チタン原料市場市況2023年11月 膠着気味、ルチルの供給過剰響く
2023年11月のチタン原料市場では、膠着または勢いに乏しい展開が目立った。製造業は中国などアジア圏の休暇が続く秋から冬にかけて受発注が鈍る傾向があり、チタン市場でも新規受注は発生しにくい。チタン精鉱の原材料となるルチルの供給過剰も産業全体の重荷となっている。
チタン精鉱
過去3か月間のチタン鉱石価格の推移(TI02 50% Fe203.14%)(US/ton)
10月初めに仲値 408ドル/トン台まで上げたものの勢いは続かず、11月に入ってからは404.5ドルでの横ばいが続いている。チタン鉱石は2021年から400ドル前後の推移で、長期にわたり膠着気味だ。
とある現物トレーダーからの情報によると、ルチルは現在、かなり供給過剰状態で、豪州の生産大手は価格下落によるコスト割れ懸念から、既に3ヶ月ほど生産を見合わせているという。Miruのプライスデータでも、ルチルはバルクカーゴベースで安値が1400ドル/トンに下げている。
過去1年間のルチル価格の推移(95% Ti02 bulk Fob豪州)(us/ton)
二酸化チタン
過去3か月間の二酸化チタン価格の推移(ルチルTi02 93%min Fob China)($/ton)
11月初旬には仲値で2250ドル/トンに前日から1%下げた。3000ドルを超えていた2022年春の水準には遠く及ばず、市場では「チタンでよいのは金属チタンで、全体の9割を占める二酸化チタンの弱さは響いている」(トレーダー)との声があった。
チタンスラグ
硬直感が強い。高チタンスラグは新規受注がみられるが、同業間競争の激しさからメーカーの利益率が低く、価格を引き下げる雰囲気でもない。
中国では今後、乾季に入ると工場の多い雲南省の電気代が大幅に上昇し、チタンスラグの製造コストが上昇するとみられる。コストの拡大前に備蓄を増やしておきたいとの思惑を背景に、酸性チタンスラグ工場から原材料工場への新規受注は、最近若干増加しているという。
チタンスポンジ
過去3か月間のチタンスポンジ価格の推移(99.7% Ti China)($/kg )
8月下旬に6956ドル/kgの直近安値を付けてからやや持ち直している。10月18日に7.592ドルまで上げた。11月に入ると7.524ドルへと小幅に下落したが、7月以来の高い水準にある。ただ、長期で見れば2020年10月以来の低価格。
四塩化チタン
過去3か月間の四塩化チタン価格推移(99.99%min EXW China)(Rmb/mt)
段階的に値下がりしている。11月の価格は6400元で、2020年11月以来3年ぶりの安値圏にある。
フェロチタン
過去3か月間のフェロチタン価格の推移(Ti 70% EU)($/kg Ti)
国際価格は11月9日に仲値1kg=6.6ドルと前日から2%上げた。ただ、2023年は7月から6ドル台半ばで推移しており、膠着気味だ。中国では大部分の製鉄所が11月もフェロチタンを発注し、引きはそれなりに強い。一方で生産者間の競争が激しく値上げが難しいため、結果として価格には動きが出にくくなっている。
(IR Universe Kure)
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