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レアメタル系スクラップ市場近況 2024#1 ニッケル系続落 チタンはBoeing事故要因で一時的に停滞

 2024年始のレアメタルスクラップ系相場は、概ね昨年と大きく変わらない傾向となっている。

ニッケル系に関しては市場が悲観的な状況となっており、2024年年明け早々に15,705ドルという値を付けた事からも続落となっている。相場は一時期持ち直したものの、それでもジリジリと価格が下がって来ている状況だ。需要先としても中国は既にニッケルの在庫を十二分に抱えており、海外においても有力な需要先が未だに見えてこないという。その為、ニッケル系スクラップについては、昨年からのコスト高となっている在庫もあり、それを薄める意味で極力買値を下げていきたいところだが、発生が少ないこともあり、なかなか困難な様子。チタンスクラップはボーイングの事故の影響を受けて一時的に海外からの買いは止まっている。

 

(LMEニッケル相場$/tonとLGコバルト相場の3ヶ月価格推移$/lb)

出所:MIRU.COM

 

 【チタン】

・純チタン板スクラップ(新断)「→」:400円/kg。横ばい

・合金6-4チタンダライ粉「→」:高値200円/kg、安値190円/kg。前月比「横ばい」

・合金6-4チタンスクラップ「→」:高値240円/kg 安値220円/kg

・フェロチタン「➚」:高値6.1ドル/kg、安値5.7ドル/kg。前月比高値0.1ドル/kg「上げ」

・鉄鋼添加用スポンジチタン「➚」:高値6.97ドル/kg、安値6.69ドル/kg。前月比安値0.27ドル、高値0.26ドル「上げ」

 

 優良株として期待されているチタンについては、フェロチタンは余り状況が変わらないまま続いている。

チタンも純チタンであればニーズが多く動きも良いが、6-4チタンの合金については相変わらず国内での需要は薄く、海外の業者に向けての取引が主となっている状況。

 

 チタンスクラップディーラーなどによると、航空機部材向けのチタンスクラップについては少々取引量が落ちてはいるものの、あくまでスポット的な物と見做している。

 

 航空機向けといえばボーイング社の機体であるボーイング737MAXの扉が落ちる事故が原料業界にも影響しており、この影響で一時的に航空機部材向けの海外向けチタンスクラップは動きが止まっている状況だ。しかし軍事用途としては需要が旺盛な状況である。

→ https://www.bbc.com/japanese/67909400

 

 日本国内では航空機向けチタン薄板を生産している日本製鉄の東日本製鐵所直江津地区(旧称:株式会社住友金属直江津)ではチタン薄板のフル生産が続いていることからも、基本的には軍事含めた航空機向けチタンの需要は旺盛にあるとみられる。

 

(フェロチタン相場($/kg)と合金チタンスクラップ相場(¥/kg)の推移 1年)

出所:MIRU.COM

 

【工具類】

・ダイス鋼MIX「→」:30円/kg。前月比「横ばい」

・SKD61「→」:65円/kg。前月比「横ばい」

・ハイス(ミックス)「→」:高値320円/kg、安値295円/kg。前月比「横ばい」

・ハイス(一品もの)「→」:高値330円/kg、安値300円/kg。前月比「横ばい」

・超硬スクラップ「→」:2,400円~2,800円/kg。前月比「横ばい」

 

 工具系は今回も横ばいの状況である。タングステンの価格も安定しており、製品群として需要も相場も大きな動きが無い状況が続いてしまっている。

 

【モリブデン】

・酸化モリブデン「➚」:高値20ドル/lb、安値19.5ドル/lb。前月比高値1.5ドル、安値2ドル「上げ」

・モリブデン新切れスクラップ「➘」:3,000円~3,300円/kg。前月比安値700円/kgの「下げ」

・フェロモリブデン「➚」:高値50ドル/kg、安値49ドル/kg。前月比高値6.2ドル、安値7.255ドル「上げ」

 

 モリブデンについては年明けから積極的な買いが相次いでいるのか、酸化モリブデンやフェロモリブデンの価格は大きく上昇。

今後スクラップの発生量も増えると予想されており、特に中国市場では軍事向け、インフラ関係でモリブデン需要の伸びが著しい状況となっている。

 

(酸化モリブデン$/lbとフェロモリブデン価格の3ヶ月価格推移 $/kg)

出所:MIRU.COM

 

 

【タンタル】

・タンタライト「➚」:高値67ドル/lb、安値65ドル/lb。前月比高値・安値ともに1ドル「上げ」

・タンタル「↘」:高値298ドル/kg、安値288ドル/kg。前月比高値・安値ともに2ドル「下げ」

・タンタルスクラップPIN「→」:高値28,000円/kg、安値26,000円/kg。前月比「横ばい」

・五酸化タンタル「↘」:高値216ドル/kg、安値ドル206/kg。前月比高値・安値とも3ドル「下げ」

 

 タンタルは今回そこまで下げ幅は広くなく、タンタライトについてはほんの少々だが上げ傾向となっている。
トレーダー筋からタンタルが底値傾向にあるという話にもある通り、これからの需要回復や価格向上の傾向が期待できる状況と見て良いだろう。

 

(参考記事:タンタル市場近況 2023年1月:底値を付いて雄飛を待つ一時【プレミアムプラン加入者限定】)

 

【ステンレス 、耐熱系】

・SUS304「→」:175-185円/kg。前月比「横ばい」

・SUS310「→」:380円/kg。前月比「横ばい」

・SUS316「↘」:320円/kg。前月比10円/kg「下げ」

・SUS330「↘」:570円/kg。前月比20円/kg「下げ」

・SUS430「→」:65円/kg。前月比「横ばい」

・42アロイスクラップ「↘」:720円/kg。前月比20円/kg「下げ」

 

 今回もステンレスの耐熱系はニッケル市場の影響を受けて値下がり傾向が続いている。

310系は売れにくい状況が続いているものの、316系や304系については物が集まれば売れる状況。

いずれも発生は少ない。取り合いの状態。

 

 銅ニッケル合金のキュプロニッケルは、9/1キュプロニッケルが前月比安値・高値10円下げの665~775円/kg。7/3キュプロニッケルは安値・高値10円/kg「下げ」の安値790円/kg、高値820円/kg。

 

 キュプロニッケルについてもニッケル相場の影響を受けて価格低下気味。
 

【ハイニッケル合金系】

・インコネル718「↘」:高値900円/kg、安値800円/kg。前月比高値、安値共に50円/kg「下げ」

・インコネル625「↘」:高値1,065円/kg、安値965円/kg。前月比高値、安値共に35円/kg「下げ」

・インコロイ800「↘」:高値540円/kg 安値490円/kg。前月比高値・安値10円/kg「下げ」

・ハステロイX「↘」:高値840円/kg、安値740円/kg。前月比高値、安値共に10円/kg「下げ」

・ハステロイC「↘」:高値1,040円/kg、安値940円/kg。前月比高値、安値共に10円/kg「下げ」

 

 ハイニッケル系については、前回のレポート時よりは値下がり幅は抑え気味となっている。

というのも、ハイニッケル系の売れ筋であるハステロイXも含めてスーパーアロイ向けは、耐熱鋼よりは売れやすい傾向にあるため、市場の影響を受けにくいという特徴があり、それが如実に現れた結果と見て良いだろう。718と625の需要(海外向け)は引き続き堅調。ハステロイは購入するところが限られているため、買いは弱い。また、国内では日本冶金が高機能材の生産が落ちていることもあり、ハイニッケル系の売れ行きは芳しくない面もみられる。
 

 鉄・ニッケル・コバルト合金のコバールは前月比90円「下げ」の360~460円/kg、ニッケル・クロム・銅・モリブデン合金のカーペンターは前月比10円「下げ」の490円/kg。

 

 コバールもカーペンターも、どちらも売りづらいものである他発生が控えめな事もあって価格は低下気味。

特にコバールに関しては、ニッケルとコバルトの両市場が振るわない影響が直撃した形となる。

 

 今回ヒアリングした結果として、やはりニッケルに対する懸念は非常に大きく、回復材料が無いことに対する失望に近いものを感じられる程であった。

 

 またモリブデンについては需要が伸びている事から上げ傾向にあるものの、国内ではステンレスメーカーの動向次第でモリブデン市況も左右されていく。

レアメタルスクラップマーケットは年をまたいでもその様相は「まだら模様」と呼べる様な統一性を欠いた情勢となっている。

 

 

 (IRuniverse Ryuji Ichimura)

 

 

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