レアメタル系スクラップ市場近況2025#5 コバルト系など一部を除き、軒並み下落
コバールやステライトなど一部のアイテムを除き、下落が目立つ状況となった。上昇したアイテムにおいても、原料のコバルト相場の下落の懸念があることから予断を許さない状況にある。また、二転三転するトランプ関税や各国の報復関税の影響は、関係者によれば「あまり実感していない」とのことだが、関税対象が明確になってくれば、ある程度の影響は避けられないため、関税の“猶予期間”が切れるタイミングは特に注意し動向を把握していきたい。
【チタン】
・純チタン板スクラップ(新断)「⤵」:310~330円/kg。前月から10円下げ
・合金6-4チタンダライ粉「⤵」:100~120円/kg。前月から10円下げ
・合金6-4チタンスクラップ「⤵」:150~160円/kg。前月から10円下げ
・フェロチタン「⤵」:実勢はキロ当たり5.3ドル/kg前後。前月から約0.2ドルの下げ
先月と同様のペースでの下げが継続している。引き続き、ロシア産のフェロチタンの安売りが続いており、それに伴って原料のチタンスクラップなどもマイナス傾向にあるようだ。ロシア産フェロチタンの流通量が多いことから今後も下降トレンドが続くとみられる。
【工具類】
・ダイス鋼MIX「→」:25円/kg。前月から横ばい
・SKD61「→」:55円/kg。前月から横ばい
・ハイス(ミックス)「→」:370~400円。前月から横ばい
・ハイス(一品もの)「→」:290~320円。前月から横ばい
・超硬スクラップ「→」:2900~3300円。前月から横ばい
工具類は全アイテムで横ばいとなった。ハイスは鉄の相場価格が下落している一方で、クロムやモリブデン、バナジウムの価格がやや上昇しているため、相殺する形で横ばい基調となっているようだ。関係者によれば、買いの弱さは現状感じていないとのこと。タングステンとコバルトから成る超硬スクラップは現状横ばいだが、原料相場の上昇により上げ含み。
【モリブデン系】
・酸化モリブデン「→」:前月から横ばい。仲値は20.625ドル
・フェロモリブデン「⤵」: 48ドル/kg前後で推移。前月から約1ドル下落し、仲値は47.65ドル。
・モリブデン新切れスクラップ「→」:3350~4350円/kg。前月から横ばい。
酸化モリブデンやモリブデン新切れスクラップは横ばいだが、フェロモリブデンは下落した。短期で見れば、3月中旬からマイナス基調にあり、今後の動向に注意が必要といえる。
【タンタル】
・タンタライト「⤴」:95~97ドル/lb。前月から5ドルの上げ
・金属タンタル「⤴」:308~318ドル/kg。前月から3ドルの上げ
・五酸化タンタル「⤴」:254~272ドル/kg。前月から横ばい
・タンタルスクラップPIN「→」:高値29000円/kg、安値27000円/kg。前月から1000円の上げ
・タンタルターゲットスクラップ「→」:22000円/kg前後。前月から2000円の上げ
タンタライト、金属タンタルは先月に続き上昇傾向にある。五酸化タンタルは若干の変動が生じたものの、足元は前月同等で落ち着いている。
【ステンレス 、耐熱系】
・SUS304「⤵」:140~150円。前月から10円下げ
・SUS310「⤵」:375円/kg前後。前月から5円下げ
・SUS316「⤵:230~280円。前月から5円下げ
・SUS330「⤵」:490~540円/kg。前月から5円下げ
・SUS430「→」:66~74円/kg。前月から横ばい
全体的に横ばいからマイナス基調に転じた。ニッケル相場の下落に連動した形となる。310や330では2024年12月から下げ傾向にある状態だ。
【ハイニッケル合金系】
・42アロイスクラップ「⤵」:630~690円/kg。前月から50円下げ
・インコネル718「⤵」:630~870円/kg。前月から60円下げ
・インコネル625「⤵」:900~1000円/kg。前月から100円下げ
・インコロイ800「⤵」:460~500円/kg。前月から40円下げ
・ハステロイX「⤵」: 670~750円/kg。前月から50円下げ
・ハステロイC「⤵」: 800~900円/kg。前月から100円下げ
先々月から見ると下落、上昇、下落と価格が推移している。需給はあまり変化しておらず、それぞれの原料相場に影響されての変動とみられる。レアスクラップの専門商社によれば、「仕入れができれば、国内市場では買い手が付く状況」とのことだ。
【その他】
・キュプロニッケル(9/1)「⤵」:630~700円/kg。前月から30円下げ
・キュプロニッケル(7/3)「⤵」:730~770円/kg。前月から30円下げ
・コバール「⤴」:305~365円/kg。前月から20円上げ
・カーペンター「⤵」:310~370円。前月から15円下げ
・ステライト(Co50%他)「⤴」:450円前後。前月から50円上げ
原料の相場変動の影響を受けて上昇・下落が分かれた。コバルト相場が上昇傾向にあるため、コバールやステライトが前月に引き続き上昇した。ただ、関係筋によればコバルト相場が下がる懸念も大きく、今後の相場動向を注視する必要がある。
(IRuniverse K.Kuribara)
関連記事
- 2025/08/04 日本製鋼所:25/12期2Q決算を発表、業績見通し据え置き
- 2025/08/04 バナジウム市場近況2025#8 まちまち、フェロバナジウム5年ぶり安値、鉄鋼需要を悲観
- 2025/08/04 JFE HD:26/3期1Q決算説明会を開催。業績見通し据え置き/GOの能力増強を発表
- 2025/08/04 アジア・欧州・中国のステンレス価格(8/1)
- 2025/08/04 ニッケル輸出入Report #188地金輸出 2025年前半 2016年以来の多い輸出量
- 2025/08/04 ニッケル輸出入Report #187地金輸入 2025年前半輸入量前年比1割増加 ただ年後半減速か
- 2025/08/04 ニッケルブログ#22 世界のEV市場における欧州の地位:成長、課題、ダイナミクスの変化
- 2025/08/04 LME Weekly 2025年7月28日-8月1日 全面安、50%関税で軟化の銅に連れる
- 2025/08/04 POSCO:25/12期2Q決算を発表
- 2025/08/03 2025年6月 SUSスクラップ輸出入統計分析 輸出累計は依然前年割れ 単価は3か月ぶり反落