中国において浮体式太陽光発電が注目株に
中国の研究チームは、中国における浮体式太陽光発電(FPV)の可能性を評価し、この技術がPVシステム用の土地や水の利用可能性の地域差に対応できると同時に、同国の増大するエネルギー需要を満たすのに役立つことを明らかにした。
科学者らによると、需要が最も高い場所での地上型太陽光発電(TPV)プロジェクトの設置は、土地の利用可能性の低さとレンタル料の高さにより、深刻な制約に直面している。
「浮体式太陽光発電(FPV)の出現は、特に中国東部において、太陽エネルギー需要の増大と土地の利用可能性による制約の間の緊張を解決する選択肢を提供します。」と研究者たちは指摘している。
「北部の3つの地域では、FPVの可能性を制限する一方で、土地資源は豊富にあります。経済活動がより発展している中国東部と南部では、FPVは太陽光発電開発における土地の制約を大きく緩和することができます。」と語る。
TPVシステムの可能性を評価するため、研究チームはGISベースの多基準決定分析(MCDA)を用いて利用可能な土地面積を推定し、それぞれクラスI、II、III太陽資源地域と呼ばれる中国の3つの異なるマクロ地域を設定。
これは標高3000m以下かつ総発電量がそれぞれ1,600kWh/m2以上、1,300kWh/m2以上、1,100kWh/m2以上の地域として区分される。
その上で研究者らは、FPVが水面から入射する太陽光を遮り、水中においての生態環境を損なう可能性があるため、自然湖沼を検討対象から除外した。
そのため、FPV設置容量の可能性を推定するために、中国全体の76%に当たる875の代表的な貯水池が論文の中で対象として取り上げられている。
評価の結果、FPVの高い発電効率は、TPVに比べて高い初期投資コストを補って余りあることがわかった。つまり、中国の電気料金が高い地域や太陽光発電が豊富な地域では、FPVの生涯経済投資回収額がTPVを上回る可能性があるということだ。
研究者らは、FPVの潜在的な設置容量は862.6GW、潜在的な年間発電量は1,423.8TWhに達する可能性があることを明らかにした。また、FPVは年間約5.8km3の水の蒸発を削減し、7,117.3km2の土地を保全できると推定された。
「平均して、チベット、広東、海南に位置するFPVシステムが、最も高い経済的見返りを得られる」と研究チームは述べ、湖北省、広西チワン族自治区、江蘇省は、豊富な水資源を持つため、FPVの可能性が最も高いと指摘した。
研究チームは、特に四川省と広西チワン族自治区では、豊富な水力発電資源がFPVとの共同展開を有利にするだろうと指摘した。この連携により、PVのエネルギー出力を安定させ、水力発電の季節変動を補うことができる。
TPV資源の評価に関しては、分散型太陽光発電(DSPV)に関して、研究者らは州ごとにターゲットとする推進タイプを変えることを推奨している。例えば、広東省や江蘇省のような発展した都市部では、商業・工業分野のDSPVを優先し、人口の多い地方では農村部の住宅用太陽光発電に焦点を当てるべきである。
「FPVによる炭素排出削減ポテンシャルは年間1078.6 Mtに達する。」と論文では述べられている。
また「広西チワン族自治区、湖北省、湖南省は潜在的な設備容量が大きいため、炭素排出削減効果が最も大きい。河南省と吉林省は火力発電の炭素排出量が比較的多いため、この2省もかなりの炭素排出削減効果がある。」とも述べている。
科学者たちは、Renewable Energy誌に掲載された「Assessment of floating solar photovoltaic potential in China(中国における浮体式太陽光発電の可能性の評価)」という研究の中で、この研究結果を紹介した。
この論文の著者には、北京師範大学、北京大学深圳大学院、Shenzhen Oriental Fortune Capital Investment Management Co.,Ltd. (OFC:東方豊海)の研究者が含まれている。
(IRuniverse Ryuji Ichimura)
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