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タツモ(6266) 23/12Q3決算・セミコンメモ ニュートラルからポジティブに変更

23/1229.0%増収1.6%経常減予想に変更無く利益増額で最高益期待、24/12期収益拡大続く

株価2607円(12/17) 時価総額387億円 発行済株14813千株

PER(DO予:12.4X)PBR(1.98X) 配当(23/12DO予)27円  配当利回り:1.0%

 

要約

・23/12Q3は2.1倍増収、営利20.3倍と検収遅れの解消が進み、MIX良化もあり収益上伸

・23/12期29.0%増収11.1%営利増1.6%経常減予想変更無く検収遅れ売上未達も利益大幅増へ

・中計で25/12期に売上高406億円、経常利益50億円目標は上振れ期待


 

23/12Q3は2.1倍増収、営利20.3倍と検収遅れの解消が進み、MIX良化もあり収益上伸

 

 塗布技術を生かした半導体装置、液晶製造装置を軸に事業展開、最近はパワー半導体向に加えHBM向け受注が急増している。11/13に23/12Q3決算、説明資料が開示された。23/12Q3は売上高86.00億円(2.1%倍)、営利18.65億円(20.3倍)、経常利益19.83億円(7.2倍)、税引利益14.02億円(7.7倍)、受注107.00億円(1.6%増)、受注残高392.60億円(4.7%増)となった。受注好調な中で、Q2までは装置の納入遅延等から検収遅れの案件があり、Q3はこれらが売上に計上、売上高がQ2対比でも30.9%増となり、同期比で大幅な収益拡大となった。同社は四半期で売上高に大きなブレがあるため、23/12Q3累計で見ると、売上高190.34億円(前年同期比12.2%増)、営利24.05億円(同74.1%増)、経常利益26.90億円(同34.4%増)、税引利益15.39億円(同7.9%増)、受注高199.69億円(同26.4%減)となっており、収益は順調な拡大、受注は半導体生産停滞影響を受け減少している。

 

 セグメント別で主力のプロセス機器が売上高66.40億円(同38.9%増)、営利16.30億円(同10.1倍)、受注は81.98億円(同52.5%増)、受注残308.70億円(同5.7%増)に。売上面では半導体装置26.11億円(同2.3倍)、搬送装置21.77億円(同33.7%増)、洗浄機9.64億円(同2.5倍)、コーター8.88億円(同11.2倍)など軒並み大幅増と、部材不足や半導体不足などで納期ズレとなっていたものの解消が一部進んだことも有り、大幅な増収、Q2と比較しても33.4%増に。但し通期計画対比の進捗率では63.0%に過ぎず、搬送機器が82.3%となっているが、その他は49~59%に止まり、装置の納入遅延等は依然として継続している。受注面ではQ3で52.5%増と大幅増、内訳は半導体装置が55.58億円(同期比2.3倍、Q2比3.7倍)、コーター9.00億円(同3.7倍、Q2比2.9倍)と急増していることが大きい。特に半導体装置は従来好調だったパワー半導体向け仮貼合装置、支持体剥離装置向けが高原状況となったところに非常に高いデータ転送速度を持ったHBM(High Bandwidth Memory:広帯域幅メモリ)向けで大口受注を獲得、Q3累計でも91.07億円(前年同期比24.2%増)となっている。一方で搬送機器は13.05億円(同期比37.5%減)と半導体市場低迷で受注件数が減少、洗浄機も4.34億円(同30.6%減)と検収遅れが継続している。利益面では総利益率が50%弱あると見られる高採算の半導体装置の拡大、また利益率向上もあり、売上構成比が23.9%から39.3%へ10.0ポイントアップした事で大幅増益に。

 

 表面処理は売上高15.93億円(同期比2.8倍)、営利1.60億円(同2.50億円改善し黒字転換)、受注は21.80億円(同期比55.7%減)ながらQ2比では6.9倍と大口案件受注で急増。現在、生産能力一杯状況で受注残高が81.96億円(2.9%増)とQ3累計受注で32.32億円(59.3%減)ながら生産が追いつかない状況で受注残高が積み上がった状態が続いている。利益は検収が進みQ3で黒字転換、前年同期は不採算事業もあったと見られQ3の営業利益率は20.3ポイント改善し13.2%となった。

 

 金型・樹脂成形では売上高3.67億円(40.6%増)、営利0.02億円(0.08億円改善し黒字転換)、受注3.22億円(33.6%増)に。

 

 全体を通じ、受注はプロセス機器で半導体装置を中心にHBM向けが加わり好調を持続、一方で搬送、洗浄機は半導体生産の停滞で減速。表面処理は引合いが生産キャパ一杯で受注拡大対応が難しい状況。この結果Q3までの累計では受注が前年同期比26.4%減ながらBBレシオは1.05と1を上回り受注残高が15ヶ月と生産が追いつかず、Q3累計売上が23/12期会社予想の60.6%に止まっている。但し営業利益面ではQ3累計で進捗率77.1%と収益性の高い半導体装置の寄与からMIX良化で計画線を上回る。さらに経常利益では円安効果で想定以上の為替差益計上で進捗率87.1%まで高まっている。なお特別損失として投資有価証券評価損失3.35億円計上しており税引利益での進捗率は73.0%と、営業利益程度の進捗率に合わせた格好に見える。

 

23/12期29.0%増収11.1%営利増1.6%経常減予想変更無く検収遅れ売上未達も利益大幅増へ

 

 会社側は期初予想を変更せず、売上高314.23億円(29.0%増)、営業利益31.18億円(11.1%増)、経常利益30.87億円(1.6%減)、税引利益21.09億円(6.8%減)予想を据え置いた。この結果、Q4は売上高123.89億円(同期比67.5%増、Q3比44.1%増)、営利7.13億円(同50.0%減、同61.8%減)、経常利益3.97億円(同65.1%減、同80.0%減)、税引利益5.70億円(同31.8%減、同59.3%減)予想と歪な数字となる。

 

 現在、半導体設備投資では全体として設備投資減額が相次ぎ受注の減額が見込まれるが、同社受注はパワー半導体向けの好調に加えHBMでの大口受注獲得も有り、収益性の高い半導体装置の拡大で好調を維持している。売上面ではQ3も依然として検収遅れが残っており、23/12期通期でも受注消化が追いつかないと見られ、会社計画売上の達成は難しいとみられる。しかし利益面では高収益の半導体装置の寄与が高まることからQ4についても収益性が維持されるとみられ、利益率は高位を維持する可能性が高く、売上未達成でも営業利益は大きく上振れが見込まれる。また経常利益も為替が円安で推移しており、為替差益が会社想定ほど減少しないとみられる。このため経常利益は営業利益以上の増額が見込まれ、利益は大幅増額から経常利益は減益予想から増益に転じ、連続経常最高益更新が期待される。

 

中計で25/12期に売上高406億円、経常利益50億円目標は上振れ期待

 

 会社側では「TAZMO Vision2025」を策定、25/12期に売上高406億円、経常利益50億円達成を目指す。内訳は半導体装置の拡大が主で、22/12期60億円に対し25/12期127億円を見込む。中でも中計の事業拡大の中心はTB(Temporary Bonding:仮接合)/DB(Debonding:剥離)で、22/12期26億円に対し25/12期75億円を目指す。今回のセミコンジャパンでも展示の中心はTB/DB装置で、パワー半導体向けでは化合物、さらにHBM向けが伸びているとの説明を受けた。背景には車載中心にSiCパワー半導体設備投資の伸長がある。パワー半導体は高電圧や高温に耐える必要から、ウエハ表面に絶縁層や金属層を貼合、剥離する必要があり、TB/DB装置は作業を精密かつ効率的に行うための装置。同社は同分野で高シェアを有し、パワー半導体の伸び率以上に加速が見込まれる。現在、主要ユーザーのパワー半導体投資拡大に加え、中国、日本でも新工場建設が相次ぐ。現状、シリコンパワー半導体向けでは大口径化で300mmウエハ対応の設備投資がインフィニオン中心に活発、日本勢も相次いで300mm設備投資に乗り出している。シリコンパワー半導体ではオン抵抗を下げる必要性から縦型構造を持つ構造のため、抵抗値をさげるためにウエハ薄化が求められ、現在50μの薄さを要求される等で、従来よりも10工程ほど工程数が増え需要が加速している。さらに現在はSiCを中心に化合物パワー半導体向けが本格拡大している。化合物半導体は高硬度で割れやすく、割れ防止や研削時間の長時間化などで必要性が高まる。特にSiCデバイスで先行するSTマイクロン、基板メーカーのウルフスピードやパワー半導体最大手のインフィニオン、日本のローム、東芝、三菱電機等も相次いで新規投資を行い市場が急成長する様相に。またウエハの大型化も進行中で、6インチ、8インチ兼用装置の需要も高まっている。現在はパワー半導体向けの10%程度が化合物向けとなっているが、SiC需要の拡大が年率30%以上とも言われ、構成比が高まろう。

 

 

 またここに来て急速に注目度が高まっているのがHBM向け。HBMはDRAMダイを積層する際にTSV(Though-SiliconVias)接続が必要で、TSV加工にはTB/DB工程が必要となる。同工程はウエハが薄化、複雑加工の際にウエハ破損を防ぐ役割を果たすが、HBMではDRAM積層で各ダイにTSVを形成、電気的に接合するためウエハを薄く、また高温処理が必要で、TB/DB工程は必須の工程となる。現状、HBM市場はDRAM全体の5%程度に過ぎないものの、グローバルインフォメーション予測では2023年の7.6億ドルが2029年には49億ドル(平均成長率25%)、その他の機関でもほぼ同様の市場へ拡大するとしている。しかもHBMのロードマップでは各社それぞれで2024年にHBM3e、2025年にHBM4,2026年にHBM5が投入予定で積層数が増してくることも有り、TB/DB工程が増える見通しから、大きな成長が期待される。実際、昨今の生成AIの爆発的な伸びを背景にエヌビディアAI半導体に大量に採用(HBMパッケージ)、SKハイニックス、サムスン電子、マイクロンが競って設備増強を実施している。HBMでは韓国メーカーからの大型受注を獲得、今後急速に構成比を高める可能性を秘めている。このような環境で、同装置の目標はHBM分を加味すると十分上乗せ達成が可能で、100億円の大台まで拡大する可能性もあるとみられる。

 

 また搬送システムなどでは2024年後半から見込まれる先端プロセスの設備投資の回復から、中心となるEFEM(EquipmentFrontEndModule)の真空搬送ロボットなども急拡大が見込まれる。

 

 

 全体として23/12期は半導体生産の不振でパワー半導体以外の不振ながらMIX良化で収益拡大が継続、24/12期も収益上伸が見込まれ、25/12期は中計予想を上回る収益が期待される。

 

 

 株価は11/13の23/12Q3決算を好感、HBM関連としても注目を浴び、11/13安値2790円から急上昇、12/4には3745円まで駆け上った。但しその後は長続きせず、急上昇前の株価に逆戻りしている。現在、23/12期会社予想EPS151.07円に対しPER17.3倍はプライム電機平均PER20.5倍に対し割安感があり、HBM関連と言われるTOWA30倍、東京エレクトロン40倍、アドバンテスト59倍、ディスココンセンサス47倍に対し割安感がある。今後、売上は未達も利益は上振れが見込まれ、経常利益も減益予想が増益に転じ経常最高益更新が続くとみられることから、ニュートラルからポジティブに変更したい。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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