ロシアAK5M2はどこに!?――ウクライナ侵攻がもたらしたアルミ業界流通構造の変化

ロシアAK5M2はどこに!?――。アルミ合金の母材として重用されていたAK5M2の存在感が市場ですっかり薄くなった。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ユーザー業界に使用を控える動きが広まったためだ。それを埋め合わせているのが、アフリカ・インド産のADC。AK5M2に比べ割高なため採算的には厳しいが、道義的な立場から、このオフグレードADCに目を向けている形だ。ウクライナ紛争が国内アルミ業界の流通構造の一角に刻み込んだ変化の一つである。
財務省の貿易統計によると、ロシア塊(AK5M2、A356など)の輸入実績は1-11月累計で5万8114トン。前年同期比で41%にとどまっている。ロシア塊の減少分は中国、マレーシア、インド、「その他」地域からのものが埋め合わせている姿が浮かび上がる)。代替品はオフグレードADCで、AK5M2のようにベースメタルではないので割高につくが、国際的なロシア制裁の動きが広がる中で、ユーザー業界も決断を迫られた。特に溶湯アルミメーカにとっては、かなりのコストアップ要因になっていると思われる。
関連記事:2022年11月アルミ再生塊輸入統計分析 数量横ばい 単価は円安一服も小反発
実際、AK5M2の相場などを取材していても、「うちではいま取り扱っていない」との反応がほとんどで、最後に「他社さんも取り扱っていないのでは」との言葉が重なる。輸入実績としてある数字は、「一部ブローカー筋による扱い分」とみてよさそうである。
AK5M2の代替品として浮上してきたアフリカ・インド産のADCは、中国産ADC (現在1トン2380‐2400ドル)の50ドル落ちの相場感で、確認できるAK5M2相場1トン2060ドル(高値)に比べればかなり割高になる計算だ。
コストアップ要因が目白押しの中で、ユーザー業界にとっては採算的に何とも辛い負荷だが、「ウクライナ紛争が迫る(西側諸国の一員としての)国際貢献の一つと割り切るほかはない」と、半ばあきらめ気味の声も聞かれる。このまま紛争が長引けば、AK5M2は日本市場から姿を消しそうな展開になっていきそうである。
(IRuniverse G・Mochizuki)
関連記事
- 2025/08/01 黒崎播磨:親会社である日本製鉄のTOBを受け、無配に修正
- 2025/08/01 (速報)2025年7月国内新車販売台数 2025年に入って初めて前年同月比マイナスへ
- 2025/08/01 2025年7月LMEアルミ&NSP相場推移 3カ月続伸、銅高に連れて
- 2025/08/01 アルミ合金&スクラップ市場近況2025#14 国内・海外原料高でコストプッシュ型の色合い鮮明に
- 2025/08/01 日新工業、ナゲット事業の歩み加速へ――アルミナゲットライン更新、投資額は約4千万円
- 2025/07/31 日軽金HD:26/3期1Q決算説明会を開催。業績見通し据え置き
- 2025/07/31 住友電工:26/3期1Q決算説明会を開催。関税影響等を加味して業績見通しを修正
- 2025/07/31 カザフスタン 銅、アルミニウム、鉛の輸出を禁止 ガリウム関税を撤廃
- 2025/07/31 米国 韓国の鉄鋼、アルミ、銅は新たな貿易協定から除外
- 2025/07/31 【貿易統計/日本】 2025年6月のアルミ灰輸出入統計