続可能な事業とするためには、常に二次金属を供給する必要がある。また 二次金属はますます製品に使用されるようになっている。現在の15%という数字は、間もなく20%に上昇するだろう」と答えた。
同社は亜鉛や鉛といった他の二次金属の統合にも投資しているという。
BIR非鉄金属部門の新会長であり、ニュージーランドのヘイズ・メタルズのトレーディング・マネージャー兼マネージング・ディレクターであるポール・コイトは、「私たちが原材料として受け取り、再利用しているものは、毎年数百万トンの炭素排出削減に貢献している」と講演を締めくくった。
今回の「World Recycling Convention & Exhibition」にはメディアパートナーとしてIRUNIVERSE代表の棚町氏が出席し、現地の状況を報告している。
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(IRuniverse G・Mochizuki)
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